- 確定申告と聞いただけで頭が痛くなる…
- 白色申告って、何から手をつけていいかサっぱり分からない…
- もし間違えたら、税務署から何か言われるんじゃないか…
確定申告が初めての年、あなたは今、そんな大きな不安を抱えているかもしれません。
この記事は、そんなあなたのための「確定申告の入門ガイド」です。
税金や経理の知識が全くなくても、少しずつずつ読み進めていけば、一人で白色申告を無事に完了できるように、分かりやすくサポートしていきます。
- そもそも私が申告すべきかどうかわからない
- 全体像が見えず、何から手をつければいいか分からない
- 専門用語が難しくて意味がわからない
- 書類の書き方がわからない
- 本当に一人でできるか不安
あなたの事業主としての大切な一歩を踏み出しましょう!
「そもそも申告しなきゃダメ?」30秒でわかる白色申告チェックリスト
ご自身が確定申告の対象者かどうかわからない方は、まずはこちらをチェックしてみてください。
簡易チェックリスト
以下のいずれか1つでも当てはまれば、原則として確定申告が必要です。
- 事業(フリーランス、自営業など)での所得が48万円を超えている
- 会社員で、給与以外の副業(原稿料、ネット販売など)の所得(収入から経費を引いた儲け)が年間20万円を超えている
- 不動産所得や、株式の売買などで一定の所得(利益)があった(※) ※源泉徴収ありの特定口座での取引など、申告が不要になるケースもあります。
白色申告はたったの5ステップ!やることリスト&目安時間
白色申告の全体像は、実はとてもシンプルです。
やることは、たったの5ステップ。
- 【準備】必要なものを集める (目安:1〜2時間)
- 【帳簿づけ】年間の収支をまとめる (目安:日頃からやっていればすぐ。まとめてやると1日〜)
- 【書類作成】収支内訳書を書く (目安:2〜4時間)
- 【書類作成】確定申告書を書く (目安:1〜2時間)
- 【提出】税務署に提出する (目安:30分〜1時間)
各ステップを、一つひとつ丁寧に解説していきます。
そもそも白色申告とは?青色申告との違いを分かりやすく解説
確定申告には、大きく分けて「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
どちらを選ぶかによって、手続きの難易度と、受けられる税制上のメリット(節税効果)が大きく変わります。
白色申告の特徴
- 手続きがシンプルで簡単
白色申告の一番のメリットは、そのシンプルさです。
確定申告をするために事前の届け出は必要なく、帳簿の付け方も比較的簡単な「簡易簿記」という方法で認められています。
家計簿をつけるような感覚で日々の収入と支出を記録すればよいため、確定申告が初めての方でも取り組みやすいのが特徴です。
- 税制上の特典は限定的
手続きが簡単な反面、青色申告で受けられるような大きな節税メリット(特別控除など)はありません。
青色申告については下記で詳しく解説をしています。
青色申告の特徴
- 高い節税効果が魅力
青色申告の最大のメリットは、高い節税効果です。
主な特典として、所得金額から最大65万円を差し引ける「青色申告特別控除」や、事業の赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越せる制度など、税金の負担を軽くするための様々な優遇措置が用意されています。
- 事前の申請と複雑な帳簿付けが必要
これらの特典を受けるためには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
また、日々の取引を「複式簿記」という正規のルールに則って記録する必要があり、白色申告に比べて帳簿付けが複雑になります。(ただし、最近の会計ソフトを使えば、簿記の知識があまりなくても複式簿記の帳簿を作成しやすくなっています。)
青色申告について下記で詳しく解説してあります。
項目 | 白色申告 | 青色申告 |
---|---|---|
事前手続 | 不要 | 必要(期限内に「青色申告承認申請書」を提出) |
帳簿のつけ方 | 簡単(簡易簿記でOK) | やや複雑(原則、複式簿記) |
特別控除(税金の割引) | なし | 最大65万円 |
赤字の繰越 | できない | できる(最長3年間) |
メリット | とにかくシンプルで、初心者でも始めやすい | 節税効果が非常に高い |
デメリット | 税制上の特典が少ない | 事前申請が必要で、帳簿付けがやや複雑 |
どんな人におすすめ? | 初めて確定申告をする方、まずは申告に慣れたい方 | 大きな節税メリットを受けたい方、事業が軌道に乗ってきた方 |
無理して青色を選ばなくてOK!初心者に白色申告をおすすめする理由
「特典が多いなら青色の方がいいの?」と思うかもしれません。
もちろん、節税効果は青色申告の方が高いです。
しかし、初めての確定申告で一番大切なのは、何よりもきちんと期限内に申告を終えること です。
青色申告は帳簿づけ(複式簿記)が少し複雑なため、初心者が挑戦すると挫折してしまう可能性があります。
まずは白色申告で「確定申告って、こういうものか!」という流れを掴むことが大切です。
事業が軌道に乗ってから、来年以降に青色申告へ切り替えるのでも遅くありません。
【準備編】これだけ集めればOK!必要なものリスト
最初のステップです。まずは申告に必要なものを集めましょう。
【必須】2種類の公式書類:「確定申告書」と「収支内訳書」
この2つがメインの書類です。
国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、お近くの税務署で入手できます。
- 確定申告書: あなたの1年間(1月1日~12月31日)の全所得と、納める税金の額を計算して記入する用紙です。
- 収支内訳書: 事業の売上や経費の内訳を記入する、事業版の家計簿のような用紙です。
【日々の記録】レシート、領収書、請求書(1年分)
1月1日から12月31日までの、事業に関するお金の動きがわかるものを全て集めます。
- 売上がわかるもの: 納品書、請求書の控え、売上入金があった通帳など
- 経費がわかるもの: レシート、領収書、クレジットカードの明細書など
【本人確認】マイナンバーカード or 番号確認書類+身元確認書類
提出時に本人確認のために必要になります。e-Taxで申告する場合は提示・提出が不要です。
- マイナンバーカードを持っている方: それ1枚でOKです。
- 持っていない方: 以下の①と②のセットが必要です。
- ①番号確認書類: マイナンバーが記載された「住民票の写し」など
- ②身元確認書類: 運転免許証やパスポート、健康保険証など
- ※マイナンバーの「通知カード」は令和2年5月に廃止されました。記載内容(氏名・住所等)が住民票と完全に一致している場合に限り、番号確認書類として利用できます
【もしあれば】各種控除証明書など
これらを申告に含めると、納める税金が安くなる可能性があります(これを「所得控除」と言います)。
- 国民年金保険料、国民健康保険料の支払額がわかるもの(納付書や控除証明書など)
- 生命保険料、地震保険料の控除証明書(通常、秋頃に保険会社からハガキなどで届きます)
- 医療費の領収書など(1年間の合計が一定額を超える場合)
- ふるさと納税の寄付金受領証明書
【帳簿づけ編】家計簿レベルでOK!簡易帳簿のつけ方
「帳簿づけ」と聞くと難しそうですが、白色申告の帳簿は「簡易帳簿」というシンプルな形式で認められています。
家計簿やお小遣い帳のイメージに近いです。
挫折しないための3つのコツ「まとめてやらない」「完璧を目指さない」「便利なツールを使う」
初心者が帳簿づけで挫折する原因は、この逆をやってしまうからです。
1年分をまとめて、完璧に、手書きでやろうとすると、作業が大変で挫折してしまう可能性が高くなります。
帳簿をつける方法は主に3つあります。ご自身に合った方法を選びましょう。
方法 | メリット | デメリット | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
手書き | PCがなくてもできる | 時間と手間が非常にかかる、計算ミスが起こりやすい | PCが苦手な方 |
Excel | 無料で使える、操作に慣れている人も多い | 勘定科目の設定など、初期設定が面倒、計算式を間違えるリスクがある | Excelが得意な方 |
会計ソフト | 圧倒的に簡単で早い、計算ミスがない、書類作成まで自動化できる | 月額費用がかかる(無料プランもあり) | すべての人におすすめ |
【結論】迷ったら会計ソフトがおすすめな理由
もしあなたが「できるだけ簡単に、間違えずに終わらせたい」と思うなら、会計ソフトの利用がベストな選択肢の一つです。
月額1,000円程度の費用はかかりますが、数日かかる可能性のある作業が数時間に短縮できることを考えれば、十分に価値のある投資と言えます。
銀行口座やクレジットカードを連携すれば、取引データを自動で取り込んでくれるので、入力の手間も大幅に省けます。
クラウド会計についてはこちらの記事に投稿しています。
【見本あり】これって何費?初心者が迷う経費の分け方一覧
レシートを科目ごとに分ける作業は、最初の関門かもしれません。
よく使うものだけ、ざっくり覚えておけば大丈夫です。
- 消耗品費: 文房具、プリンターのインク、10万円未満の備品など
- 旅費交通費: 電車代、バス代、打ち合わせ先へのタクシー代など
- 通信費: インターネット料金、スマホの料金、サーバー代など
- 接待交際費: 取引先との飲食代、お中元やお歳暮など
- 新聞図書費: 仕事に必要な書籍や雑誌、有料メルマガの代金など
- 地代家賃: 自宅兼事務所の場合の家賃(家事按分した事業利用分)
- 水道光熱費: 自宅兼事務所の電気・ガス・水道代(家事按分した事業利用分)
【初心者がつまずくポイント!】 自宅の家賃や光熱費はどうするの?
自宅を仕事場にしている場合、家賃や光熱費の一部を経費にできます。
これを家事按分(かじあんぶん)と言います。
例えば、家の広さのうち仕事で使っているスペースの割合(事業専用割合)が30%なら、家賃の30%を経費として計上できます。
面積や使用時間など、客観的で合理的な基準で按分することがポイントです。
【書類作成編】収支内訳書の書き方
帳簿づけが終わったら、その内容を「収支内訳書」に書き写していきます。
会計ソフトを使っている場合、この書類はほぼ自動で作成されます。
売上や経費の書き方
- 収入金額: 1年間の売上の合計を記入します。
- 売上原価: 仕入がある業種(小売業など)の方が記入します。なければ0でOKです。
- 経費: 帳簿づけした各科目の経費の合計額を、対応する欄に記入します。
- 事業専従者控除: 配偶者や親族が事業を手伝っている場合、一定の要件を満たせば控除を受けられます(後述)。青色申告特別控除は白色申告では適用されないため空欄です。
- 所得金額: 「(1)収入金額 – (2)売上原価 – (3)経費 – (4)事業専従者控除」で計算した、あなたの事業の「儲け」の金額を記入します。
【重要】家族への給料は経費になる?「事業専従者控除」とは
生計を同一にする配偶者や15歳以上の親族が、年間6ヶ月を超えてあなたの事業にもっぱら従事している場合、給料を支払っていなくても、以下の金額を必要経費として計上できます。
これを「事業専従者控除」といいます。
- 配偶者の場合: 最高86万円
- それ以外の親族の場合: 1人につき最高50万円 この控除を受ける場合、該当する親族は控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
「減価償却費」って何?高い買い物をした時の注意点
もしPCやカメラ、車など10万円以上の備品を買った場合、その費用は原則として一度に経費にできません。
「法定耐用年数」に応じて何年かに分けて少しずつ経費に計上するルールがあり、これを減価償却と言います。
その年に経費にする分が「減価償却費」です。
- 例: 20万円のPC(耐用年数4年)を買った場合、定額法なら1年あたり5万円が「減価償却費」として経費になります。
- 特例: 取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、耐用年数にかかわらず「一括償却資産」として3年間で均等に経費にする方法も選べます。 (会計ソフトなら、購入金額と品目を入力するだけで自動計算してくれるものがほとんどです)
売上や仕入先の詳細
- 売上金額の明細: 主要な取引先の名称、所在地、年間の売上額を記入します。数が多い場合は、上位の数社を書き「上記以外の売上先の計」でまとめてOKです。
- 仕入金額の明細: 仕入がある方のみ記入します。
- 減価償却費の計算: 減価償却する資産がある場合に、その詳細を記入します。
- 地代家賃の内訳: 事務所や店舗の家賃を経費にしている場合に記入します。
【書類作成編】確定申告書の書き方を分かりやすく解説
最後の書類です!
「確定申告書」は、収支内訳書で計算した事業の儲け(所得)と、会社員としての給料(給与所得)などを合算し、最終的に納める税金の額を計算する用紙です。
収入、所得、控除、税金の計算
- 収入金額等: 事業からの収入(収支内訳書の売上金額を転記)、会社員の方は会社からもらった源泉徴収票に書かれている「支払金額」などを記入します。
- 所得金額等: 事業の所得(収支内訳書から転記)、給与所得などを記入します。
- 所得から差し引かれる金額(控除): 生命保険料控除、医療費控除、そして合計所得金額2,400万円以下の全ての人が使える「基礎控除(48万円)」などを記入します。ここの金額が大きいほど、納める税金が安くなります。
- 税金の計算: 上記を元に、納めるべき所得税の額を計算して記入します。
所得の内訳、社会保険料控除など
第一表に記入した内容の詳細を書き写すページです。
源泉徴収票や控除証明書を見ながら、対応する欄を埋めていくだけです。
【提出編】自分に合った方法を選ぼう!3つの提出方法と期限
書類が完成したら、いよいよ提出です。
提出方法は主に3つあります。
e-Tax(電子申告)のやり方とメリット
PCやスマホを使って、インターネット経由で申告する方法です。
- 税務署に行かなくていい(24時間いつでも提出可能)
- 本人確認書類などの添付書類を省略できる場合がある
- 還付金の処理が早い傾向にある マイナンバーカードと、それを読み取るスマホやカードリーダーがあれば、自宅で全て完結します。
郵送で提出する場合のチェックリスト(宛先、送付方法)
完成した書類を封筒に入れ、所轄の税務署へ郵送します。
- 控えも同封する(返信用封筒と切手も忘れずに!): 控えに受付印を押して返送してもらうことで、提出した証明になります。
- 宛先は「〇〇税務署」と正しく書く: あなたの住所地を管轄する税務署を国税庁のサイトで確認しましょう。
- 「郵便物(第一種郵便物)」または「信書便物」で送る: 確定申告書は「信書」にあたるため、必ず「郵便物」または「信書便物」として送付します。通信日付印(消印)の日付が提出日と見なされるため、ポスト投函の場合は集荷時間に注意しましょう。
税務署の窓口へ直接持参する場合の注意点
管轄の税務署へ直接行って提出します。
分からないことがあればその場で質問できる場合もありますが、確定申告シーズン(特に2月中旬~3月15日)は非常に混み合います。
提出期限はいつまで?過ぎたらどうなる?
所得税の確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。
もし正当な理由なく期限を過ぎてしまうと、「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティの税金が課されることがあるので、必ず期限内に提出しましょう。
白色申告に関する「よくある質問」Q&A
経費で落とせるものの範囲はどこまで?
「事業の売上を得るために直接必要であったもの」が経費の基本ルールです。
例えば、デザイナーの画材や、ライターの取材交通費は経費になりますが、事業に関係のないプライベートな食事代や洋服代は経費になりません。
赤字の場合は申告しなくていいの?
所得が赤字の場合や、黒字でも48万円以下のため申告義務がない場合でも、申告した方がメリットがある場合があります。
国民健康保険料は前年の所得などを基に計算されるため、赤字申告をすることで翌年の保険料が安くなる可能性があるからです(計算方法は自治体により異なります)。
間違えて提出してしまったら?修正方法は?
慌てなくて大丈夫です。
申告期限内であれば、正しい内容で再度申告書を提出し直せば、後から提出したものが受理されます。
期限を過ぎてしまった場合は、税額を多く申告していた場合は「更正の請求」、少なく申告していた場合は「修正申告」という手続きで修正できます。
会社員が副業で申告する場合の注意点は?
会社からもらっている給料は「給与所得」、副業の儲けは、その事業の規模や継続性により「事業所得」または「雑所得」として、合算して申告します。会社の年末調整で申告済みの生命保険料控除などを、二重で申告しないように注意しましょう。
【まとめ】来年はもっと楽に申告するために
この記事を見ながら無事に白色申告を終えることができたなら、それはフリーランス・個人事業主としての価値ある一歩です。
大変だと感じたかもしれませんが、一度経験すれば、来年はもっとスムーズに、もっと楽にできるようになります。
そして、もしあなたが「来年はもっとラクしたいな」と少しでも感じたなら、ぜひ会計ソフトの導入を検討してみてください。
日々の帳簿づけから、面倒な書類作成までをほぼ自動化でき、あなたが本来集中すべきビジネスの時間をもっと確保できるようになるはずです。