事業経営においては、経理や税務処理はつきものです。
毎月の記帳や決算期の申告など、必ずやらなければならないものではありますが…本業の売上や利益に直結するわけではありませんし、やることも多く複雑で正直めんどくさい、というのが本音ではないでしょうか。
そんなときに頼りになるのが、顧問税理士の存在です。
税理士と顧問契約をしていれば、各種の税務代行はもちろんのこと、節税や資金調達など事業成長繋がる様々な相談をすることができます。
しかし、税理士といっても考え方から対応範囲や得意分野まで様々。近所の税理士だけでも何人もいて、何を基準に選ぶかわからない人もいるのではないでしょうか。また以前契約していた税理士があまり良くなかったから別の税理士に変更したい、なんて人もいるでしょう。
今回はそんな税理士選びの際に重要な、良い税理士と悪い税理士の見極め方やポイントについて紹介していきます。
税理士選びで失敗したくない人はぜひ最後まで読んでみてください。
税理士に良い・悪いってあるの?
まずはそもそもの話、税理士にわかりやすい「良い」「悪い」はあるのでしょうか?
これは結論、あります。
良い点については自身が何を望むかによっても変わりますが、特に悪い点については明確にあると言えるでしょう。
態度が悪い
その最たる例が、税理士の「態度」です。
税理士と顧客の間では頻繁にコミュニケーションが発生しますが、その際に尊大な態度、高圧的な態度を取るような税理士は論外と言っても良いでしょう。
具体的には、顧客の要望や意見を聞かず自身の意見や提案を押し付けたり。顧客の要望に応えようとする姿勢が見えない税理士には注意が必要です。そもそも顧客と税理士には知識や情報に格差・非対称性があり、専門家である税理士に顧客は意見できないことももしばしばあります。
そんなとき、専門的な内容でもわかりやすく内容を説明したり、適切にコミュニケーションを取ろうとしない税理士は顧客にとって良い税理士とは言えないでしょう。
また税理士は法律に定められている「独占業務」があり、税理士以外には代行できない業務があります。
その上、士業である性質上、本来対等であるはずの顧客と税理士の関係を、日頃から先生と呼ばれることで勘違いをしてしまう税理士も残念ながら存在します。
最近はインターネットで簡単に情報を調べることもできますし、大規模な税理士法人であれば評判を調べることもできますから、以前よりこうした傾向は減ってはいますが、いまだに“残念な税理士”も存在します。
ですから、接していて何らかの違和感やストレスを感じる場合は、内容面では悪くなさそうでも相性が悪い可能性もありますので、長期的に付き合うことを考えると避けることも検討して良いでしょう。
レスポンスが遅い
また、レスポンスが遅い税理士も注意が必要です。
税理士変更を検討する人の多くが、レスポンスが遅い、問い合わせに対する返答を忘れられるといった理由を挙げています。
会社経営においては、税務や会計処理においてレスポンスの遅さは致命的になることもあります。そのため、レスポンスの遅い税理士はストレスを感じるだけでなく、実害を被る可能性もありますので避けるのが賢明です。
また、こちらから問い合わせしないと連絡がこない税理士も良い税理士とは言えないでしょう。依頼したことや確認したことだけ返信がくるのであれば、誰に頼んでも同じであり、顧問契約をしている意味やメリットもありません。
依頼したときだけではなく、定期的に税理士側からも事業に有益な情報や提案をしてくれるのが、良い税理士の条件のひとつと言えるでしょう。
報酬が不明瞭
報酬が不明瞭な税理士にも注意が必要です。
基本的に、税理士への報酬や作業ごとや事業規模ごとに決まっています。そのため、何か報酬が発生する依頼の場合は事前に費用を伝えるのが普通ですし、確認すればすぐに教えてくれることでしょう。
ただ、はっきりと費用を伝えずに依頼に着手した場合、完了後に高額な費用を請求してくる可能性もあります。
たとえ他の税理士や事務所と比較して大幅に高いわけではなくても、事前に金額がわからないのはストレスですしトラブルのもとにもなります。
基本的に税理士はサービス内容ごとに決まった報酬表を持っていますから、依頼前に確認するのが良いでしょう。
また、税理士報酬については安ければ安いほど良い、というわけではないのも注意点です。
依頼する側からすれば、できるだけ支払う費用は安く抑えたい、というのは当然のことでしょう。ただ、税理士業もボランティアではなくビジネスですから、サービスには一定の料金相場というものが存在します。
税理士や事務所によって多少に違いはあれど、サービス内容や業種、規模によってだいたいの相場観というのは決まってきます。少なくとも同等の内容で桁がひとつふたつ変わるなんてことはあり得ません。
報酬表や料金体系についてはネットで公開している事務所も多いですから、ある程度は簡単に調べることができます。その中で、依頼を考えている税理士の金額があまりに安すぎる場合は、安かろう悪かろうではないか?注意を払う必要があるでしょう。
アナログで高齢
その他、やり方がアナログな税理士も近年では微妙でしょう。
昨今は会計ソフトの普及や電子申告の登場によって、税理士業務もオンライン化・電子化が進んでいます。
上手にソフトやツールを取り入れることで、より早く、より便利に、より正確に業務をこなすこともできますし、コストを抑えることも可能になりました。
そんな中、特に高齢な税理士に多いのですが、いまだにアナログなやり方のままで電子化に対応していない税理士は今の時代微妙と言わざるを得ません。
アナログな方法ではどうしても人的ミスが発生する可能性も高くなりますし、いまだにアナログな方法を続けている税理士はその他の情報についてもアップデートできておらず、思わぬ損をする可能性もあります。
もちろん全ての高齢な税理士が悪いわけではなく、ベテラン税理士の中でも最新の情報にアップデートしている人もいます。
ただし、傾向としては若い税理士のほうがクラウド会計ソフトなど最新のツールにも慣れている可能性が高いので、そのあたりも質問してみるのがおすすめです。
良い税理士を見極めるポイント
今見てきたように、残念ながら顧客にとって“悪い税理士”というものが存在するのは事実です。
では反対に、“良い税理士”とはどんな税理士なのでしょうか?
ここからは良い税理士の特徴と選ぶポイントを紹介します。
迅速で丁寧なコミュニケーション
これは悪い税理士のところでも取り上げましたが、レスポンスの速度は経営に直結する部分です。
顧客が質問した内容や依頼に対してすぐに対応してくれる、顧客が連絡をしなくても税理士の側から様々な提案をしてくれる、というのは良い税理士の条件のひとつでしょう。
相性が良くストレスが無い
またこれも悪い例で挙げた点ですが、相性の良さも重要です。
どうしても人対人のコミュニケーションが発生する関係ですから、相性の良し悪しは存在します。
ビジネスにおいては個人的な相性や感覚というのは分けて考えるべき、という意見もあるかもしれませんが、こと税理士との関係性においては相性も重要でしょう。
特に顧問契約となると、長期に渡って付き合っていく相手になるわけですから、価値観や相性の一致は思った以上に重要になってきます。
ITスキルがある
こちらも悪い例と反対に、最新の会計ソフトや電子化に対応している税理士は良い税理士の条件のひとつとなるでしょう。
クラウド会計ソフトと連携すれば、正確で効率的に業務をこなすこともできますし、顧客側の手間や負担も大幅に軽減することができます。
またクラウド会計ソフトやチャットツール、WEB会議の登場によって、遠方の税理士でも近くの税理士と同等以上のサービスを提供することが可能になりました。顧客としては、地域に関係なく税理士を選ぶことができるようになったため、選択の幅が広がったといえます。
自社の地域に縛られず良い税理士を探すにあたって、ITツールを駆使しているか、地域に関係なくサービスを提供しているか、なども確認事項に入れておくと良いでしょう。
経験や実績が豊富
良い税理士を選ぶポイントとしては、経験や実績も重要になります。
税理士試験に合格して2年以上の実務経験を積めば、税理士登録は可能です。また国税従事者として税務署に一定期間勤務している者が税理士試験に合格したり、公認会計士や弁護士資格を取得すると税理士資格もできます。
しかし、試験に合格したばかりの若手の税理士とベテランの税理士では経験や実績に大きな差があるのは想像に難くないでしょう。
また、実務経験としてどのような分野を主に担当していたのか?どのような規模、どのような業種の企業や事業主を相手にしていたのか?でも経験値に偏りは出ます。
特に融資のサポートや税務調査の対応などは、経験や実績がモノをいいます。
一般的な税務処理はどの税理士に頼んでも一通りこなしてくれますが、どこまで柔軟かつ的確に対応してくれるか?は税理士の腕次第になります。
自社の業界に精通している
経験や実績に関連して、自社や自身の業界に精通しているかも重要です。
たとえば建設業界と飲食業界、IT業界では同じ税務でも求められる知識が全く違うというのはイメージがつくのではないでしょうか。
税理士によって得意な分野も異なりますから、自社と同じ業界の顧問先がいるか、過去に対応した経験があるかなどはチェックしておくべき項目です。
最新の情報を把握している
税務の世界は常に変化し続けています。
たとえば最近であればインボイス制度の導入や、直接事業とは関連が薄いかもしれませんが、贈与に関しての税制改正が行われたことも記憶に新しいです。
その他、業界ごとに制度が変わることもあります。
こうした税制全般や、各分野の制度変更など最新の情報を常にキャッチアップし、対応しているかどうかは、顧客へ大きな影響をもたらします。
IT技術への対応などと合わせて、最新の情報を把握しているかも重要なポイントです。
料金体系が明確
その他、さきほど悪い点でも挙げたように、料金体系が明確か否かは事前にチェックできるポイントです。
通常であれば自社の業種や事業規模、サービス内容によって明確な料金を算出してくれるはずですから、特に問題となることはありませんが、トラブルにならないためにも事前に料金とサービス内容は確認しておきましょう。
まとめ
今回は良い税理士と悪い税理士について、詳しく見てきました。
要点をまとめておきます。
- 良い税理士と悪い税理士は存在する
- 良い税理士を見極めるポイントは契約前に確認できることも多い
- “自社にとってベストな税理士”を選択するのが重要
繰り返しになりますが、前提として残念ながら明確に“悪い税理士”というものも存在します。
悪い税理士はわかりやすいので、紹介したポイントをふまえて該当する場合は避けるようにするのが賢明です。
その上で、良い税理士を選ぶポイントも紹介しましたのでぜひ参考にしてみてください。
ここで注意が必要なのが、全ての事業者にとって同じ税理士が良い税理士とは限らない、ということ。
税理士ごとに対応業務や得意分野は変わりますので、知人のAさんにとっては良い税理士でも、あなたにとって良い税理士であるかどうかはわかりません。
ポイントもふまえ、自分や自社にとって良い税理士なのか?をよく検討してみてください。