税務署の税務調査と国税局の税務調査の決定的な違いとは?~確率・時期・罰則の違い~


「税務調査」の通知が届いた時、その差出人が「税務署」なのか、それとも「国税局」なのかで、事の重大さは全く異なります。

ほとんどの税務調査は所轄の税務署から行われますが、国税局が直接動くケースは、より深刻な問題を抱えている可能性を示唆します。

この記事では、税務署と国税局が行う税務調査の決定的な違いを解説します。

調査対象の選定基準から、調査官の種類、ペナルティ(重加算税)の違いも解説します。


国税庁・国税局・税務署の役割と関係性


まず、日本の国税組織がどのような階層になっているかを知ることが、税務調査を理解する第一歩です。

これらは国税庁を頂点とする明確な指揮命令系統で成り立っており、それぞれが異なる役割を担っています。


国税庁

全国の国税局や税務署を指導監督する司令塔。税務行政の基本方針を定めます。


国税局

国税庁の地方組織。税務署の監督に加え、資本金1億円以上の大法人や、税務署では対応困難な国際取引、富裕層などの税務調査を直接行います。


税務署

納税者に最も身近な第一線の機関。中小企業や個人事業主の申告受付や税務調査を担当します。


この役割分担により、一般的な税務調査は税務署が、大口で複雑な事案は国税局が担当するという棲み分けがなされています。


【一般的な税務調査】税務署による任意調査~対象者と調査の流れ~


多くの事業者にとって最も関わりが深いのが、所轄税務署による税務調査です。

これは「任意調査」と呼ばれますが、法律上の協力義務(受忍義務)があり、正当な理由なく拒否することはできません。


  • 根拠法令: 国税通則法


  • 主な対象者: 管轄区域内の中小法人、個人事業者。


  • 調査の基本: 裁判所の令状なしに行われる「任意調査」。ただし、調査官の質問に答えなかったり、嘘をついたりすると罰則があります。


  • 調査の流れ
  1. 事前通知: 原則、調査日時などが電話で事前に知らされます。
  2. 実地調査: 調査官1〜2名が来訪し、2〜3日程度で帳簿などを確認します。
  3. 終了: 指摘事項がなければ終了。申告漏れがあれば修正申告を行います。


  • 特官の存在: 税務署には、特に経験豊富な「特別国税調査官(特官)」がいます。署内でも複雑・大口の事案は、この特官が担当するため、通常の調査より深度が深まる傾向があります。


国税局による税務調査~3つの専門部署~


国税局が直接乗り出す税務調査は、税務署の調査とは次元が異なります。

目的別に高度に専門化された部署が対応し、その内容は極めて厳格です。


部門(通称)主な調査対象調査の種類目的と特徴
調査部大法人(資本金1億円以上)、国際取引を行う法人など任意調査複雑な会計処理や国際課税を専門的に調査。税務上の是正が目的。
資料調査課富裕層、大口の租税回避スキームを利用する者など任意調査(極めて徹底的)巨額の追徴課税が目的。徹底的な内偵と長期調査(半年〜1年以上)で、訴訟も辞さない構えで証拠を固める。
査察部悪質・巨額な脱税(逋脱犯)の疑いがある者(通常1億円超)強制調査刑事告発が目的。裁判所の令状で強制的に捜索・差押えを行い、刑事罰を求める。


「マルサより怖い」とまで言われる国税局資料調査課は、任意調査でありながら強制調査に近い心理的圧迫を伴い、納税者を徹底的に追い詰めます。

一方で査察部(マルサ)は、国税犯則取締法に基づき、事前通知なしに現れ、脱税を「犯罪」として立件することを唯一の目的とする、全く性質の異なる組織です。


税務調査に選ばれる確率と時期は?国税局が使うKSKシステムとAI


そもそも税務調査はどのくらいの確率で、いつ頃行われるのでしょうか。

その選定プロセスには、国税の巨大なデータベースシステムが深く関わっています。


  • 調査の確率: 法人全体で実地調査が行われる割合は年間約2〜3%と低い水準です。しかし、一度調査対象に選ばれると、約8割で申告漏れが指摘されるという高い非違割合になっています。


  • 調査の時期: 税務調査は、企業の決算申告が落ち着く例年7月から11月頃に最も多く実施される傾向があります。


  • 選定方法: 国税局や税務署は、「KSK(国税総合管理)システム」に蓄積された全納税者の申告データや外部情報をAIで分析し、異常値や不正の蓋然性が高い納税者を効率的に抽出しています。


長年売上高が900万円台で推移している(消費税の意図的な回避が疑われる)ケースや、同業他社に比べて利益率が異常に低いといった場合、AIが異常を検知し、調査対象としてリストアップされる可能性が高まります。


税務調査のペナルティ~重加算税など追加納税の種類と税率~


税務調査で申告漏れなどが発覚した場合、本来の税金に加え、厳しいペナルティが課されます。

特に意図的な所得隠し(仮装・隠蔽)と判断された場合の「重加算税」は極めて高率です。


種類概要と税率
過少申告加算税申告額が少なかった場合に課される。原則、追加税額の10%(一定額を超えると15%)。
無申告加算税期限内に申告しなかった場合に課される。原則、納付税額の15%〜30%。
重加算税意図的な仮装・隠蔽があった場合に課される最も重いペナルティ。過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%。過去5年以内に同様の不正があった場合はさらに10%加重されることもある。
延滞税納付遅延に対する利息。法定納期限の翌日から納付日まで発生する。


重加算税が課されると、調査期間が最大で過去7年分に遡る可能性があり、追徴税額が非常に高額になるリスクがあります。


また、重加算税は行政罰であり前科はつきませんが、悪質な場合は別途刑事罰(懲役や罰金)の対象となる可能性があります。


税務調査への正しい対応と準備~税理士の選び方と役割~


税務調査の通知は誰にとっても一大事ですが、事前の備えと正しい対応で不利益を最小限に抑えることが可能です。


日頃からの備え

税務調査への最大の防御は、日々の正確な経理処理と証拠資料(契約書、請求書、領収書など)の整理・保存に尽きます。

特に調査で重点的に見られやすい以下の項目は、いつでも根拠を説明できるようにしておくことが重要です。


  • 売上の計上時期や計上漏れの有無
  • 架空人件費や外注費の計上
  • 員報酬や交際費の妥当性


調査通知が来たら、まず税理士に相談を

調査の連絡を受けたら、すぐに顧問税理士に相談してください。

特に、国税局からの通知であったり、複雑な論点が予想されたりする場合には、税務調査に強い税理士のサポートが絶対に必要です。

国税当局での勤務経験を持つ「国税OB税理士」は、調査官の思考プロセスや交渉のポイントを熟知しているため、非常に頼りになる存在です。

税理士は、調査の立会い、調査官との交渉、納税者の権利の保護など、全面的にあなたを守る盾となります。


【FAQ】税務調査に関するよくある質問


税務調査の連絡が来たら、まず何をすべきですか?

まずは慌てずに、顧問税理士に連絡してください。

そして、調査の対象期間や税目を確認し、過去の申告書や帳簿類を準備・再点検しましょう。


税務調査は全部でどのくらいの日数がかかりますか?

税務署による一般的な調査は、実地調査が2〜3日で、その後のやり取りを含め数ヶ月で完了することが多いです。

一方、国税局、特に資料調査課(リョウチョウ)の調査は、半年から1年以上に及ぶこともあります。


国税OB税理士に依頼するメリットは何ですか?

国税局や税務署の内部事情や調査手法、交渉の落としどころを熟知している点が最大のメリットです。

どのような資料をどう説明すれば調査官が納得するのか、実践的なノウハウを持っていることが期待でき、交渉を有利に進められる可能性が高まります。


【まとめ】正しい知識と専門家の活用で、税務調査に備えよう


税務署と国税局の税務調査には、その権限、深度、目的に雲泥の差があります。

どの機関が担当するかによって、納税者が受ける影響は大きく変わるため、その違いを正しく理解しておくことが重要です。

日頃から誠実な申告を心掛けることが最善の策であることは言うまでもありません。

しかし、万が一税務調査の対象となった際には、決して一人で悩まず、税務調査に精通した税理士という専門家を最大限に活用し、自社の権利と財産を守り抜きましょう。



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