仮想通貨(暗号資産)取引で利益が出たけれど、
- 確定申告は必要なの?
- 税金はいくらになる?
- 会社員だけど会社に知られずに申告できる?
といった疑問や不安を抱えていませんか?
仮想通貨の税金計算は複雑ですが、ルールを正しく理解しないと、後から追徴課税などの重いペナルティを課される可能性があります。
この記事では仮想通貨の確定申告が必要になるケースから、所得の計算方法、税率、そして具体的な申告手順まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
仮想通貨の確定申告が必要な場合と不要な場合
まずは、ご自身の状況が確定申告が必要なケースに当てはまるか、以下の早見表でチェックしてみましょう。
あなたの状況 | 仮想通貨の年間所得(利益) | その他の状況 | 確定申告 |
---|---|---|---|
会社員(給与所得者) | 20万円を超える 20万円以下 | 給与以外の所得が仮想通貨のみ | 必要 原則不要 |
被扶養者(学生・主婦など) | 合計所得で48万円を超える 合計所得で48万円以下 | ー ー | 必要 原則不要 |
個人事業主など | 金額にかかわらず | 事業所得などがある | 必要 |
上記すべての方 | 金額にかかわらず | 医療費控除やふるさと納税で申告する | 必要 |
仮想通貨(暗号資産)で確定申告が必要になる4つのケース
暗号資産を売却または使用して利益(所得)が生じた場合、原則として所得税の課税対象となり、確定申告が必要です。
具体的には、以下のいずれかに当てはまる場合に申告義務が発生します。
会社員で仮想通貨の利益が年間20万円を超える場合
年末調整を受けている会社員の方で、給与所得および退職所得以外の所得、つまり仮想通貨の利益の合計額が年間で20万円を超える場合、確定申告が必要です。
これは最も一般的なケースであり、多くの方が対象となる基準です。
被扶養者で合計所得が年間48万円を超える場合
学生や主婦(主夫)の方で、配偶者控除や扶養控除の対象になっている場合、仮想通貨の利益を含む年間の合計所得金額が48万円を超えると、扶養から外れる可能性があり、確定申告が必要になります。
医療費控除やふるさと納税で確定申告を行う場合
このケースは非常によくある間違いなので注意してください。
医療費控除や住宅ローン控除、ふるさと納税(寄付金控除)などで確定申告をする場合は、仮想通貨の利益が20万円以下であっても、その金額を申告に含めなければなりません。
「利益が20万円以下だから申告不要」というルールは、他に申告することが何もない場合にのみ適用されます。
個人事業主やフリーランスの場合
個人事業主や不動産所得がある方など、そもそも毎年確定申告を行っている方は、仮想通貨の利益の金額にかかわらず、必ず事業所得などとあわせて申告する必要があります。
利益はいつ発生する?課税対象となる5つのタイミング
「日本円に換金したときだけが課税タイミング」と考えていると、申告漏れの原因になります。
国税庁の指針では、以下のタイミングで利益が確定(所得が発生)したと見なされます。
- 売却:保有する暗号資産を日本円などの法定通貨に売却したとき。
- 交換:保有する暗号資産で、別の種類の暗号資産を購入したとき。
- 決済:暗号資産を使って商品やサービスを購入したとき。
- 報酬(マイニング等):マイニング、ステーキング、レンディングなどで新たに暗号資産を取得したとき。
- その他:ハードフォークで得た新たな暗号資産を売却・使用したとき(取得価額0円で計算)。
仮想通貨の所得(利益)と税金の計算方法
仮想通貨の所得は総収入金額(売却価格) − 必要経費(取得価格など)で計算します。
ここでは、所得の区分から具体的な計算方法までをステップで解説します。
所得区分を理解する
個人の仮想通貨による利益は、原則として雑所得に分類されます。
雑所得の特徴
- 給与所得など他の所得と合算して税額を計算する総合課税の対象となる。
- 損失が出ても、給与所得など他の所得と相殺(損益通算)することはできない。
- 損失を翌年以降に繰り越すこと(繰越控除)もできない。
例外的に、取引が事業として認められれば「事業所得」となり、損失の繰り越しなどのメリットがありますが、その認定基準は非常に厳格なため、税理士への相談が不可欠です。
取得価額の計算方法を選ぶ
売却した仮想通貨の取得価額(仕入れ値)を計算する方法は、総平均法と移動平均法の2種類があります。
税務署に届出をしない場合は、自動的に「総平均法」が適用されます。
特徴 | 総平均法 | 移動平均法 |
---|---|---|
計算の複雑さ | 比較的容易(期末に一括計算) | 複雑(取得の都度計算) |
計算タイミング | 年に1回(期末) | 暗号資産を取得する都度 |
損益把握 | 期中の損益把握は困難 | 期中の損益を正確に把握できる |
届出 | 届出なしの場合の法定評価方法 | 選択する場合、事前の届出が必要 |
国税庁は所得計算を支援するExcelの「暗号資産の計算書(総平均法用・移動平均法用)」を公表しており、これを利用すると便利です。
税率を当てはめて税額を計算する
仮想通貨の利益(雑所得)は、給与所得など他の所得と合計した「課税所得金額」に対して、所得税と住民税が課されます。
- 所得税:課税所得に応じて税率が5%~45%まで変動する累進課税。
- 住民税:課税所得に対して一律10%。
これらを合計すると、所得が大きい場合、最大で約55%の税率が適用される可能性があります。
所得税の速算表(令和6年分以降)
(出典:国税庁 No.2260 所得税の税率を基に作成)
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
仮想通貨で損失が出た場合の注意点
仮想通貨取引で年間の損益がマイナス(損失)になった場合、その所得区分が「雑所得」であれば、その損失を給与所得など他の黒字の所得と相殺(損益通算)することはできません。
また、損失を翌年に繰り越すことも認められていません。
ただし、同じ雑所得のカテゴリー内であれば損益通算が可能です。
例えば、仮想通貨の損失を、副業の原稿料(同じく雑所得)の利益と相殺することはできます。
仮想通貨の確定申告のやり方(スマホ申告の例)
確定申告は、原則として所得が発生した年の翌年2月16日から3月15日までに行います。
ここでは国税庁が推奨するスマホでの申告手順の概要を紹介します。
事前準備
給与所得の源泉徴収票、マイナンバーカード、取引所が発行する年間取引報告書、経費の領収書などを用意する。
事前にExcelの計算書などで所得金額を計算しておく。
作成開始
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にスマホでアクセスする。
情報入力
画面の案内に従い、源泉徴収票の内容や、事前に計算した仮想通貨の収入・経費(雑所得)を入力する。
控除入力
社会保険料控除や生命保険料控除、ふるさと納税などの控除情報を入力する。
住民税の選択
住民税の納付方法を「給与から差引き(特別徴収)」か「自分で納付(普通徴収)」か選択する。
送信・保存
内容を確認し、e-Taxで送信。申告書データ(PDF)を保存する。
申告しないとどうなる?無申告のペナルティ
確定申告の義務があるにもかかわらず申告しなかった場合、本来納めるべき税金に加えて、以下のような重いペナルティが課されます。
無申告加算税
納付すべき税額に対し、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合で課される税金。
延滞税
法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される利息に相当する税金。
重加算税
意図的に所得を隠したなど、悪質と判断された場合に課される最も重いペナルティ(無申告の場合は40%)。
税務当局は暗号資産交換業者に対して情報提供を求めることができ、取引データを把握しています。必ず期限内に正しく申告しましょう。
【FAQ】仮想通貨の確定申告でよくある質問
会社に知られずに申告したい。住民税だけ「自分で納付」にできますか?
はい、できます。確定申告書第二表の「住民税に関する事項」で「自分で納付(普通徴収)」を選択してください。
そうすれば、仮想通貨分の住民税の納付書がご自宅に届き、給与から天引きされません。
仮想通貨の経費として認められるものは何ですか?
取引で得た収入に直接関連する費用が経費となります。
具体的には、取引所に支払う売買手数料や送金手数料、取引の勉強に使った書籍代やセミナー代、取引専用PCの購入費(減価償却の対象)、インターネット代や電気代(使用実態に応じた家事按分が必要)などがあります。
昔の取引で取得価額が分かりません。どうすればいいですか?
全ての取引履歴を遡って確認するのが原則です。
どうしても不明な場合は、売却価額の5%を取得価額とみなす「概算取得費」を適用することも可能ですが、一般的に税負担が重くなるため最終手段と考えるべきです。
【まとめ】仮想通貨の確定申告で失敗しないためのポイント
仮想通貨の確定申告は複雑ですが、ポイントを押さえればご自身でも対応可能です。
- 申告要否の判断:会社員は年間利益20万円超が基本。ただし他の申告があれば金額にかかわらず必要。
- 所得計算:利益は「売却価格 − 取得価格・経費」。計算方法は「総平均法」か「移動平均法」。
- 税金の仕組み:所得は「雑所得」として給与などと合算され、累進課税(最大約55%)。
- 損失の扱い:雑所得の場合、損失が出ても給与所得と相殺・繰越はできない。
- 記録の保存:全ての取引記録は正確な申告の基礎です。必ず整理・保管しましょう。
もし「取引回数が多くて計算が大変」「DeFiやNFTの取引がある」「事業所得として申告したい」など、少しでも不安や疑問があれば、税務調査などのリスクを避けるためにも、暗号資産に詳しい税理士に相談することをお勧めします。