創業融資の審査に落ちる5つの理由。事例をもとに審査に通らない理由を解説します。


創業融資は新たに事業を始める際の重要な資金調達手段ですが、その審査は非常に厳格であり、適切な準備が求められます。弊社にご相談いただいた方々の中にも、残念ながら融資が通らなかった事例がいくつかありました。以下に、具体的な事例とその原因を挙げ、審査に通過するためのポイントを解説いたします。


理由①:信用情報の問題


創業融資の審査において、申請者の信用情報は極めて重要な要素です。過去の犯罪歴親族の金融事故は、審査に大きな影響を及ぼす可能性があります。


事例①:過去の犯罪歴が審査に与える影響


ある依頼者は、過去に犯罪歴があることを金融機関から指摘され、融資審査に通過できませんでした。金融機関は、申請者の信頼性や法令遵守の姿勢を重視するため、犯罪歴がある場合、融資の承認が難しくなることがあります。


事例2:親族の金融事故が審査に与える影響


別の依頼者は、親が日本政策金融公庫からの借入を自己破産していたため、審査に影響を受けました。申請者自身に問題がなくても、親族が過去に金融事故を起こしている場合、審査に影響を及ぼすことがあります。特に、同居している家族の信用情報は、申請者の返済能力や信頼性の評価に関連付けられることがあります。


※信用情報の重要性



信用情報は、金融機関が申請者の過去の借入状況や返済履歴を評価するための基礎資料です。これには、クレジットカードの利用履歴、ローンの返済状況、公共料金の支払い状況などが含まれます。信用情報が良好であることは、融資審査を通過するための重要な要素となります。


理由②:必要な許認可の未取得


創業融資の審査において、事業に必要な許認可の取得状況は重要な評価ポイントです。許認可が未取得の場合、事業の合法性や継続性に疑問を持たれ、審査に通過できないことがあります。


事例:中古車販売業における許認可未取得による審査落ち


ある方が中古車販売業を始めるために創業融資を申請しましたが、必要な「古物商許可」を取得していなかったため、審査に通過できませんでした。中古車販売業を営むには、古物商許可の取得が必須であり、これがないと業者専用のオークションへの参加もできません。

事業を円滑に進めるためには、必要な許認可を事前に確認し、適切に取得することが不可欠です。これにより、融資審査の通過率も高まります。


理由③:自己資金と経験の不足


創業融資の審査では、自己資金の額と業種に関する経験が重要な評価ポイントとなります。これらが不足している場合、審査通過が難しくなることがあります。


自己資金や業種経験が不足している場合の審査への影響


創業融資の審査では、自己資金と業種経験が重要視されます。自己資金は事業へのコミットメントや返済能力の指標とされ、一般的に開業資金の3分の1以上があるといいとされています。

自己資金が不足していると、事業の継続性や返済能力に疑問を持たれ、審査で不利になる可能性があります。また、業種経験は事業運営の実行力やリスク管理能力の証とされ、経験がない場合、事業計画の実現性や収益性に対する信頼性が低下し、審査で不利になることがあります。


事例:未経験の事業に自己資金なしで挑戦


ある方は、サラリーマン生活を避けたいとの理由で、未経験の業種で自己資金もないまま飲食店の事業を始めようとしました。この状況では、融資審査に通る可能性が極めて低いため、申請自体を見送る判断をされました。

自己資金の確保と業種経験の積み重ねは、創業融資の審査通過において不可欠な要素です。計画的な準備と努力が、事業成功への道を開きます。


理由④:名義貸しや虚偽申請


創業融資の審査において、申請内容の正確性は極めて重要です。配偶者名義での申請や事業実態のない申請は、審査において重大なリスクを伴います。


事例:配偶者名義での融資申請の相談


ある方から、「自分名義ではもう融資を受けることができないため、妻の名義で事業を行う事にして、融資を受けられないか」という相談がありました。このような名義貸しによる申請は、金融機関に対する虚偽申請と見なされ、審査に通過することは困難です。


※正確な情報提供の重要性


融資申請においては、事業計画や資金使途、申請者の経歴など、すべての情報を正確かつ誠実に提供することが求められます。虚偽の情報を提供すると信用失墜や法的リスクを招くだけでなく、事業そのものの信頼性も損なわれます。


理由⑤:資金使途の不適切さ



創業融資の審査において、資金の使途は極めて重要な評価ポイントです。生活資金や株式購入など、事業と直接関係のない目的での融資申請は、審査において大きなマイナス要因となります。


事例:海外の生命保険加入を目的とした融資申請の相談


ある方から、「海外の率の良い生命保険に加入したいので、事業を始めることにして融資を受けられないか」という相談がありました。しかし、創業融資は事業運営に必要な資金を対象としており、個人的な投資や保険加入のための資金として利用することは認められません。このような資金使途の不適切さは、融資審査において否決の要因となります。


※適切な資金使途の設定とその説明方法


事業計画との整合性


資金使途は、具体的な事業計画と一致している必要があります。例えば、設備投資や運転資金など、事業運営に直接関連する項目を明確に設定します。


詳細な内訳の提示


資金の使用目的を具体的に示すことで、計画性と信頼性を高めます。例えば、設備購入費、原材料費、人件費など、各項目の金額と用途を明確に記載します。


合理的な金額設定


必要以上の資金を申請すると、計画性の欠如と判断される可能性があります。事業規模や計画に応じた適切な金額を設定し、過大な申請は避けます。


資金使途の説明方法

面談や申請書類において、資金の使用目的を具体的かつ論理的に説明します。例えば、「新規店舗の内装工事費用として〇〇万円を使用し、これにより売上増加を見込んでいます」といった形で説明します。

適切な資金使途の設定と明確な説明は、融資審査の通過において不可欠です。事業計画と資金使途を一致させ、具体的かつ合理的な説明を心がけましょう。


まとめ


創業融資で落ちる事がないよういかにポイントを整理します。


  • 過去の信用情報を確認し、必要に応じて改善する。
  • 必要な許認可を事前に確認し、適切に取得する。
  • 十分な自己資金と業種経験を準備する。
  • 配偶者名義や虚偽の申請を避け、正確で誠実な情報を提供する。
  • 資金使途を事業計画と一致させ、具体的に説明する。


これらのポイントを踏まえ、事前準備を徹底し、正確で誠実な申請を行うことで、創業融資の審査通過率を高めることができます。適切な資金計画と事業計画の策定に努め、事業成功への道を切り開きましょう。


この記事を書いた人

税理士法人T-FRONT

税理士法人T-FRONT

愛知県名古屋市、静岡県浜松市など東海地方に拠点を置く税理士法人です。
顧問税理士サービスをはじめ会社設立、創業融資、元国税庁職員による税務調査対応など、法人や個人事業主の税務・財務問題に幅広く対応。ともに伴走し、事業をともに成長させるパートナーとして日々活動しています。
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