税理士と顧問契約を結ぶ際、「この契約書には印紙が必要なのか?」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。
印紙税は契約の種類によって課税・非課税が分かれるため、正しく理解していないと、余計なコストが発生してしまいます。
特に、顧問契約が「委任契約」なのか、それとも「請負契約」に該当するのかは、印紙税の有無を判断する上で重要なポイントです。
また、契約書の文言によっては、税務当局の判断が変わることもあるため、作成時には慎重に確認する必要があります。
この記事では、税理士との顧問契約書に印紙が必要かどうか、その判断基準や注意点についてわかりやすく解説しています。
税理士との顧問契約書に印紙は必要か?顧問契約書の基本と印紙税の適用条件
顧問契約を締結する際、契約書に収入印紙を貼る必要があることをご存知でしょうか?
実は、契約の内容によっては印紙税の課税対象となるため、注意が必要なんです。
印紙税は契約の種類によって適用条件が異なり、不要な印紙税を支払わないためには正しい知識が不可欠です。
そこで、契約書の種類ごとに印紙税の適用条件を整理し、適切な対応方法について解説します。
顧問契約書の基本と印紙税の適用条件
- 契約の種類による違い:請負契約は課税対象、委任契約は非課税
- 税理士法人との契約:第7号文書に該当し、4,000円の印紙が必要
- 個人税理士との契約:委任契約のため、印紙税は不要
- 印紙税を節約する方法:電子契約を活用すれば非課税
- 他士業との違い:弁護士・社労士との契約は別の基準が適用されることも
そもそも顧問契約書とは、税理士や弁護士、社労士などの専門家と継続的な業務委託契約を結ぶ際に作成する書類のことです。
この契約書に収入印紙が必要かどうかは、契約の性質によって異なります。
これは、請負契約では業務の成果物に対して対価が支払われるため課税対象となり、委任契約では継続的な業務提供が主で成果物が明確でないため非課税とされるからです。
一般的に、請負契約であれば課税対象となり、契約金額に応じた印紙税を納める必要がありますが、委任契約であれば非課税文書とされ、印紙は不要です。
特に税理士法人と契約する場合、契約書が第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当し、4,000円の印紙税が必要になりますが、個人税理士との契約は、委任契約として扱われるため、印紙税はかかりません。
それでは、どういった契約にいくらの印紙がかかるのかを合わせて解説します。
契約内容によって異なる印紙の種類と違い
契約を締結する際、契約内容によって必要な印紙の種類や金額が異なります。
印紙税は契約の種類ごとに定められ、適用範囲を正しく理解することが重要です。
以下の表では、代表的な契約書とそれに対する印紙税額をまとめました。
契約の種類 | 印紙税額 | 課税対象となる条件 |
---|---|---|
請負契約書 | 200円~60,000円 | 契約金額に応じて変動(1万円未満は非課税) |
不動産売買契約書 | 500円~600,000円 | 契約金額に応じて変動 |
金銭消費貸借契約書 | 200円~600,000円 | 貸付金額が1万円以上 |
土地・建物の賃貸借契約書 | 200円 | 契約期間に関わらず一定 |
税理士顧問契約書(委任契約) | 非課税 | 税務相談やアドバイザリー業務が主な契約内容 |
税務書類作成契約書(請負契約) | 4,000円 | 成果物(申告書・決算書等)がある場合 |
契約書に貼る印紙の種類や金額は、契約の内容によって決まります。
例えば、請負契約書は成果物を納品する義務が発生するため、契約金額に応じた印紙税が必要で、一方で、委任契約は、成果物の納品義務がないため印紙税が非課税となります。
また、金銭消費貸借契約書(お金の貸し借り) では、貸付金額が1万円以上の場合に印紙税が発生します。
不動産関連の契約では、売買契約書の印紙税は契約金額に応じて大きく変動しますが、賃貸借契約書は一定額(200円)となっています。
税理士との契約における印紙税の適用は、契約内容によって異なります。
顧問契約(委任契約) は、税務相談や経営アドバイスが主な業務であり、成果物の納品がないため印紙税は非課税です。
一方、税務書類の作成を伴う契約(請負契約) では、決算書や申告書の作成が含まれるため、契約金額の記載の有無により印紙税が発生します。
また紙ベースの契約書と電子契約書では、印紙の取り扱いが異なります。どういった違いがあるかを次の章でまとめました。
紙の契約書と電子ベースの契約書の印紙の違い
企業が契約を交わす際、紙の契約書と電子契約書では印紙税の適用が異なります。
その時々に応じて適切な契約形態を選択することで、コスト削減や業務効率化が可能です。
次の表で、紙の契約書と電子契約書の違いを比較しました。
項目 | 紙の契約書 | 電子契約書 |
---|---|---|
印紙税の適用 | 必要(契約の種類による) | 不要 |
保存・管理 | 物理的な保管スペースが必要 | クラウドやサーバーにデジタル保存 |
利便性 | 手続きに時間がかかる | オンラインで即時締結可能 |
コスト | 印紙税+紙・印刷代がかかる | 印紙税不要でコスト削減 |
法的効力 | 原本が必要な場合がある | 電子署名で法的に有効 |
紙の契約書と電子契約書の最大の違いは、印紙税の適用有無です。
紙の契約書では、契約の種類に応じて印紙税が必要ですが、電子契約書は印紙税法基本通達第2条に基づき、課税文書に該当しないため、印紙が不要なためコスト削減につながります。
また、紙の契約書は物理的な保存が必要なため、管理コストが発生してしまいます。
紙の契約書は、商法や税法に基づき、法人では7年間の保存義務があります。重要書類として安全な保管が求められ、紛失や劣化のリスクも考慮する必要があります。
一方、電子契約書は電子帳簿保存法に準拠し、電子データとして保存が可能です。
法人では税法上7年間の保存が義務付けられており、以下の要件を満たせば紙の契約書と同等の法的効力を持ちます。
- 真正性の確保:改ざん防止のための電子署名やタイムスタンプが付与されていること。
- 可視性の確保:必要に応じて即時に閲覧・印刷が可能であること。
- 検索性の確保:契約内容を容易に検索できるシステムが導入されていること。
- 保存媒体の適切性:信頼性のあるクラウドやサーバーなど、長期保存に耐えうる環境で保管されていること。
- 運用ルールの整備:データの管理・削除・変更の履歴が明確に記録されていること。
タイムスタンプや電子署名を活用することで、真正性や非改ざん性を確保しつつ、検索や共有が容易になります。
電子署名法では、電子署名が本人によるものであることを証明し、法的に有効であることが規定されているので、電子契約書であってもきちんとルールを守って作成されていれば、法的に有効です。
結論として、印紙税のコスト削減や業務の迅速化を図りたい場合は電子契約をおすすめします。
しかし、業種や契約内容によっては紙の契約書が必要なケースもあるため、自社の状況に応じて使いやすい方を選びましょう。
さて、ここで気になるのが「電子契約書をPDFで送った場合」です。紙ベースの契約書ではありませんが、法的にはどういった取り扱いになるのでしょうか?
契約書をPDFで送った場合、収入印紙は必要なのか?
近年、多くの企業が契約書をPDFで送付する方法を採用しています。
しかし、印紙税の適用は契約書の送付方法によって変わるため、適切な理解が必要です。
以下では、PDF契約書の印紙税に関する注意点を整理しました。
PDF契約書に関する注意点
- 電子契約書は印紙税不要:電子署名や電子認証を利用した契約は、紙の契約書と異なり印紙税の対象外。
- 紙に印刷して署名し交付すると課税対象:PDFを印刷し、署名して現物を取引先に渡すと印紙税が発生する可能性。
- 注文請書は要注意:注文請書を紙で交付する場合、契約書としての性質を持ち、印紙税が必要になる場合がある。
- 電子契約とPDFの違い:電子契約はシステム上で管理されるため、PDFで送付するだけでは電子契約と認められない。
- 税務署の確認が重要:契約の形態によって異なるため、曖昧な場合は税務署に確認することが望ましい。
PDFで契約書を送る場合、印紙税の適用可否を慎重に判断することが重要です。
一般的に、電子契約システムを利用した場合は印紙税が不要ですが、PDFを印刷し、署名を加えた後に物理的に交付する場合は課税対象となります。
以下の表に、課税対象となるシチュエーションを整理しました。
契約の方法 | 課税対象 | 理由 |
---|---|---|
電子契約システムを利用 | 不要 | 紙の契約書が存在せず、印紙税法の対象外 |
PDFをメール送付 | 不要 | デジタルデータのみであり、契約書としての物理的実体がない |
PDFを印刷し署名、郵送 | 不要 | 紙の契約書として交付するため、印紙税の対象 |
PDFを印刷し、取引先へ手渡し | 必要 | 契約書を物理的に提供するため、印紙税が発生 |
注文請書を紙で交付 | 必要 | 契約書としての性質を持つため、印紙税が発生 |
注文請書を紙でやり取りする際には「契約の性質」を持つ場合があるため、課税対象になる可能性が高いので印紙の貼り忘れに注意してください。
またPDFをメールで送るだけでは、電子契約とはみなされず、印紙税の対象から外れる保証はありません。
電子契約の要件を満たしているか必ず確認し、適切な管理を行うことが求められます。
さて、この章では、税理士と顧問契約書を結ぶ際の印紙税の基本について解説させて頂きました。次の章では、印紙税のルールについてご紹介します。
印紙税の基本ルールを知ろう!印紙税が課税される契約書の種類
契約書にはさまざまな種類がありますが、そのすべてに印紙税が課税されるわけではありません。
契約の内容によって印紙税の対象となるかどうかが決まります。
どの契約書が印紙税の課税対象となるのかを表にまとめました。
契約書の種類 | 印紙税の適用 | 主な契約内容 |
---|---|---|
請負契約書 | 課税対象 | 建築工事・製造委託など |
売買契約書 | 課税対象 | 不動産売買・商品売買 |
金銭消費貸借契約書 | 課税対象 | 融資・ローン契約 |
賃貸借契約書 | 課税対象 | 不動産の賃貸借 |
委任契約書 | 非課税 | 税務顧問・弁護士契約 |
印紙税が課税される契約書の多くは、経済的な取引に関するものです。
例えば、建築工事の請負契約書や不動産の売買契約書、金銭消費貸借契約書などは、取引の明確な対価が発生し、契約内容が金銭の授受を伴うため印紙税の対象となります。
また、賃貸借契約書も、物件の貸し借りに関わる対価が発生するため、課税対象となることが一般的です。
一方で、弁護士や税理士との委任契約書のように「成果物を伴わない業務提供」が目的の契約は、印紙税法上の課税文書には該当しません。
これらの契約では、特定の対価の支払いよりも、継続的な業務提供やアドバイスが主な目的となるため、非課税となります。
同様に、労働契約書やコンサルティング契約書なども、一定の条件を満たせば非課税と判断されるケースが多いです。
印紙税の基本ルールとして「契約書に記載される取引内容が経済的な価値を持ち、明確な報酬や金銭のやり取りを伴う場合に課税対象となる」という傾向があります。
そのため契約を交わす際には、契約の種類だけでなく、具体的な契約条件や記載内容を慎重に確認するようにしましょう。
特に、契約書の文言によって課税・非課税が決まる場合もあります。
それでは、どういった文言を記載すると課税対象になってしまうのでしょうか?
契約書の文言によって変わる!課税・非課税の対象となってしまう言い回し
先にも軽く触れましたが、契約書に記載される文言によって、印紙税が課税されるかどうかが決まります。
特に契約の性質を明確に表す言葉は、課税対象の判断基準となります。
以下では、契約書の文言に関する注意点をまとめました。
注意すべき契約書の文言(課税・非課税の判断基準)
- 「報酬として支払う」 → 対価の授受を明記すると課税対象になる可能性が高まる
- 「成果物を納品する」 → 請負契約と見なされると課税される
- 「定期的な業務提供」 → 継続的な業務委託であれば非課税の可能性
- 「請負契約書」などのタイトル → タイトルだけでも課税対象と判断されることがある
- 「電子契約」か「紙の契約」か → 電子契約なら印紙税不要だが、内容によって異なる
契約書を作成する際は、どのような言葉を使用するかに細心の注意を払う必要があります。
特に、金銭の授受や成果物の納品を明記すると、請負契約と見なされ課税対象になる可能性が高くなります。
一方で、業務提供が主体の契約では、非課税と判断されるケースもあります。
例えば、「アドバイザリー業務の提供」といった文言を使用することで、課税を回避できる可能性があります。
また、契約書のタイトルにも注意が必要です。
「請負契約書」や「売買契約書」と明記されていると、契約内容が非課税であっても課税対象と判断される可能性があります。そのため、タイトルの工夫や文言の慎重な選択が重要です。
ただし、電子契約を利用することで、印紙税そのものを回避することも可能です。
電子契約であれば、紙の契約書とは異なり、印紙税が課税されることはありません。契約の形態に応じた適切な選択を行うことで、無駄な税負担を避けることができるのです。
この章では、契約書と印紙の基本ルールについて解説させて頂きました。次の章では「税理士と顧問契約を結ぶ際の印紙のルール」についてご説明します。
税理士との契約書の印紙税適用ルールとは?顧問契約書に印紙が必要かどうかを判断する基準
税理士と契約を結ぶ際、印紙税が必要かどうかは先にもご紹介したように契約の内容によって異なります。
契約の性質が「請負契約(成果物あり)」か「委任契約(成果物なし)」かによって判断されます。
なお電子契約の場合は、契約の性質に関わらず印紙税の対象外とされているため、請負契約であっても印紙は不要です。
以下では、税理士との契約に関する印紙税適用の基準を整理しました。
顧問契約書の印紙税適用ルール
- 請負契約か委任契約かの区別が重要:請負契約は課税対象、委任契約は非課税の可能性が高い。
- 契約の内容に成果物が含まれるかを確認:決算書や申告書作成が含まれると請負契約と見なされる可能性。
- 個人税理士と税理士法人の違い:税理士法人の場合、第7号文書(契約金額の記載有無による)に該当するケースがある。
- 電子契約を活用すれば印紙税は不要:電子契約は印紙税法の対象外のため、コスト削減が可能。
- 契約内容を適切に文書化することが重要:契約書の表現によって課税・非課税の判断が変わるため慎重に作成。
税理士と結ぶ顧問契約書に印紙税が必要かどうかは、契約の種類によって異なります。
契約が「請負契約」である場合、契約金額に応じた印紙税が発生します。
例えば、税務申告書や決算書の作成業務が含まれると、成果物が伴うため、請負契約として判断されることがあります。
一方で、「委任契約」の場合は継続的な業務提供が主な契約内容であれば、印紙税は不要となる可能性が高いです。
また、税理士法人との契約では、第7号文書に該当する可能性があり、契約書の金額の記載の有無によって印紙税の適用が変わる点に注意が必要です。
さらに、電子契約を活用すれば、契約書に印紙を貼る必要はなく、コスト削減につながります。
特に、税理士法人との契約では「第7号文書」に該当するかどうかが重要なポイントとなるので、この章で合わせて解説させて頂きます。
税理士法人との契約で知っておきたい「第7号文書」とは?
第7号文書とは、契約金額の記載があることで印紙税が課税される契約書を指します。
税理士法人との契約が第7号文書に該当するかどうかは、契約内容と金額の記載有無によって決まります。
単なる税務相談やアドバイザリー契約のみならば、印紙税は不要です。
しかし、決算書作成や税務書類の作成が含まれ、契約金額が明記されている場合、印紙税の対象となる可能性が高くなります。
このため、契約書を作成する際は、業務の範囲や契約金額の記載に注意を払う必要があります。
契約書に「税務相談のみ」と記載し、金額を明示しなければ、印紙税を回避できる可能性があります。
この章では、税理士と顧問契約書を結ぶ際の印紙のルールについて軽く解説しました。次の章では、税理士との契約において「請負契約」「委任契約」は、何が違うのかについてご説明します。
税理士との契約における「請負契約」と「委任契約」の違いは?
税理士との契約において、「請負契約」と「委任契約」には下記の表のような違いがあります。
それぞれの契約形態によって、契約内容や責任範囲、印紙税の適用が異なるため、適切に理解することが重要です。
項目 | 請負契約 | 委任契約 |
---|---|---|
目的 | 特定の成果物の完成 | 継続的な業務の提供 |
責任の範囲 | 成果物の完成義務を負う | 忠実義務のみを負う |
契約の終了 | 成果物の引き渡しで完了 | 双方の合意や解約申し入れで終了 |
印紙税の適用 | 課税対象(契約金額の記載がある場合) | 非課税 |
具体的な例 | 決算書や申告書の作成 | 税務相談や顧問業務 |
税理士との契約では、業務の内容によって「請負契約」と「委任契約」に分類されます。
「請負契約」は、特定の成果物を納品することが目的であり、契約金額が記載されることが多いため、印紙税の課税対象となる場合があります。
一方で、「委任契約」は、継続的な業務提供が主となり、特定の成果物を求めないため、原則として印紙税は不要です。
例えば、決算書の作成や税務申告書の作成を依頼する場合は、成果物があるため「請負契約」となり、印紙税が発生します。
これに対し、税務相談や日々の経理サポートを依頼する場合は「委任契約」となり、印紙税が不要です。
委任契約の具体的な例として、会社の決算業務を税理士に依頼する場合、税理士が決算書の作成を請け負い、最終的に成果物を納品する形になります。
これは請負契約となり、契約金額の記載があれば印紙税の対象となりますが、月次の税務相談や経理アドバイスを継続的に行う場合は、特定の成果物を納品するわけではないため、委任契約となり、印紙税は発生しません。
また、税理士がクライアントのために税務署へ提出する申告書類の作成代行を行う場合、成果物を提供するため請負契約と見なされる可能性が高いです。
なお、どちらの場合も電子契約書で適切な処理をすれば、印紙は不要になります。
このように税理士業務内容によって契約書が請負契約になるのか、委任契約なるのかが変わります。
まずは、どういった税理士業務が「請負契約」になるのかを見ていきましょう。
税理士業務における請負契約の場合の印紙税の取り扱い
請負契約に該当する具体的な業務例
- 決算書の作成:企業の会計データをもとに財務諸表を作成し、納品する業務
- 税務申告書の作成:法人税・消費税などの申告書を作成し、提出の準備を行う業務
- 経営分析レポートの作成:企業の財務状況を分析し、具体的なレポートを提供する業務
- 税務調査対応の報告書作成:税務調査の結果をまとめた正式な報告書を作成する業務
- 補助金・助成金申請書類の作成:税理士がクライアントに代わり、申請書類を作成する業務
税理士業務において、請負契約は「成果物(書類・レポートなど)の納品」が前提となる契約形態です。
契約金額が明記された契約書は「印紙税法上の第2号文書」に該当し、課税対象となる可能性があります。
特に「税務書類の作成を請け負う契約」は、契約金額に応じた印紙税が発生するため注意が必要です。
請負契約で印紙税の適用を正しく判断するためには、以下の点を意識しましょう。
- 契約内容の明確化:請負業務に該当するかどうかを明確にし、成果物の有無を確認する。
- 契約書の文言チェック:「作成」「納品」「成果物」などの表現がある場合、印紙税の対象になる可能性が高い。
- 課税対象の金額確認:契約金額が明記されている場合、印紙税の課税額を事前に把握する。
上記の様に成果物の納品が求められる業務は請負契約に該当し、印紙税の対象となる可能性が高いです。
税理士との契約における請負契約については以上になります。次は委任契約について見ていきましょう。
税理士業務における委任契約の場合の印紙税の取り扱い
委任契約は、税務相談やコンサルティングなどの業務が対象となり、原則として印紙税は不要です。
これは、成果物の納品がないため、印紙税法上の課税対象となる契約文書(第2号文書や第7号文書)に該当しないからです。
委任契約に該当する具体的な業務例
- 税務相談:クライアントの税務に関する質問に回答し、適切な助言を行う
- 会計チェック:企業が作成した帳簿や決算書を確認し、必要な指摘や改善提案をする
- 節税アドバイス:企業の財務状況を分析し、節税対策を助言する
- 経営コンサルティング:税務や財務の視点から経営戦略をアドバイスする
- 税務調査のサポート:税務調査に備え、対応方法について助言を行う(ただし、申告書の作成代行は請負契約に該当する可能性がある)
税理士業務における委任契約では、契約書を作成しても印紙税は発生しません。
これは、委任契約が「忠実義務を果たすこと」を目的とした契約であり、「成果物の納品義務」がないためです。
一方で、同じ契約であっても、実際に業務の一環として税務書類を作成し、納品する場合は、請負契約として扱われる可能性があるため注意しましょう。
税理士と委任契約を結ぶ際に印紙税を不要とするためには、契約書の記載内容を明確にし、「税務相談」「助言」「アドバイス」などの文言を中心に記載することが重要です。
この章では「請負契約」と「委任契約」の違いを解説しましたが、実は個人税理士と法人の税理士でも契約内容と印紙の取り扱いが異なります。
次の章では、この両者の違いについて詳しくお話します。
税理士法人と個人税理士の違い|契約書と印紙税の違いを解説
税理士に業務を依頼する際、税理士法人と個人税理士では契約形態や印紙税の扱いが異なる ことを理解しておく必要があります。
以下の表では、主要な違いを比較し、それぞれのメリットや適した契約内容についてまとめました。
項目 | 税理士法人 | 個人税理士 |
---|---|---|
契約の形態 | 法人と顧客間の契約 | 個人と顧客間の契約 |
印紙税の適用 | 税務書類作成契約は4,000円の印紙が必要 | 個人事業としての契約は原則非課税 |
契約の安定性 | 法人が継続的に業務を提供 | 個人税理士の都合で契約継続が変わる |
対応できる業務範囲 | 複数の税理士が対応可能 | 個人の専門分野に依存 |
税理士と契約を結ぶ際、税理士法人と個人税理士で上記の表のような違いが生じることを覚えておきましょう。
まず税理士法人は、組織的な対応が可能であり、複数の税理士が業務を分担するため、長期的に安定した契約が期待できます。
特に、法人としての信頼性が求められる大企業や、継続的な税務サポートを必要とする企業には適した選択肢です。
ただし、税務書類の作成などの請負契約に該当する場合、契約書には4,000円の印紙税が発生します。
一方で、個人税理士は柔軟な対応ができる点が大きなメリット です。
税理士のスタッフではなく、税理士本人と直接コミュニケーションを取れるため、依頼主側のニーズに合わせたサービスを受けやすいという利点があります。
また、委任契約が基本となるため、契約書に印紙税がかからないケースが多いです。
このように法人・個人の税理士によって利用するメリット・デメリットが異なることも合わせて覚えておきましょう。
税理士との顧問契約書に必要な印紙のまとめ
税理士との契約は、単に税務を任せるだけでなく、経営の安定や節税対策の強化につながる重要なステップ です。
本記事を通じて、印紙税の適用ルールや税理士法人と個人税理士の契約形態の違いについて解説させて頂きました。
今回の記事のまとめです。
- 契約内容によって印紙税の適用が異なります。請負契約は課税対象、委任契約は非課税が基本です。
- 税理士法人と個人税理士で契約形態が異なります。法人契約は組織的対応、個人契約は柔軟な対応が可能です。
- 印紙税のコストを抑える方法があります。電子契約を活用することで、印紙税の負担をゼロにできる。
- 契約内容の文言に注意が必要です。成果物の納品が明記されると請負契約と見なされ、印紙税が発生する可能性があります。
多くの企業経営者にとって、税務手続きは煩雑で負担が大きい業務です。
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