株式会社と合同会社の違いとは?会社設立時に知っておきたい特徴や違い、メリットデメリットを解説。


会社(法人)を設立しようと考えたときには、いくつかある形態の中から選択することになります。

現在日本で設立できる会社形態は「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の四つがありますが、この内合資会社と合名会社はやや特殊でマイナーな形態で、実際に設立される割合も非常に少なくなっています。

ほとんどの場合、株式会社か合同会社のどちらかを選択するのが一般的です。

では、合同会社と株式会社の違いとは何でしょうか?

今回は合同会社と株式会社の違いと、そのメリットデメリットについて説明していきます。


株式会社とは


株式会社とは、その名のとおり株式を発行し集めた資金で運営する会社形態のことです。

会社は資金を出資してくれた人に対して株式を発行し、株式を所有する人は株主として配当を受け取ったり、会社の経営に参加するなど様々な権利を有します。

ひとくちに株式会社と言っても、個人事業主からのいわゆる“法人成り”でオーナー社長が100%株を保有する一人会社から社員数千人の大企業まで存在しますが、日本の会社形態の内約7割を占めるもっとも一般的な会社形態となっています。


合同会社とは


合同会社とは、出資者が会社の所有者となり実際の企業経営を行う会社形態です。

株式会社の場合、出資者(株主)と経営者(取締役などの役員)は必ずしも一致しませんが、合同会社では所有と経営が一致します。

特に一人親方の小規模企業の場合、個人事業主がそのまま法人形態になったようなイメージを持つとわかりやすいかもしれません。

先に挙げたように、創業者1名の会社や少人数で出資する会社の場合は合同会社を選択することも近年増えてきています。


株式会社と合同会社の違いとメリット・デメリット


株式会社と合同会社の概要については上で説明したとおりですが、具体的な違いはどこにあるのでしょうか。

このふたつの会社形態は同じ法人でありながらも非常に多くの違いがあり、それぞれにメリットとデメリットも様々あります。

もう少し詳しく、ふたつの会社形態の違いを見ていきましょう。


設立費用


まずもっともわかりやすく、かつ設立にあたって気になる点でもある「設立費用」ですが、株式会社と合同会社では大きく異なります。

株式会社の場合、設立費用は約22万円~30万円ほどかかります。

詳細な金額は自分で設立するか、業者などに代行依頼をするか、資本金額はいくらか、などによっても変動しますが、法律に基づき必ず必要となってくる費用だけでみると、おおむね30万円弱と考えておけば良いでしょう。


一方の合同会社では、登録免許税が6万円、定款の印紙代が4万円と10万円ほどで収まります。

また定款を電子定款で作成・申請する場合は印紙代もかかりませんから最安の場合6万円で済みますが、電子定款の作成には専用のシステムが必要になるため、実際には業者など専門家に依頼することになり結局は費用が発生するケースが多いです。

いずれにせよ、株式会社と合同会社では一般的な設立費用に約2倍ほどの大きな開きがあります。


所有と経営の関係性


また、株式会社と合同会社の大きな違いが経営と出資の関係です。

先に概要でも少し触れましたが、株式会社の場合は出資者である株主と会社を経営する役員が必ずしも一致しません。

特に上場企業などでは、個人の株主もいれば大口の株主がいたり、グループ関係にありつつ持ち株会社と傘下の会社が分かれていたり…と、出資者は多岐に渡り関係性も複雑になっていることが多いでしょう。これを所有と経営の分離と言います。

対して合同会社では、出資者自身が業務執行権限を有し、実際に会社の業務を行います。これを所有と経営の一致と言います。


意思決定プロセス


今見てきたように、株式会社と合同会社では関わる人の人数や種類が異なるため、意思決定プロセスも異なります。

株主は持ち株数に応じて絵治安された議案に対して賛成や反対をする「議決権」を行使することが可能です。実際の経営者が株主であれば特に問題はないのですが、前述のとおり株式会社では実際の企業運営と出資者が異なることも多いため、一番権利を持っているオーナー的存在が実際の経営に携わっていない、という場合もあります。

そのため、会社の経営上重要な意思決定においては株主総会を開きお伺いを立てる必要があります。


一方の合同会社では出資者=経営者となるので、意思決定のプロセスがシンプルでスムーズです。

特にオーナーしかいない一人会社の場合、実質的には個人事業主と大差ない意思決定が可能になります。

ただし、合同会社でも出資者が複数いる場合は注意が必要です。特に定款に定めがない場合、出資者は全員代表社員となります。出資比率にも関係なく一人ひとりが意思決定を行う権利を持つので、社員同士が衝突し思わぬトラブルを招いたり、会社の経営に大きな影響を与える可能性もあります。


社会的信用度


経営を行う上ではその社会的信用度も重要になってきますが、一般的に株式会社と合同会社では信用度が変わると言われています。

合同会社は会社法が施行された2006年5月に新しく設けられた形態で、まだまだ一般的な認知度は高くありません。

株式会社であれば説明不要で特に疑問を挟む余地もありませんが、合同会社の場合は「なんか聞いたことはあるけど、どんな会社なの?」と、疑問を持たれたり、取引や採用において敬遠される可能性も全くないとは言えません。


資金調達できる方法・種類


合同会社と株式会社では資金調達の方法も異なります。

まず株式会社であれば、株式を発行し資金を調達することが可能です。特に上場企業ともなれば、より広く、大きな規模での資金調達も可能になります。

一方の合同会社では株式の発行はできません。合同会社でも社債の発行などは行えますが、社債は株式とは異なり帳簿上「負債」であり、返還義務があります。株式による資金調達は「資本金」であり、返済は不要です。ここが大きな違いと言えるでしょう。


また、その他の資金調達としては金融機関などからの借り入れもありますが、借り入れにあたっても株式会社と合同会社ではやや違いが出ます。

さきほどの社会的信用度とも関連してきますが、株式会社と合同会社を比較すると株式会社のほうが一般的な信用度は高くなる傾向があります。

もちろん、金融機関は実際の事業や経営状況によって融資できるかどうかを判断しますから、株式会社だからといって審査が甘くなることもなければ合同会社だからと言って審査基準が変わるということはありません。

とはいえ、融資の審査や判断をするのは金融機関に勤めている「人」ですから、多少なりとも印象によって左右される面もないとは限りません。


決算公告の義務


他に、株式会社と合同会社との違いとしては、決算公告の義務があります。

株式会社では毎年決算期ごとに「決算の広告(官報などで会社の情報を公開すること)」を行わなければいけないと法律に定められています。

通常であれば国発行する官報に決算内容を掲載しますが、この際に最低でも約7万5000円の掲載費用が必要になります。

一方の合同会社では決算公告の義務はありません。


役員任期


株式会社の役員には人気があり、最長で10年と定められています。

たとえ代表取締役1名の会社だとしても、同じ人を役員として再任する際に登記を行う必要があり、登録免許税という費用がかかります。

合同会社では代表社員などに任期はなく(定款で定めることは可能)、再任や変更で登記申請を行う必要もないため費用や手間がかかりません。


合同会社と株式会社どちらを選択すべき?


ここまで見てきたように、合同会社と株式会社は同じ法人という形態でありながらもその性質は大きく異なります。

では結局のところ、これから会社を設立する場合どちらを選択すれば良いのでしょうか?

人それぞれに状況は違いますから一概には言えないのですが…身軽さを取りたいのであれば「合同会社」、将来的に事業規模の拡大を見据えているなら「株式会社」というのがひとつの解になるのではないでしょうか。


合同会社のメリットは何といってもその身軽さ、手軽さです。

記事中で解説してきたように、設立から運営におけるスピード感や手間、諸々の時間的・金銭的なコストが株式会社と比較すると圧倒的に低く済みます。

そのため、特に個人事業主から法人への事業形態変更を考えているものの、実質的には個人事業時と中身が変わらない、一人会社のような場合には合同会社を選択するメリットが大きいでしょう。

ただし、株式会社と比較すると対外的な信用度はどうしても低くなりがちなので、そこがネックになってくる可能性があることには注意が必要です。


一方、将来的な規模の拡大まで考えている場合は、株式会社のほうが有利に働く部分もあるでしょう。

たとえ上場まではいかないにしても、一般的な信用度や知名度は株式会社に勝るものはありません。

どちらの形態にするか悩んでいて、設立や運営、決算などの事務の手間などが大きなデメリットにならないのであれば、あえて合同会社を選ぶ必要もなく、株式会社にしておくほうが無難かもしれません。


合同会社から株式会社への変更はできる?


ちなみに、最初に合同会社として設立したけど株式会社に組織変更したい、なんてことあるかもしれません。

当初は自分一人で小規模に運営していたものの、予想外に事業が大きくなり本格的な事業運営にあたって株式会社のほうがメリットが大きい…などと判断するケースもあるでしょう。


結論、合同会社から株式会社への組織変更は可能です。

ただし組織変更計画書を作成すること、債権者保護手続きが必要なこと、変更にあたって費用が約10万円ほどかかってくること、登記の変更申請が必要なこと、債権者保護の観点から40日ほど日数がかかること…など、時間も手間も費用もかかることは留意してください。

費用だけで見ると最初から株式会社を設立するよりも安いですが、当初の合同会社の設立費用も合わせて考えると大きな差はありませんし、変更にかかる手間など実質的な負担は大きいです。


また反対に株式会社から合同会社への変更も可能ですが、こちらも概ね似たような手続きが必要で、費用も同様にかかってきます。

そのため、「最初はなんとなく決めて、あとで必要があれば変更すればいいや」と安易に決めるのはやめておいたほうが良いでしょう。


まとめ


今回は合同会社と株式会社の違いとそろぞれのメリット、デメリットを詳しく解説しました。

要点をまとめておきます。


  • 合同会社と株式会社は性質が大きく異なる
  • どちらが適しているか?は事業や人それぞれの状況で異なる
  • 後からの組織変更は手間や時間が大きい


繰り返し説明してきたように、合同会社と株式会社では同じ法人形態でも性質が全くといっていいほど違うため、どちらにもメリット・デメリットが存在します。

一般的な傾向として、一人親方・小規模な会社の場合は合同会社のメリットが大きく、スケールしたい場合は株式会社のメリットが大きいと言えますが、メリットデメリットは人それぞれ、また事業によっても変わってくるので、一概にどちらが良いと言えません。

後から組織形態の変更も可能ですが、あまり気軽に変更できるものではないため、基本的に変更することはないものとして熟慮して決めるのがベターです。


どうしても決められない場合は、身近に先輩経営者がいれば話を聞いたり相談してみるのも良いでしょう。

また税理士などは税制面や経営上の違いからアドバイスしてくれますから、悩んだら専門家に意見を求めるのもおすすめです。

あとから「こうしておけばよかった…」と事業経営の大事な一歩目で躓かないように、しっかり検討して最適な選択をしてください。


この記事を書いた人

税理士法人T-FRONT

税理士法人T-FRONT

愛知県名古屋市、静岡県浜松市など東海地方に拠点を置く税理士法人です。
顧問税理士サービスをはじめ会社設立、創業融資、元国税庁職員による税務調査対応など、法人や個人事業主の税務・財務問題に幅広く対応。ともに伴走し、事業をともに成長させるパートナーとして日々活動しています。
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