創業時の資金調達として、日本政策金融公庫などから創業融資を受けることを検討する人は多いでしょう。
その際、「債務整理をしたけど融資を受けることができるのだろうか?」と考える人もいるかもしれません。
この記事では債務整理をしても創業融資は受けられるのか?審査におけるポイントや注意点は?など説明していきます。創業融資を受けたいけど、債務整理の経験があるから不安…という人はぜひ参考にしてください。
そもそも債務整理とは?
さて、それではまず融資を受けられるかの前に、「そもそも債務整理とは何なのか?」について押さえておきましょう。
債務整理とは、金融機関などから借り入れをした際に約定した(約束した)金額よりも下回る金額で返済をしたり、返済の免除をしてもらう手続きのことです。
一般的に債務整理には任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4種類があり、免除額や仕組みが異なります。
任意整理
任意整理とは、債権者と交渉して返済額の減額や利息、遅延損害金の減免などをしてもらうこと。
任意整理は原則として債権者と債務者の当事者間で個別に交渉するもので、法的手続きによる他の3つとは性質が異なります。
特定調停
特定調停とは、特定調停法に定められた民事調停手続の一種で、債務の返済ができなくなる恐れのある債務者の申立てによって、裁判所が減免などの調整を行う手続きです。
特定調停による合意成立は確定判決と同一の効力を生じますが、当事者間の合意が前提となりますから、必ずしも減免がされるとは限りません。
個人再生
個人再生とは、民事再生法13章の規定に則り、裁判所関与のもと個人債務者の債務を減免する手続きです。
給与所得者の場合は給与所得者等再生、個人事業主の場合は小規模個人再生がそれぞれ適用されます。
自己破産
自己破産とは、借入の返済ができなくなった際、裁判所に申し立てることで債務を免除してもらう制度です。
他の債務整理とは異なり、面積が認められると債務の返済が全額免除されますが、財産を手放す必要があったり、一定期間特定の業種に就けなくなるなどデメリット・リスクも高くなります。
債務整理中でも創業融資は受けられる?
さて、債務整理の基本を理解したところで、本題の「債務整理中でも創業融資は受けられるのか?」という疑問について考えていきましょう。
結論から言えば、融資を受けられる可能性はある、となります。
もう少し厳密に言うと、融資の申し込み自体は可能、ということです。
日本政策金融公庫では、申し込みの要件や制限に、債務整理中であるかどうか、という項目を設けていません。
つまり、債務整理中であろうがなかろうが、関係なく融資に申し込むこと可能ということになります。
実際に債務整理中でも融資申請をした、という事例は多くあります。
債務整理は審査に影響する?
融資に申し込むこと自体は可能であっても、重要なのは実際に融資に通るかどうかでしょう。
債務整理をしていると融資への影響はないのでしょうか。
これは残念ながら影響はある、といって良いでしょう。
日本政策金融公庫では、融資にあたって個人事業主や法人代表者の信用情報を確認します。信用情報とは、個人のクレジットカードの使用履歴やローンの支払い、携帯電話の割賦契約などの情報が記載されたものです。
この信用情報には、返済の遅延などがあると「事故情報」として履歴が残り、融資の審査に影響を与えることになります。いわゆる「ブラックリスト入り」というものです。
債務整理の情報に関しても、債務整理が決定するとその種類を問わず情報が記載されますから、債務整理中の人物は融資をしても返済することが難しい…と判断される可能性があります。
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また、個人再生や自己破産の場合は官報に情報が掲載されますが、官報の情報は信用情報機関のひおつである全銀協が取得し記録します。日本政策金融公庫では全銀協に登録されている官報の情報を確認しますし、融資を申し込んだあとでの面談においても債務整理の有無を確認されることがありますので、官報に掲載される債務整理を行っていると、審査に影響があると考えるべきでしょう。
参考:日本政策金融公庫 プライバシーポリシー「個人信用情報機関及びその加盟会員による個人情報の利用・提供」
債務整理をしても融資を受けられた事例
今見てきたように、債務整理をしていると融資に申し込むことは可能でも、審査に通ることは債務整理をしていない人と比べて難しくなることがわかります。
しかし、中には債務整理の経験がある人でも、融資に通ったという事例もあります。
債務整理経験がある人で融資に通った人はどのような人なのでしょうか?
信用情報の事故歴が抹消されていた
支払い遅延や債務整理など事故歴の情報は信用情報期間に記録されますが、何も永久に残るわけではありません。
一定期間が経てば、事故歴は抹消されます。
どれくらいの期間が経てば登録が抹消されるのか?は債務整理の種類や信用情報機関によっても異なりますが、任意整理などは完済から5年、自己破産であれば面積確定から10年経過すれば記録は抹消されます。
そのため、債務整理手続き中や債務整理後で返済中の場合は審査に通る難易度が上がりますが、債務整理後一定期間を経て信用情報の記録が抹消された際には、事故歴がない人と同様に審査を受けることが可能になります。
自己資金を多く貯めていた
また、債務整理中でも融資を受けられた事例として「自己資金を多く貯めていた」という人が挙げられます。
日本政策金融公庫では、自己資金が無くても融資を受けられる可能性はありますが、自己資金は多く持っていたほうが融資にプラスに働くことは間違いありません。
自己資金を多く持っているということはそれだけ計画的にお金を貯められるという証明にもなりますし、資金を投じて事業を行うという覚悟もあるといこうことになります。また貸す側としても、自己資金が多ければそれだけ返済が滞るリスクが低くなりますから、返済能力の根拠にもなります。
また融資制度によっては自己資金の要件が定められているものもあり、それだけ日本政策金融公庫は自己資金を重要視しているということになります。
ですから、仮に債務整理中の身であったとしても、計画的にお金を貯め自己資金を用意しているということは融資審査に良い影響を与え、総合的な判断で融資が可決される可能性もあるのです。
まとめ
今回は債務整理経験があっても創業融資を受けられるのか?という疑問について説明してきました。
簡潔にまとめておきましょう。
- 債務整理経験があっても創業融資の申し込みは可能
- 債務整理は融資の審査に影響を与える
- 債務整理をしていても審査に通るためには準備が必要
繰り返しになりますが、債務整理を受けていること自体は創業融資の申し込み要件に該当しないので、特に影響はありません。
しかし実際には、債務整理をしていると様々な面から融資実行において不利に働くでしょう。
債務整理経験があっても融資を受けたい場合は、自分の今の状況や情報を確認して、融資に向けてしっかりとした準備が必要です。
また一人で融資を申し込むのが不安な場合は、創業融資をサポートしている専門家や専門業者に相談してみるのも良いでしょう。