会社設立の際に必ず発生する「登録免許税」は、創業者にとって避けては通れない費用です。
しかし、その金額は設立する会社形態や資本金によって大きく異なり、
- 一体いくらかかるのか
- 少しでも安くする方法はないのか
と不安に感じる方も少なくありません。
この記事では、会社設立にかかる登録免許税の基本的な仕組みから、株式会社・合同会社ごとの具体的な計算方法、支払い手続き、そして費用を半額にまで軽減できる「特定創業支援等事業」に解説します。
登録免許税に関する疑問が解決し、コストを抑えて会社設立の準備を進められるようになります。
会社設立の登録免許税とは?
まず、会社設立における登録免許税の基本的な役割と法的根拠を理解しておきましょう。
登録免許税とは、会社の設立登記を法務局に申請する際に国へ納める税金のことです。
この登記手続きによって、会社は法的にその存在を認められ、社会的な信用を得ることができます。
登録免許税は、この信頼性の高い登記制度を維持・運営するための行政コストを、制度を利用する起業家が負担するという考え方に基づいています。
単なる手数料ではなく、円滑な経済活動の基盤を支えるための重要な国税と位置づけられています。
【会社形態別】登録免許税の計算方法と最低税額
会社設立の登録免許税は、選択する会社形態(株式会社、合同会社など)と資本金の額によって決まります。
特に創業者に選ばれやすい株式会社と合同会社では、最低税額が異なるため注意が必要です。
基本的な計算式は「資本金の額 × 0.7%(1,000分の7)」ですが、この計算結果が最低税額に満たない場合は、最低税額が適用されます。
株式会社(KK)の場合
- 税率: 資本金の額 × 0.7%
- 最低税額: 15万円
株式会社を設立する場合、資本金の額が約2,143万円未満であれば、登録免許税は一律で最低税額の15万円となります。
合同会社(GK)の場合
- 税率: 資本金の額 × 0.7%
- 最低税額: 6万円
法務省の公式サイトでも、合同会社設立の登録免許税は資本金の額に1000分の7を乗じた金額であり、その額が6万円に満たない場合は6万円であると明記されています。
資本金の額が約857万円未満の場合は、一律で6万円となります。
会社形態別の比較表
会社形態 | 税額計算方法 | 最低税額 |
---|---|---|
株式会社 | 資本金額 × 0.7% | 15万円 |
合同会社 | 資本金額 × 0.7% | 6万円 |
合名会社 | 1件につき固定 | 6万円 |
合資会社 | 1件につき固定 | 6万円 |
登録免許税が半額に!「特定創業支援等事業」の活用で会社設立費用を抑える
会社設立の初期費用を大幅に削減したい創業者にとって、最も有効な手段が「特定創業支援等事業」の活用です。
制度の概要とメリット
この制度は、市区町村が産業競争力強化法に基づき実施する創業支援プログラム(セミナー受講や個別相談など)を修了した創業者を対象に、会社設立時の登録免許税を半分に軽減するものです。
- 株式会社: 最低税額 15万円 → 7万5,000円
- 合同会社: 最低税額 6万円 → 3万円
中小企業庁のウェブサイトでも、この制度により株式会社・合同会社の登録免許税率が資本金の0.7%から0.35%に軽減されると案内されています。
利用する際の重要ポイント
- 対象者: これから創業する個人、または創業後5年を経過していない個人が対象です。
- 手続き: 創業予定地の市区町村が指定する支援を受け、「支援を受けたことの証明書」の交付を受ける必要があります。
- 注意点: この証明書は、必ず会社設立の登記申請を行う前に取得する必要があります。また、原則として証明書を交付した市区町村内で会社を設立する場合に適用されます。
会社設立時の登録免許税の納付手続き
登録免許税の納付は、登記申請と同時に行う必要があり、手続きを間違えると登記が遅れる原因になります。
納付のタイミング
- 書面申請の場合: 法務局の窓口に登記申請書を提出するのと同時に納付します。
- オンライン申請の場合: 登記機関から通知される納付情報に基づき、インターネットバンキング等で納付します。
主な納付方法
国税庁によると、登録免許税の納付方法には主に以下の方法があります。
- 現金で納付: 金融機関(日本銀行歳入代理店)や税務署の窓口で現金で納付し、領収証書を申請書に貼り付けて提出します。
- 収入印紙で納付: 税額が3万円以下の場合などには、収入印紙を申請書に直接貼付して納付することができます。
- 電子納付(キャッシュレス納付): オンライン申請の場合、Pay-easy(ペイジー)を利用してインターネットバンキングやATMから納付できます。
登録免許税に関するQ&A
会社設立と登録免許税に関する実務上のよくある質問にお答えします。
Q1. 支払った登録免許税は、経費になりますか?
はい、経費として計上できます。
会計上、登録免許税は会社の設立のために支出した費用として「創立費」に含まれます。
創立費は繰延資産として計上し、その後、税法のルール(任意償却)に則って経費化することが可能です。
Q2. 会社設立の後も登録免許税はかかりますか?
はい、かかります。
会社設立後も、本店を移転したり、役員を変更したり、資本金を増やしたり(株式交付費)する際には、その都度、変更登記のための登録免許税が必要となります。
Q3. 専門家に依頼するメリットはありますか?
はい、大きなメリットがあります。会社設立の手続きは複雑で、専門知識が求められる場面が多いためです。
- 司法書士: 登記の専門家です。会社設立登記の申請代理は司法書士の独占業務であり、手続きを正確かつ迅速に進めてくれます。
- 税理士: 税務の専門家です。資本金の額の決定や、設立後の税務申告、資金繰りの相談など、経営面で長期的なサポートを提供します。
専門家に依頼することで、手続きのミスを防ぎ、創業者は最も重要な事業の準備に集中できるという価値があります。
【まとめ】登録免許税を理解して、会社設立を
本記事で解説した通り、会社設立における登録免許税は避けて通れない重要な国税です。
最後に、要点を改めて確認しましょう。
- 必須の設立費用: 登録免許税は、会社を法的に登記するために必ず納付が必要な国税です。
- 税額の基本: 税額は「資本金の額 × 0.7%」で計算され、株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円という最低税額が定められています。
- 最大の節約ポイント: 自治体が実施する「特定創業支援等事業」の証明書を取得すれば、登録免許税を半額に軽減できます。 これは会社設立費用を抑える上で極めて有効な手段です。
- 専門家の活用: 正確な手続きと利用可能な制度の活用のためには、登記の専門家である司法書士や、税務・財務の専門家である税理士への相談が不可欠です。
これらのポイントを正確に理解し、活用できる制度は積極的に利用することが、会社設立の初期費用を抑える鍵となります。