退職金の確定申告は必要なのか?税金の計算方法から申告すべきケースまで解説


  • 長年勤めた会社から退職金をもらったけど、確定申告ってどうすればいいの?
  • 手続きが難しそうだし、できればやりたくない…
  • もしかして、申告しないと損してる?


退職という大きな節目で、税金に関する不安を抱えている方は少なくありません。

結論から言うと、ほとんどの場合、退職金の確定申告は不要です。

しかし、一部のケースでは確定申告が必要になったり、申告することで払い過ぎた税金が戻ってくる(還付される)ことがあります。

この記事を読めば、ご自身が確定申告をすべきかどうかが明確に分かり、退職金で損をしないための正しい知識が身につきます。


退職金の確定申告は必要なのかを知るために


ご自身が確定申告をすべきか、簡単なフローチャートで確認してみましょう。
※下記は簡易的な診断です。詳細は本文でご確認ください。


会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しましたか?

はい → ❷へ

いいえ → 確定申告が必須です。(払い過ぎた税金を取り戻せます)

2024年中に退職し、その後➍年末調整を受けていますか?

はい → ❸へ

いいえ → ❸確定申告をすると、税金が還付される可能性が高いです。

医療費控除やふるさと納税(寄付金控除)など、適用したい所得控除がありますか?

はい → 確定申告が必要です。

いいえ → ➍へ

退職金や給与以外に、副業などで年間20万円を超える所得がありますか?

はい → 確定申告が必要です。

いいえ → 原則、確定申告は不要です。


ほとんどの人は不要!退職金の確定申告が原則いらない理由


多くの場合で確定申告が不要なのは、あなたが退職金を受け取る前に、会社側で納税手続きが完了しているためです。

この仕組みの鍵となるのが退職所得の受給に関する申告書です。

この申告書を退職前に会社へ提出することで、会社があなたの勤続年数などに応じた正しい税額を計算し、退職金から天引き(源泉徴収)して国に納めてくれます。

つまり、この申告書を1枚出すだけで、退職金に関する所得税の納税は完結し、あなた自身が税務署で手続きをする必要はなくなるのです。


退職金で確定申告が必要・お得になる6つのケース


原則不要だとしても、下記に当てはまる場合は確定申告が必要です。

特に、申告することで税金が戻ってくる場合は見逃さないようにしましょう。


【必須】「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった

この申告書を勤務先に提出しなかった場合、退職金の支払額に対し、一律20.42%の税率で所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます

これは、勤続年数に応じた控除などが一切考慮されていないため、本来納めるべき税額より高額になることがほとんどです。

この払い過ぎた税金を取り戻すために、確定申告が必ず必要になります。


年の途中で退職し、年末調整を受けていない

年の途中で退職して年内に再就職しなかった場合、給与所得についての年末調整が行われていません。

毎月の給与から天引きされている源泉所得税は概算額のため、年末調整をしないと税金を払い過ぎたままになっている可能性があります。

確定申告をすることで、給与分の所得税が還付されることが多いです。


医療費控除やふるさと納税などの控除を利用したい

退職した年に下記のような支出があった場合、確定申告をすることで所得税の還付を受けられます。


  • 医療費控除: 年間の医療費が家族分も含めて一定額を超えた場合。
  • 社会保険料控除: 退職後に国民健康保険料や任意継続保険料を支払った場合。
  • 寄付金控除: ふるさと納税をした場合。
  • その他、生命保険料控除、住宅ローン控除(1年目)など。


【必須】退職金以外に年20万円超の所得がある

退職した年であっても、副業(アフィリエイト、原稿料など)や不動産賃貸など、給与・退職所得以外の所得の合計額が年間20万円を超える場合は、確定申告の義務があります。

※所得とは収入から必要経費を差し引いた金額です。


【必要・有利な場合あり】2か所以上から退職金を受け取った

同じ年に複数の会社から退職金を受け取る場合、税額を合算して正しく計算し直す必要があります。

手続きが会社側で正確に完了していない場合や、合算することで税金が還付される場合には、確定申告で精算します。


【必要・有利な場合あり】公的年金の収入が多い

公的年金等の収入が400万円を超え、かつ年金以外の所得(退職所得は除く)が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。


退職金にかかる税金の計算方法~3つの優遇措置で税負担は軽くなる~


退職金の税金が他の所得より優遇されているのは、下記3つの仕組みがあるからです。

確定申告をする際にもこの計算方法を使います。


退職所得控除額を計算する

まず、勤続年数に応じて、税金がかからない「退職所得控除」を計算します。勤続年数が長いほど控除額は大きくなります。


勤続年数計算式
20年以下40万円 × 勤続年数 (※80万円に満たない場合は80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
※勤続年数に1年未満の端数がある場合は1年に切り上げます。


課税退職所得金額を計算する

次に、税金の対象となる金額を計算します。

退職金の額から退職所得控除を引いた残額を、原則として2分の1にします。


課税退職所得金額=(収入金額−退職所得控除額)×1/2


この「2分の1」措置により、課税対象が大幅に圧縮されます。

ただし、後述する勤続5年以下の短期退職金には例外があります。


所得税額を計算する(分離課税)

課税退職所得金額に所得税率を掛けて税額を算出します。

この際、給与など他の所得とは合算せず、退職所得だけで税額を計算する分離課税が適用されます。

これにより、一時的に所得が増えても高い税率がかかるのを防いでいます。​


【要注意】退職金の税制改正と今後のポイント


近年、退職金に関する税制が一部変更されています。

知らずにいると思わぬ税負担増につながる可能性もあるため、しっかり確認しておきましょう。


勤続5年以下の退職金は課税が強化

短期で高額な退職金を受け取るケースへの公平性から、勤続年数が5年以下の従業員や役員に対する課税が強化されています。


  • 一般従業員の場合: 勤続年数5年以下の場合、退職所得控除を引いた後の金額のうち、300万円を超える部分には前述の「2分の1」措置が適用されません。
  • 役員等の場合: 勤続年数5年以下の役員の場合、退職所得控除を引いた後の全額で「2分の1」措置が適用されません。


iDeCoと退職金の受け取り順で控除額が変わる可能性

iDeCo(個人型確定拠出年金)の一時金も税法上は退職所得です。

会社の退職金とiDeCo一時金の受け取り方によっては、退職所得控除額の調整が必要になる場合があります。

現在、この控除額の調整ルールを見直す動きがあり、将来的にiDeCoと会社の退職金の受け取り間隔を広げないと、控除額が減って税負担が増える可能性があります。

退職金の受け取り戦略を立てる際は、最新の税制情報を確認することが重要です。


退職金と確定申告でよくある質問


  • 退職金は翌年の住民税や国民健康保険料に影響しますか?

住民税については、所得税と同じく会社が退職金から天引き(特別徴収)して市区町村へ納付するため、個人での手続きは原則不要です。

国民健康保険料については、退職一時金は算定の基礎となる所得に含まれないため、退職金を受け取ったことで翌年の保険料が上がることはありません。


  • 確定申告の手続きはどうすればいいですか?

確定申告は、原則として所得を得た翌年の2月16日から3月15日に行います。

申告には、会社から交付される「退職所得の源泉徴収票」が必須です。

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って入力するだけで申告書を作成でき、e-Taxで電子提出も可能です。


【まとめ】退職金の確定申告、迷ったら専門家へ相談を


本記事の内容をまとめます。


項目内容
基本原則「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、原則として確定申告は不要です。
確定申告が必要・お得になる主なケース以下のような場合は、確定申告が必要です。

・申告書を未提出の人
・年末調整を受けていない人
・医療費控除などを利用したい人
・副業所得が20万円超の人
税金のポイント(優遇措置)退職金にかかる税金は、以下の3つの仕組みで負担が軽減されています。

退職所得控除: 勤続年数に応じた大きな非課税枠があります。

2分の1課税: 上記の控除を引いた残額が、さらに半分として計算されます(原則)。

分離課税: 給与など他の所得と合算せず、退職金だけで税額を計算します。
主な注意点勤続5年以下の短期退職金:「2分の1課税」のルールが適用されない場合があります。

iDeCoとの関係:会社の退職金とiDeCo(個人型確定拠出年金)の一時金を両方受け取る場合、受け取り方によって控除額が変わるため注意が必要です。


退職金の税務は専門的で、個々の状況によって最適な対応は異なります。

もしご自身のケースで判断に迷ったり、手続きに不安を感じたりした場合は、一人で悩まずに税務署の相談窓口や税理士などの専門家に相談しましょう。

大切な退職金を正しく受け取るために、確実な手続きを行ってください。



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