「ビジネスカード」は、企業の経費管理を劇的に効率化し、キャッシュフローを改善する経営の力強い味方です。
しかし、種類が非常に多く「どのカードが自社に最適なのか分からない」と悩む経営者や個人事業主の方も少なくありません。
この記事では、ビジネスカードの導入を検討しているすべての方へ向けて、基礎知識から、メリット・デメリット、主要カードの徹底比較、そして事業の成功につながる失敗しない選び方まで、網羅的に解説します。
ビジネスカードとは?基本をわかりやすく解説
「ビジネスカード」がどのようなカードなのか、その定義と種類、そして個人向けクレジットカードとの違いについて、基本的な知識から理解を深めましょう。
ビジネスカードの定義と種類
ビジネスカードとは、一般に「法人カード」とも呼ばれ、法人格を持つ企業や個人事業主が、事業に関連する経費(仕入れ、出張費、広告費、オフィス用品の購入など)の支払いを主目的として利用するクレジットカードです。
事業経費と個人の支出を明確に分離できるため、経理処理の透明性と効率性が格段に向上します。
ビジネスカードは、対象となる事業規模や審査方法によって、主に以下の種類に分類されますが、カードの機能自体に大きな違いはありません。
- ビジネスカード: 主に従業員数が20名未満の中小企業や個人事業主を対象とします。審査では法人の情報に加え、代表者個人の信用情報(個人与信)が重視されることが多く、設立間もない企業でも申し込みやすいのが特長です。
- コーポレートカード: 主に従業員数が20名以上の大企業を対象とするカードです。企業の信用情報(法人与信)に基づいて審査が行われ、利用限度額が高く、多くの従業員に追加カードを発行できる傾向にあります。
個人カードとの決定的な違い
ビジネスカードと個人向けクレジットカードの最も大きな違いは、「引き落とし口座の名義」と「付帯サービスの性質」にあります。
項目 | ビジネスカード | 個人向けクレジットカード |
---|---|---|
引き落とし口座 | 法人名義の口座(屋号付き口座も可)が原則 | 個人名義の口座 |
利用目的 | 事業経費の決済が中心 | 個人のプライベートな支出が中心 |
付帯サービス | 空港ラウンジ、出張サポート、福利厚生代行など事業活動に特化した内容 | ショッピング保険、ポイント優待など日常生活に関連する内容 |
利用限度額 | 比較的高めに設定される傾向 | 個人の返済能力に応じた設定 |
ビジネスカード導入のメリット5選~経費精算だけではない真価~
ビジネスカードを導入するメリットは、単に支払いが楽になるだけではありません。
経理業務の効率化から資金繰りの安定まで、企業の経営基盤を強化する多くの利点があります。
経理業務が劇的に効率化される
社員による経費の立替払いや仮払い、それに伴う精算業務が大幅に削減されます。
さらに、多くのビジネスカードは会計ソフトと連携可能で、利用明細データを自動で取り込み仕訳を自動化できます。
これにより、手入力のミスを防ぎ、経理担当者の作業時間を大幅に短縮します。
キャッシュフローが改善する
経費の支払いをカードに一本化することで、支払日がカード会社からの引き落とし日に集約されます。
カード利用日から実際の引き落とし日まで平均1〜2ヶ月程度の支払い猶予期間が生まれるため、手元資金の流出を遅らせ、資金繰りの安定化に貢献します。
目に見えるコストを削減できる
銀行振込にかかる振込手数料を削減できます。
また、カード利用で貯まるポイントやマイルを航空券やオフィス用品の購入に充当すれば、実質的な経費削減につながります。
国税などの税金もクレジットカードで納付でき、ポイントが貯まるメリットがあります。
ガバナンス(企業統治)が強化される
経費の私的利用を抑制し、万が一不正利用が発生しても、利用明細を通じて早期に発見しやすくなります。
従業員ごとの利用限度額設定や、利用先を制限する機能もあり、企業の経費規定に沿った適切なカード利用を促進できます。
ビジネスに役立つ付帯サービスが豊富
出張が多い企業にとって、空港ラウンジの無料利用や国内外の旅行傷害保険は大きなメリットです。
その他にも、オフィス用品の割引購入、レンタカー優待、福利厚生代行サービスなど、事業運営をサポートする多様なサービスが付帯しています。
見落とせないビジネスカードの注意点やデメリット
多くのメリットがある一方、ビジネスカードの導入・運用にあたっては、事前に理解しておくべき注意点も存在します。
年会費が発生する場合がある
多くのビジネスカード、特にサービスが充実したゴールドやプラチナ等の上位カードには年会費がかかります。
年会費は経費として計上できますが、コストに見合うメリットがあるかを慎重に比較検討する必要があります。
従業員の私的利用リスクがある
従業員に追加カードを配布する場合、経費の私的利用というリスクが常に伴います。
これを防ぐため、カードの利用範囲や手順を明確に定めた社内ルールを策定し、全従業員に周知徹底することが不可欠です。
ポイントの会計処理が必要になる
ビジネスカードの利用で貯まったポイントは、税法上、事業収入とみなされます。
ポイントを利用した際は「雑収入」として計上するか、支払い額からの「値引き」として処理する必要があるため、経理処理を忘れないよう注意が必要です。
主要ビジネスカード徹底比較表~おすすめはビジネスカードはこれ!~
数あるビジネスカードの中から、特に人気が高く、特色のある代表的なカードを比較表にまとめました。
自社のニーズに合ったカード会社を見つけるための参考にしてください。
発行会社 | カード名 | 年会費(税込) | こんな人におすすめ | 特筆すべきメリット |
---|---|---|---|---|
三井住友カード | 三井住友カード ビジネスオーナーズ (一般) | 永年無料 | 初めてビジネスカードを持つ個人事業主・スタートアッ | 登記簿謄本・決算書が不要で申し込みやすい。ナンバーレス仕様でセキュリティも高い。 |
クレディセゾン | セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード | 永年無料 | WEB広告やクラウドサービスを多用するIT系事業者 | AWSやGoogle広告など特定のビジネスサービスでポイントが最大4倍(還元率2.0%相当)になる。 |
JCB | JCB一般法人カード | 1,375円 (初年度無料あり) | 車での移動や国内出張が多い事業者 | ETCカードを年会費無料で複数枚発行可能。サイバーリスク保険も自動付帯。 |
三菱UFJニコス | 三菱UFJカード ビジネス | 1,375円 | 信頼性を重視する安定した経営基盤の事業者 | メガバンク系の高い信頼性が魅力。JALオンラインとの連携で出張にも便利 |
アメリカン・エキスプレス | アメリカン・エキスプレス®・ビジネス・ゴールド・カード | 49,500円 | 海外出張が多く、ステータス性を重視する経営者 | 空港ラウンジは同伴者1名まで無料。利用可能額に一律の制限がないため高額決済にも柔軟。 |
ダイナースクラブ | ダイナースクラブ ビジネスカード | 27,500円 | 接待や会食の機会が多く、高額な決済を行う経営者 | 充実のグルメ特典(1名分無料など)。Mastercardも無料で持てるため決済場所に困らない。 |
失敗しないビジネスカードの選び方~3つの戦略的ポイント~
多種多様なビジネスカードの中から最適な一枚を選ぶためには、自社の状況を正しく把握し、戦略的な視点から比較検討することが不可欠です。
事業規模と成長ステージで選ぶ
事業のフェーズによって、ビジネスカードに求められる機能や特性は大きく異なります。
- 個人事業主・フリーランス・設立直後の法人
この段階では、初期コストを抑え、手続きが簡単なことが最優先です。
年会費が無料で、決算書や登記簿謄本が不要な「個人与信」ベースのカードが適しています。
経費と私費を分ける第一歩として、まずは気軽に持てるカードから始めましょう。
【おすすめ例】三井住友カード ビジネスオーナーズ、セゾンコバルト・ビジネス
- 安定・成長期の中小企業
従業員が増え、出張や接待が増えるこの段階では、経費管理の効率化と事業サポート機能が重要になります。
従業員向けの追加カードの発行条件や、空港ラウンジ、手厚い旅行傷害保険といった付帯サービスが選定のポイントです。
「法人与信」ベースのカードも視野に入ってきます。
【おすすめ例】JCBゴールド法人カード、三菱UFJカード ゴールドプレステージ ビジネス
年会費とサービスの費用対効果で選ぶ
「年会費が高いカード=良いカード」とは限りません。
支払う年会費に対して、自社が享受できるメリットが見合っているかを冷静に評価しましょう。
例えば、海外出張が全くないのに海外旅行保険が手厚いカードを選んでも、その年会費は無駄になってしまいます。
逆に、頻繁に空港ラウンジを利用するなら、年会費を払ってでもプライオリティ・パスが付帯するカードを選ぶ方が断然お得です。
ポイント還元率の高さだけに目を奪われず、貯まったポイントの使い道(マイル、ギフト券、支払いへの充当など)や有効期限も総合的に確認することが、賢い選び方のコツです。
経費精算システムとの連携で選ぶ
経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進したい企業にとって、経費精算システムとの連携機能は必須のチェック項目です。
- 連携の効果: カード利用明細が「freee会計」「マネーフォワード クラウド」「弥生会計」などのシステムに自動で取り込まれ、経費申請・承認プロセスが劇的に効率化されます。
- 内部統制の強化: 手作業による入力ミスや改ざんのリスクを根本から排除し、経費データの正確性と信頼性を飛躍的に高めます。
自社で導入済み、あるいは導入を検討している経費精算システムと連携可能なビジネスカードを選ぶことで、バックオフィス業務全体の生産性を大きく向上させることができます。
ビジネスカードに関するよくある質問
設立1年未満の法人や開業直後の個人事業主でもビジネスカードは作れますか?
はい、作れます。会社設立直後でも審査を通過すれば発行は可能です。
特に三井住友カード ビジネスオーナーズのように、設立・開業年数を問わず、代表者個人の信用情報(個人与信)で審査を行うカードは、設立直後の企業にとって有力な選択肢となります。
ビジネスカードの審査で重視される点は何ですか?
審査の基準は「法人与信」か「個人与信」かで異なります。
- 法人与信の場合: 企業の財務状況(売上、利益)、事業の継続性、業歴などが総合的に審査されます。
- 個人与信の場合: 主に代表者個人のクレジットカードヒストリーや、他の借入状況などが審査の対象となります。設立直後の企業では、法人の実績がまだないため、代表者個人の信用情報が特に重要視されます。
ビジネスカードの年会費は経費にできますか?
はい、全額経費として計上できます。
勘定科目は「支払手数料」「諸会費」「雑費」のいずれかで処理するのが一般的です。
事業用のカードであるため、プライベート用のクレジットカードのように家事按分する必要はありません。
貯まったポイントはどう処理すればいいですか?
ポイント利用については税法上の明確な規定はありませんが、一般的に「雑収入」として収益計上するか、経費から直接差し引く「値引き」として処理します。
ポイントは会社の資産とみなされるため、会計処理を忘れないようにしましょう。不明な点があれば税理士に相談することをおすすめします。
【まとめ】最適なビジネスカードは事業を加速させる
本記事では、ビジネスカードの基礎知識から、メリット・デメリット、主要カードの比較、そして自社に最適な一枚を選ぶための戦略的なポイントまでを解説しました。
ビジネスカードは、単に経費を支払うための道具ではありません。経理業務を効率化し、キャッシュフローを安定させ、ビジネスの成長を後押しする戦略的ツールです。
最適なビジネスカードを選ぶための最終チェックリストは以下の通りです。
- 自社の現状を把握する: 事業フェーズ、経費規模、主な使途を明確にする。
- カードに求めるものを決める: コスト削減、業務効率化、ステータス性など、最も重視するポイントを絞る。
- 複数カードを徹底比較する: 年会費、ポイント、付帯サービス、システム連携などを多角的に検討する。
この記事が、あなたの事業をさらに加速させるビジネスカードを見つけるための参考になれば幸いです。