- 青色申告って、なんだかすごく難しそう
- 節税メリットが大きいのは知ってるけど、手続きが複雑で自分にできるか不安
開業したばかりの個人事業主さんや、副業の収入が増えてきた会社員の方から、毎年このようなご相談を本当に多くいただきます。
この記事では青色申告のやり方を「開業準備」から「申告完了」まで、一年間の流れに沿ってチェックリストを使いながら徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には「青色申告の全体像と具体的な手順が完全に理解でき、何をすべきかが明確になった」状態になっているはずです。
【超入門】そもそも青色申告とは?白色申告との違いを2分で理解
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
一言でいうと、青色申告は「手間がかかる分、税金がすごくおトクになる申告方法」です。
まずは、両者の違いを表で見てみましょう。これだけで全体像が掴めますよ。
比較項目 | 青色申告 | 白色申告 |
---|---|---|
最大のメリット | 最大65万円の特別控除 | 帳簿付けが簡単 |
帳簿の付け方 | 複式簿記(正規の簿記) | 単式簿記(簡易な記帳) |
事前届出 | 必要 | 不要 |
赤字の繰越 | できる(3年間) | できない |
家族への給与 | 経費にできる | できない(一部控除のみ) |
30万円未満の資産 | 一括で経費にできる | できない(通常通り減価償却) |
おすすめな人 | 節税を最大限したい全ての人 | とにかく手間を省きたい人 |
あなたは青色申告を選ぶべき?簡単フローチャート
「自分はどっちを選べばいいの?」と迷ったら、このフローチャートで判断してみましょう。
節税を少しでもしたいですか?
- YES → 青色申告が絶対におすすめ!(この記事を読み進めましょう)
- NO → 白色申告でもOK(ただし、多くのメリットを逃してしまいます)
結論として、事業を行うほとんど全ての方にとって、青色申告は圧倒的にお得です。
次の章で、その強力なメリットを具体的に見ていきましょう。
【最重要】青色申告(65万円控除)のメリット・デメリット
青色申告には、白色申告にはない強力な節税メリットがあります。
特に重要な4つのメリットと、唯一のデメリットを解説します。
メリット①:最大65万円の特別控除
これが青色申告最大の魅力です。所得(売上から経費を引いた儲け)から、無条件で最大65万円を差し引くことができます。
どれくらい節税できるの?簡単シミュレーション
所得税は、所得が多ければ多いほど税率が上がります(累進課税)。
仮に、あなたの課税所得が400万円、所得税率が20%だとします。
- 白色申告の場合: 税金は単純計算で 400万円 × 20% = 80万円
- 青色申告(65万円控除)の場合: (400万円 – 65万円) × 20% = 67万円
なんと、年間13万円も税金が安くなります!
さらに住民税も約6.5万円安くなるので、合計で約19.5万円もお得になる計算です。
メリット②:赤字を3年間繰り越せる(純損失の繰越控除)
開業1年目など、事業が赤字になってしまうこともあります。
青色申告なら、その赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。
■例
- 1年目:100万円の赤字
- 2年目:200万円の黒字
- → 2年目の所得は 200万円 – 100万円(前年の赤字) = 100万円 として計算できるため、2年目の税金が大幅に安くなります。
メリット③:家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
生計を同一にする配偶者や親族に支払った給与を、全額経費にすることができます(一定の要件あり)。
白色申告では最大でも86万円までしか控除できないため、家族と一緒に事業を頑張る方には大きなメリットです。
メリット④:30万円未満の資産を一括で経費にできる(少額減価償却資産の特例)
通常、パソコンやカメラ、仕事用のデスクなど、10万円以上の備品は一度に経費にできず、数年に分けて経費化(減価償却)します。
しかし青色申告なら、30万円未満のものであれば、購入した年に一括で経費にできます(年間合計300万円まで)。
これにより、その年の税金を大きく圧縮することが可能です。
デメリット:事前の届け出と複式簿記での記帳が必須
唯一のデメリットは、この2点です。
- 事前の届け出: 税務署に「これから青色申告します」という届け出を出す必要があります。
- 複式簿記での記帳: 白色申告より少し複雑な方法で帳簿をつける必要があります。
「やっぱり複式簿記って難しそう…」と感じたかもしれませんが安心してください!!
会計ソフトを使えば、簿記の知識は一切不要です。
日々の取引(売上や経費)を家計簿感覚で入力するだけで、会計ソフトが全自動で複式簿記の帳簿を作成してくれます。
この後、具体的なやり方を解説するので、安心してください。
申告前の必須準備!期限と必要書類をチェック
ここからは、青色申告を達成するための具体的なステップに入ります。
まずは最も重要な「事前準備」です。これをやらないと始まりません。
開業時にやること:「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出
青色申告をするためには、以下の2つの書類を税務署に提出する必要があります。
- 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
- 所得税の青色申告承認申請書
この2つは、セットで提出するのが基本です。
書き方
国税庁のサイトからPDFをダウンロードして手書きもできますが、「開業freee」などの無料サービスを使えば、質問に答えるだけで自動作成され、ミスなく簡単に作れるのでおすすめです。
提出期限
- 開業届: 事業を開始した日から1ヶ月以内
- 青色申告承認申請書
原則: 青色申告をしたい年の3月15日まで
新規開業の場合(1月16日以降に開業): 事業を開始した日から2ヶ月以内
■例
- 2025年4月1日に開業した場合 → 提出期限は2025年5月31日
- 2024年以前から事業をしていて、2025年分から青色申告にしたい場合 → 提出期限は2025年3月15日
提出先
あなたの住所地を管轄する税務署です。
国税庁のサイトで簡単に調べられます。郵送での提出も可能です。
出し忘れたらどうなる?
期限を1日でも過ぎると、その年は青色申告ができず、自動的に白色申告になってしまいます。
65万円控除などのメリットが全て受けられなくなるので、期限だけは絶対に守りましょう!
日々の業務でやること:領収書や請求書などの整理・保管
日々の取引で発生する以下の書類は、絶対に捨てずに保管してください。
これらが帳簿付けの元になります。
- もらったもの: 領収書、レシート、請求書、銀行の取引明細など
- 発行したもの: 請求書の控え、領収書の控えなど
月別にクリアファイルに分ける、封筒にまとめるなど、自分が分かりやすい方法で整理しておきましょう。
レシートがない経費はどうする?
「ご祝儀や交通系ICカードでの支払いなど、レシートがない経費はどうすれば?」という質問をよく受けます。
諦める必要はありません!出金伝票を自分で作成すればOKです。
出金伝票に書くこと
- 日付
- 支払先
- 金額
- 内容(例:〇〇様 結婚祝い代、電車賃 〇〇駅~△△駅)
これをメモ帳やエクセルで記録しておけば、立派な証拠になります。
国税庁の現場でも、こういった記録はきちんと認められていました。
大切なのは「いつ、誰に、いくら、何のために支払ったか」を客観的に説明できることです。
日々の帳簿づけ(記帳)のやり方
事前準備が済んだら、いよいよ日々の帳簿付け(記帳)です。
「複式簿記」という言葉に身構える必要はありません。
先ほども言いましたが、あなたの仕事は会計ソフトに指示を出すだけです。
「複式簿記」は家計簿の進化版
複式簿記を簡単にいうと、「お金の動き(結果)とその原因をセットで記録する方法」です。
例えば、10万円のパソコンを買った場合、
- 家計簿(単式簿記): 「支出:10万円(パソコン代)」 ← 結果のみ
- 複式簿記: 「(原因)備品が10万円増えた ⇔ (結果)現金が10万円減った」
このように両側から記録することで、財産がどう動いたかが明確になります。
「借方」「貸方」という専門用語がありますが、会計ソフトを使えば、これらの言葉を意識する必要は全くありません。
会計ソフトを使えば簿記の知識は不要!
会計ソフトを使えば、あなたがやることは以下の3つだけです。
銀行口座やクレジットカードを連携する
取引データが自動で取り込まれます。
自動で取り込まれた取引に「勘定科目」を選ぶ
- 例:「〇〇社からの入金」→「売上高」
- 例:「Amazonでの購入」→「消耗品費」
- ソフトが科目を推測してくれるので、選ぶだけでOK!
手動で現金取引などを入力する
- 例:「現金で文房具を1,000円購入」と入力するだけ。
これだけで、ソフトが裏側で面倒な複式簿記の帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など)を全て自動で作成してくれます。
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---|---|---|---|
特徴 | 簿記知識ゼロの初心者向け。〇✕で答えるだけで仕訳が完了。 | 連携機能が豊富。自動化に強い。 | 老舗の安心感。サポートが充実。 |
おすすめな人 | とにかく簡単に始めたい人 | 複数の口座やサービスを使っている人 | 電話サポートを重視する人 |
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初心者がやりがちな記帳ミスとその対策
多くの帳簿を見てきた中で、初心者が特に間違えやすいポイントがあります。
これを知っておくだけで、後々の修正作業が格段に減ります。
プライベートの支出と事業の支出をごちゃ混ぜにする
事業専用の銀行口座とクレジットカードを作りましょう。これだけで公私混同が劇的に減り、帳簿付けが楽になります。もしプライベートのお金で事業の経費を支払ったら、「事業主借」という科目で処理します。
売上の計上漏れ
特に現金での売上は記録を忘れがちです。どんなに少額でも、売上があったその日のうちにメモするか、会計ソフトに入力する癖をつけましょう。銀行振込だけでなく、クラウドソーシングサイトの売上なども忘れずに。
勘定科目を適当に選んでしまう
迷ったら、ソフトの推測機能やヘルプを使いましょう。例えば、打ち合わせの飲食代は「接待交際費」、一人でのランチは経費になりません。このルールを最初にある程度理解しておくとスムーズです。
決算整理と確定申告書類の作成
一年間(1月1日~12月31日)の記帳が終わったら、いよいよ申告書類の作成です。
これも会計ソフトがほぼ全自動でやってくれるので、安心してください。
作成するメインの書類は「青色申告決算書」と「確定申告書」の2つです。
青色申告決算書
これは、一年間の事業成績をまとめた報告書です。
会計ソフトの指示に従ってボタンをクリックしていくだけで、日々の記帳データから自動で作成されます。
特に重要なのが、以下の2つの書類です。
- 損益計算書(PL): 一年間の儲け(利益または損失)がいくらだったかを示す成績表。
- 貸借対照表(BS): 年末時点で、どれくらいの財産(資産や負債)があるかを示す財産目録。
「言葉が難しい…」と感じるかもしれませんが、会計ソフトを使っていれば、各項目の数字は自動で埋まります。
あなたは「へぇ、今年はこれだけ儲かったのか」「年末の現金はこれくらいか」と内容を確認するだけでOKです。
確定申告書
これは、事業の儲け(所得)だけでなく、医療費控除やふるさと納税などの情報も全て合算して、最終的な納税額を計算するための書類です。
会計ソフトには、この確定申告書を作成する機能も付いています。
青色申告決算書で計算された事業所得の金額が、確定申告書の該当箇所に自動で転記されます。
確定申告書の提出方法
完成した確定申告書を税務署に提出して、ようやく完了です!
提出期間は、原則として翌年の2月16日~3月15日です。
(2025年の申告期間は、土日祝の関係で変動する可能性があります。例:2025年2月17日(月)~3月17日(月))
提出方法は3つありますが、65万円控除を受けるならe-Taxです。
e-Tax(電子申告)
65万円控除を受けるための必須条件であり、最も簡単・便利な方法です。
パソコンやスマホを使って、オンラインで申告を完結させる方法です。
これまでの55万円控除に加えて、e-Taxで申告することで10万円の上乗せ控除が適用され、合計65万円の控除が受けられます。
【必要なもの】
- マイナンバーカード
- ICカードリーダライタ または マイナンバーカード読取対応のスマートフォン
【やり方】
会計ソフトから直接e-Taxで送信するのが最も簡単でおすすめです。
ソフトの画面指示に従って操作するだけで、数クリックで申告が完了します。
わざわざ国税庁のサイト(e-Taxソフト)を直接操作する必要はありません。
税務署へ持参
印刷した申告書を、管轄の税務署の窓口に直接提出する方法です。
その場で控えに受付印を押してもらえる安心感がありますが、混雑時は長時間待つこともあります。
郵送
印刷した申告書を、管轄の税務署に郵送する方法です。
「信書」として送る必要があり、消印の日付が提出日とみなされます。
提出方法 | メリット | デメリット | 65万円控除 |
---|---|---|---|
① e-Tax | 自宅で完結、24時間OK、添付書類省略可 | マイナンバーカード等の事前準備が必要 | ◎ 可能 |
② 税務署へ持参 | その場で受付印がもらえる、質問できる | 混雑する、開庁時間内のみ | × 不可(55万円控除) |
③ 郵送 | 自宅から送れる | 受付印付きの控えの返送に手間がかかる | × 不可(55万円控除) |
【FAQ】青色申告の「困った!」を解決するQ&A
初心者の方が抱きがちな細かい疑問にお答えします。
年の途中で開業した場合、経費や控除はどうなるの?
開業日以降の売上と経費で計算します。
減価償却費や各種控除額は、事業を行っていた月数に応じて「月割按分」して計算する必要がありますが、これも会計ソフトが自動で計算してくれるのでご安心ください。
副業でも青色申告(65万円控除)はできますか?
はい、できます。ただし、副業の収入が「事業所得」として認められる規模・継続性があることが条件です。
お小遣い稼ぎ程度の「雑所得」と判断されると、青色申告はできません。
期限に間に合わなかったらどうなりますか?
「期限後申告」として受け付けてもらえますが、ペナルティがあります。
まず、青色申告特別控除が65万円(または55万円)から10万円に減額されてしまいます。
さらに、本来の税額に加えて「無申告加算税」や「延滞税」が課される可能性があり、大きな損をしてしまいます。
赤字だった場合も申告は必要ですか?
絶対に申告してください!
メリット②で解説した通り、赤字を申告することで、その赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺できる「繰越控除」のメリットが受けられます。
申告しないとこの権利を失ってしまいます。
税金の納付方法と期限は?
申告した所得税の納付期限も、申告期限と同じ原則3月15日です。
納付方法は、便利な口座振替(振替納税)、クレジットカード納付、コンビニ納付、金融機関や税務署の窓口での納付などがあります。
振替納税が最も便利で、納付忘れも防げるのでおすすめです。
【まとめ】青色申告までの全手順チェックリスト
申告完了までに「やることリスト」をまとめました。
一つずつ着実に進めていきましょう。
青色申告 達成チェックリスト
事前準備
- (未提出の場合)「開業届」を税務署に提出したか?
- (未提出の場合)「青色申告承認申請書」を期限内に提出したか?
- 事業用の銀行口座・クレジットカードを準備したか?
日々の業務
- 会計ソフトを導入したか?
- 銀行口座・クレジットカードをソフトに連携したか?
- 領収書や請求書を整理・保管しているか?
- 日々の取引を会計ソフトに記帳する習慣をつけたか?
決算・申告書作成
- 1年間の記帳が完了したら、会計ソフトで「青色申告決算書」を作成したか?
- 会計ソフトで「確定申告書」を作成したか?(控除情報なども入力)
提出と納税
- (e-Taxの場合)マイナンバーカードを準備したか?
- 申告期限(原則3月15日)までにe-Taxで提出したか?
- 納付期限までに所得税を納付したか?
一度この流れを経験すれば、翌年からは驚くほどスムーズに進められるようになります。
そして、その努力は最大65万円の控除という、大きな節税メリットとして返ってきます。
無事に申告を終え、事業をさらに発展させていくことを応援しています!