- ダブルワークを始めたけど、確定申告ってどうすればいい?
- 副業所得が20万円以下なら申告しなくていいって本当?
ダブルワーク(副業)を始めた方の多くが、このような税金の疑問や不安を抱えています。
確定申告が必要になる具体的な金額から、スマホでもできる簡単な申告手順などを解説していきます。
ダブルワークの基本|年末調整と確定申告の違い
ダブルワークをしている方がなぜ確定申告を意識する必要があるのか、基本から理解しましょう。
会社員なら年末調整で完結しますが、ダブルワークではそうはいかないケースがほとんどです。
年末調整で対応できない3つのこと
年末調整は、あくまで主たる勤務先がその会社の給与分だけを精算する手続きです。
そのため、国税庁の指針により以下の点はカバーできません。
- 2か所目以降の給与: 年末調整は1社でしか行えません。サブの勤務先の給与は対象外です。
- 給与以外の所得: フリーランス収入やネット販売の利益(事業所得・雑所得)は、年末調整では扱えません。
- 特定の控除: 医療費控除や住宅ローン控除(1年目)、ふるさと納税(ワンストップ特例を利用しない場合)などは、個人で確定申告をしないと適用できません。
このように、年末調整だけでは税金の計算が不完全になるため、ダブルワーカーは自身で確定申告を行い、すべての所得を合算して正確な税額を申告・納税する必要があるのです。
【いくらから?】ダブルワークで確定申告が必要・不要なケース
所得の金額や種類によって、申告義務の有無が決まります。
確定申告が「必要」になる主なパターン
以下のいずれかに当てはまる場合、国税庁の定めにより、原則として確定申告が必要です。
- 副業の所得が年間20万円を超える場合
本業の給与とは別に、副業で得た「所得(収入から経費を引いた額)」が年間20万円を超える場合は申告義務があります。
- 給与を2か所以上から受け取っている場合
年末調整されなかったサブの給与収入と、その他の副業所得の合計が20万円を超える場合です。
- 年間の給与収入の合計が2,000万円を超える場合
- 医療費控除などの還付申告をする場合
たとえ副業所得が20万円以下でも、医療費控除やふるさと納税などで税金の還付を受けるために確定申告をする際は、副業所得を含むすべての所得を申告しなければなりません。
確定申告が「不要」になる主なパターン
以下の条件を満たす場合、所得税の確定申告は原則として不要です。
- 主たる勤務先で年末調整を受けており、かつ給与所得・退職所得以外の副業の所得が年間20万円以下の場合。
【最重要】副業所得20万円以下でも「住民税の申告」は義務
所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別途必要です。
所得税の「20万円ルール」は、住民税には適用されません。
副業で1円でも所得があれば、お住まいの市区町村への住民税申告が法律上の義務となっています。
これを忘れると無申告となり、延滞金が課されるだけでなく、かえって会社に副業が知られる原因にもなりかねません。
ダブルワークの所得計算|3つの所得区分を理解しよう
確定申告の第一歩は、ご自身の収入がどの「所得」にあたるかを理解し、正しく計算することです。
ここでは、特に重要な3つの所得区分を解説します。
所得区分 | 概要と計算方法 | ダブルワークでの例 |
---|---|---|
給与所得 | パート・アルバイト先から得る給料・賞与。 【計算式】:収入金額 – 給与所得控除額 | アルバイトの掛け持ち |
事業所得 | 継続・反復して行うフリーランス活動や個人商店の利益。 【計算式】:総収入金額 – 必要経費 | フリーランスのデザイナー、コンサルタント |
雑所得 | パート・アルバイト先から得る給料・他に分類されない所得。 【計算式】:総収入金額 – 必要経費 | 原稿料、アフィリエイト収入、単発のネット販売 |
副業は「事業所得」と「雑所得」どっち?
その活動の規模や継続性、帳簿の有無などから総合的に判断されます。
国税庁は、帳簿書類をきちんと保存していれば、原則として事業所得に該当するという見解を示しており、適切に記帳することで事業所得と認められやすくなります。
事業所得なら、最大65万円の青色申告特別控除など税制上のメリットが大きくなります。
経費にできるもの・できないもの(家事按分)
副業の収入を得るために直接かかった費用は「必要経費」として収入から差し引けます。
自宅で仕事をしている場合、家賃や光熱費の一部を事業で使った割合(面積や時間など)に応じて合理的に按分し、経費計上できます。
これを「家事按分(かじあんぶん)」といいます。
初心者でも簡単!確定申告のやり方4ステップ
確定申告は、手順通りに進めれば誰でも完了できます。
ここでは、国が推奨するスマホやPCで完結できるe-Taxの利用を前提に解説します。
【Step 1】申告期間と必要書類を確認
申告期間は、所得があった年の翌年2月16日から3月15日までです。
期間内に申告できるよう、以下の書類を早めに準備しましょう。
- 給与所得の源泉徴収票(すべての勤務先分)
これがないと始まりません。必ず全社分を入手してください。
- 副業の収入と経費がわかるもの
売上や経費をまとめた帳簿、領収書など。
- 各種控除証明書
iDeCo、生命保険料、ふるさと納税の受領証など。
- マイナンバーカード
e-Taxでの申告に便利です。
- 還付金の振込先口座情報
【Step 2】国税庁「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成
国税庁の公式サイトにある「確定申告書等作成コーナー」を使いましょう。
画面の案内に従って、源泉徴収票の内容や副業の収入・経費、控除額などを入力していくだけで、税額が自動計算され、申告書が完成します。
【Step 3】e-Taxで申告書を提出
作成した申告データは、そのままe-Tax(電子申告)で提出できます。
税務署に行く必要がなく、24時間いつでも提出可能で非常に便利です。マイナンバーカードと対応スマホがあれば、数分で手続きは完了します。
【Step 4】納税または還付金の受け取り
申告の結果、追加で税金を納める場合は、期限(3月15日)までに納付します。
逆に税金を払い過ぎていた場合は、申告から数週間後に指定した口座へ還付金が振り込まれます。
ダブルワークで使える節税策
確定申告は、使える制度をフル活用して賢く節税するチャンスです。
青色申告(事業所得がある場合)
副業が事業所得なら、事前に税務署へ届出をすることで「青色申告」が選択でき、最大65万円の所得控除や赤字の繰越など、大きな節税メリットを享受できます。
活用したい所得控除
以下の控除は節税効果が高く、ダブルワーカーでも利用しやすい制度です。
- iDeCo(個人型確定拠出年金): 掛金の全額が所得から控除されます。
- ふるさと納税: 自己負担2,000円で応援したい自治体に寄付ができ、税金が控除されます(上限あり)。
- 医療費控除: 家族の分も合わせて年間の医療費が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合に適用できます。
ダブルワーカーと定額減税
令和6年分は1人あたり3万円の定額減税が実施されますが、ダブルワーカーは注意が必要です。
国税庁によると、減税措置は主たる給与の支払先でのみ行われるため、控除しきれなかった分や従たる給与に対応する分は、最終的に確定申告で精算する必要があります。
ダブルワークの社会保険はどうなる?
税金と並んで重要なのが社会保険(健康保険・厚生年金)です。2つ以上の勤務先で加入要件を満たす場合は、特別な手続きが必要になります。
2つ以上の会社で社会保険の加入要件(週20時間以上の労働、月額賃金8.8万円以上など)を満たす場合、日本年金機構へ「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出しなければなりません。
この手続きにより、全勤務先の給与を合算した額で保険料が決まり、各社の給与額に応じて按分されて天引きされることになります。
該当する場合は、速やかに勤務先や年金事務所に相談しましょう。
【Q&A】ダブルワークの確定申告でよくある質問
ダブルワーカーから寄せられることが多い質問にお答えします。
Q1. アルバイトの掛け持ちです。確定申告は必要ですか?
はい、2か所以上から給与をもらっている場合、年末調整されなかったアルバイト先の給与収入などが20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。
20万円以下でも、確定申告をすれば払い過ぎた税金(源泉徴収税)が戻ってくる可能性があります。
Q2. 副業所得が20万円以下なら、本当に何もしなくていいですか?
所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途義務付けられています。
お住まいの市区町村の窓口で住民税の申告を行ってください。
これを怠ると、後日、延滞金が加算された納付書が届いたり、会社の給与からまとめて徴収されたりする可能性があります。
Q3. 確定申告を忘れてしまいました。どうすればいいですか?
気づいた時点ですぐに「期限後申告」をしてください。
税務署から指摘される前に自主的に申告すれば、ペナルティ(無申告加算税)が軽減される場合があります。放置するのが最もリスクが高いです。
Q4. 副業のために開業届は出したほうがいいですか?
副業が「事業所得」に該当し、節税メリットの大きい「青色申告」を利用したい場合は、開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。
原稿料やアフィリエイト収入などの「雑所得」として申告する場合は、開業届は必須ではありません。
【まとめ】正しい知識で安心のダブルワークライフを
この記事では、ダブルワーク(副業)における確定申告のすべてを、具体的な手順から注意点まで網羅的に解説してきました。
複雑に思える税金の手続きも、ポイントさえ押さえれば、決して難しいものではありません。
安心してダブルワークに取り組むために、最も重要なポイントを振り返りましょう。
- 確定申告の要否を正しく判断する
副業の年間所得20万円が大きな目安です。
しかし、医療費控除などを受ける場合は20万円以下でも申告が必要になること、そして所得税の申告が不要でも住民税の申告は別途義務であることを忘れないでください。
- 所得と経費を正確に記録・計算する
ご自身の副業が「事業所得」なのか「雑所得」なのかを正しく理解し、収入と経費の記録を日頃からつけておくことが、適切な申告の第一歩です。
- 住民税の「普通徴収」を理解し、活用する
会社に副業を知られたくない場合、確定申告書で住民税を「自分で納付(普通徴収)」する選択が有効です。
ただし、副業がアルバイト(給与所得)の場合は、市区町村によっては適用されないため、必ず事前にお住まいの自治体へ確認しましょう。
- 便利なツールと節税制度を最大限に活用する
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Taxを使えば、申告作業は驚くほど効率化できます。
また、青色申告やiDeCo、ふるさと納税といった制度を賢く利用し、ご自身の税負担を適正にコントロールしましょう。
確定申告は、決して「面倒な義務」だけではありません。払い過ぎた税金を取り戻し、ご自身の資産を守るための「権利」でもあります。
まずは、お手元の源泉徴収票や副業の売上記録を整理することから始めてみてください。
そして、もし少しでも判断に迷うことや不安な点があれば、一人で悩まずに税務署の無料相談や税理士などの専門家へ相談しましょう。