贈与税の税務調査は一般家庭でも来る?調査の時期やばれる確率、申告期限を過ぎた場合のペナルティも解説。

一般家庭の親族間において不動産や現金の贈与があった場合、贈与税の申告は必要なのか?現金の手渡しならば税務署にばれる確率も低く申告しなくてもいいのではないか?などと考えたことはないでしょうか。

結論、贈与税の無申告は法律違反です。

無申告や申告漏れなどがばれれば税務調査の対象となり、追徴課税などのペナルティを受けることになってしまいます。故意ではなくとも、うっかり申告期限を過ぎた場合も同様なので注意が必要です。

それでは、なぜ贈与があったということが税務署にばれてしまうのでしょうか。
この記事では、贈与の事実がばれる具体的なケース、ばれた場合のペナルティ、贈与税の申告が必要ないケースなどをご紹介します。


贈与税の申告漏れがばれるタイミングとは?


税務署では『KSKシステム(国税総合管理システム)』というデータベースで、国民一人一人の財産をおおよそ把握しています。これにより、預貯金額の変動が把握できるのはもちろん、保険会社が保険金を支払った際や貴金属などの買取店が一定以上の買取金額を支払った際に提出される「法定調書」などの情報も蓄積されています。
ですから、その人の仕事の稼ぎを超えるようなお金の動きがあれば、疑いの目が向けられてしまうのです。


税務署から送られてくる「お尋ね」文書


税務署が贈与の有無を確認する手段のひとつに、「お尋ね」という文書を対象者に送付して確認する方法があります。
贈与の可能性のある対象者に送付し、回答後に返送してもらうという文書です。

お尋ねにはいくつか種類がありますが、主なものを以下でご紹介します。


1.不動産の購入


不動産の登記情報は法務局から税務署に提供されています。不動産の購入や名義変更のあった個人にお尋ねを送付し、贈与の有無を確認します。
このお尋ねのなかに、不動産購入時の資金調達方法を回答する項目があります。不動産の購入にあたり、親族から金銭の援助を受けていないかや、そもそもその不動産を譲り受けていないかなどを調べられるのです。

個人の収入や預貯金などの情報も確認できる税務署は、不動産購入などの大きなお金の動きがありその人の年収などに見合わないような買い物であれば、そのお金の出所に疑いの目を向けるのです。

ここで、申告すべき贈与の事実が確認されれば、適切に申告がおこなわれたかが調べられます。申告漏れが疑われる場合などは税務調査を行い、さらに詳しく調べられることになります。


2.相続の発生時


亡くなった人に一定以上の財産がある場合、「相続についてのお尋ね」という書面が送られてくる場合があります。
これは、亡くなった人の遺産を相続する相続人に送られてくるのですが、亡くなってすぐではなく、数カ月から数年経ってから送られてくる場合もあります。送られてきた時点で脱税が疑われているということではなく、申告が必要な財産の相続が発生していないか確認するためのものです。

死亡の情報を知った税務署は、その人の過去の確定申告状況や固定資産課税台帳、保険会社から提出された保険金支払調書などを資料に、その人の財産がどれくらいあるかを調べます。
このとき、必要に応じて預貯金の状況も調べることになるのですが、この一連の流れのなかで、生前にまとまったお金の引き出しがあり、その額が家族の口座への入金額と一致するなどした場合に贈与税の無申告がばれてしまうということがあるのです。


3.収入と見合わない買い物


税務署は個人の収入や預貯金額などを把握しています。
金融機関に保存されている取引情報は、税務署が本人の承諾を得ずとも確認することができます。そのため、高価なブランド品や貴金属、車などを購入が本人の経済状況とかけ離れている場合、その資金はどこから来たのか?を疑いお尋ねの文書が送付されることがあるのです。
加えて、金融機関の多くは過去10年分の取引情報を保存しているため、購入から数年経ってもばれなかった、と安心はできません。


法定調書


個人に対して金銭の支払いをした事業主は、その金額と内容を記した法定調書を税務署に届け出る義務があります。
給与の支払い、不動産の購入、保険金の支払いや貴金属などの買取での支払いなども含まれています。
特に注意したい例を見てみましょう。


1.買取店で貴金属を換金


貴金属などを売却した所得があった場合、その貴金属が本人の収入に見合わないと判断されると、「そもそもその貴金属の現物、購入資金の贈与があったのでは?」と疑われます。
貴金属の買取は、一回に支払った買取金額が税込200万円を超える場合に税務署へ支払調書が提出されます。


2.保険金の受け取り


保険金または解約返戻金を受け取った際も保険会社から税務署へ法定調書が提出されます。具体的には、100万円を超える保険金または解約返戻金を受け取った時、年間20万円以上の年金を受け取った時となります。

保険金の受け取りでは、契約者、被保険者、保険金の受取人が誰かによってかかる税金の種類が異なります。
たとえば被保険者が亡くなった場合の保険金受け取りについて見てみると、契約者、被保険者、受取人、これら3者がそれぞれ異なる際に受取人に贈与税がかかります。
具体的には、契約者が父親、被保険者が母親、受取人がその子供の契約において、母親が死亡し保険金が支払われた場合などが該当します。


3.海外への送金


100万円を超える金額を海外へ送金した場合も金融機関から法定調書が提出されます。
海外で暮らす子供に親が送金した場合も該当しますので注意が必要です。

ただし、扶養している家族の生活費としての送金は対象外です。しかしこの場合、生活費としてこの金額を使い切れば問題ありませんが、数十万円を貯金するなど使い残しがみられる場合は贈与税の対象となることがあります。


贈与税の申告が必要ない贈与


贈与があっても贈与税の申告が必要ない場合もあります。


  • 年間110万円以下の贈与
  • 扶養している家族への生活費や教育費にあたる贈与
  • 香典や祝い金など、社会通念上必要とされている贈与(一般的な金額の場合)


以上の場合は贈与税の申告は必要ありません。ただし、一般的な金額を超えた金品の贈与であったり、生活費として贈与しているものの、使い切らずに貯金をしている場合などは贈与税の対象となる場合があります。

また、たとえば毎年100万円の贈与を10年間受け取った場合、年間110万円以上の贈与でも「最初から1000万円を贈与する予定だったのでは?」として『定期贈与』とみなされる場合があります。
もちろん毎年一定額の連続した贈与であっても、本来は制度上認められているものですので贈与税もかかりませんし、申告の必要もありません。ただし現実として、税務署は疑わしいものは徹底して追及してきますから、定期贈与とみなされないためにも「贈与契約書」を都度作成するなどして対策を講じるほうが安心です。


贈与税の申告期限


贈与税の申告期限は、贈与のあった年の翌年3月15日までです。うっかり忘れて期限を過ぎてしまった!そんな場合も延滞税などのペナルティが課せられるので、早めの申告を行いましょう。


贈与税の申告漏れへのペナルティ


贈与税の無申告や過少申告などには、本来支払うべき税金に加えてペナルティの税金が加算されます。


無申告加算税


申告期限を過ぎた場合、本来支払うべき贈与税額の5%~20%の税金が加算されます。


過少申告加算税


贈与税の申告はしたものの税務調査などで過少申告が発覚した場合は、追納する税額の5%~15%の税金が加算されます


重加算税


無申告や過少申告が故意に行われた場合など、悪質性があると税務署が判断した場合は最も重い加算税が課されます。
悪質な過少申告の場合、追納する贈与税額の35%が加算され、悪質な無申告の場合は本来支払うべき税額の40%が加算されます。


まとめ


今回は、贈与の事実がばれるケースと申告漏れなどへのペナルティ、贈与税の申告が必要ないケースなどをご紹介しました。
もう一度ポイントを整理しましょう。


  • 税務署は個人の預貯金などお金の流れは把握できる
  • 税務署からのお尋ね文書で贈与がばれることがある
  • 個人に金銭の支払いをした事業主は、税務署へ法定調書の提出が義務付けられている
  • 年間110万円以下の贈与や扶養している家族への生活費、香典など、申告の必要がない贈与もある
  • 贈与税の申告期限は贈与の翌年3月15日まで
  • 申告漏れや過少申告は重いペナルティが課される


親族間の贈与の場合、申告の必要有無のついても迷うことが多いでしょう。また、数年後に突然届いた税務署からのお尋ねを必要以上に恐れる人も少なくありません。

自己判断で対応すると、誤った申告からペナルティを受けてしまう、なんてことにもなりかねません。こんな時は焦って回答する前に、ぜひ税のプロである税理士を頼ってみてください。
正しい申告方法はもちろん、支払う贈与税の減額など、あらゆるケースを知る税理士のアドバイスがきっと役に立つはずです。


この記事を書いた人

税理士法人T-FRONT

税理士法人T-FRONT

愛知県名古屋市、静岡県浜松市など東海地方に拠点を置く税理士法人です。
顧問税理士サービスをはじめ会社設立、創業融資、元国税庁職員による税務調査対応など、法人や個人事業主の税務・財務問題に幅広く対応。ともに伴走し、事業をともに成長させるパートナーとして日々活動しています。
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