法人登記のオンライン申請は、法務局に出向く手間なく、インターネットで手続きを完結できる便利なシステムです。
この記事では、会社設立をオンラインで行う際の具体的な手順、必要な費用、メリット・デメリット、さらには注意点や登記完了後の手続きまで分かりやすく解説します。
オンラインでの会社設立をスムーズに進めるための方法をお伝えしますので、是非活用してみてください。
会社設立も可能!法人登記オンライン申請とは?
法人登記のオンライン申請は、会社設立をはじめとする様々な手続きをインターネット経由で行えるシステムです。
まずは、その基本的な定義と目的、関連サービスについて理解を深めましょう。
オンライン法人登記の基本~「登記ねっと」と「法人設立ワンストップサービス」~
オンラインでの会社設立・法人登記を支える主要なシステムとして、
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」(通称「登記ねっと」)とデジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」があります。
それぞれの特徴と違いを見ていきましょう。
「登記・供託オンライン申請システム」(登記ねっと)
法務省が提供する「登記ねっと」は、法人登記を含む各種登記・供託手続きをオンラインで行うための基幹システムです。
2011年に運用が開始され、会社設立登記をはじめ、役員変更や本店移転といった商業・法人登記事項の変更申請、登記事項証明書等の交付請求といった一連の手続きをオンライン上で完結させることが可能です。
このシステムの登場により、申請者は法務局の窓口へ出向く時間的・地理的制約から解放され、より柔軟な申請が可能となりました。
デジタル庁「法人設立ワンストップサービス」
近年、法人設立手続きの更なる簡素化を目指し、デジタル庁が「法人設立ワンストップサービス」の提供を開始しました。
このサービスは、法務局への法人設立登記申請だけでなく、株式会社設立時の定款認証、税務署への法人設立届出や源泉所得税の納期の特例承認申請、年金事務所への社会保険関連手続きなど、法人設立に伴う複数の行政手続きを一つの窓口(オンラインポータル)でまとめて行えるようにすることを目的としています。
「登記ねっと」が法務局への登記申請に特化しているのに対し、「法人設立ワンストップサービス」は、特に新設法人にとって、設立初期に必要な複数の手続きを横断的にサポートする点で異なります。
オンライン申請できる登記の種類
「登記ねっと」を通じてオンライン申請可能な商業・法人登記の種類は、「登記の申請(登記の嘱託を含む。)」と広範に定義されています。
これには、会社の設立登記はもちろんのこと、役員の変更、商号変更、目的変更、本店移転、増資・減資、解散・清算結了など、商業登記法及び関連法令で定められた多くの登記手続きが含まれます。
ただし、全ての関連手続きがオンライン申請の対象となるわけではありません。
例えば、行政不服審査法に基づく審査請求はオンライン申請の対象外とされています。
一方で、重要な進展として、2021年2月の商業登記規則改正により、従来は書面での提出が原則であった印鑑の提出(印鑑届書の提出)や商業登記電子証明書の発行請求も、オンラインによる登記申請と「同時」に行う場合に限り、オンラインでの手続きが可能となりました。
オンライン申請を支える法的根拠
法人登記のオンライン申請は、確固たる法的根拠に基づいて運用されています。
- 商業登記法
法人登記制度の根幹をなす法律であり、オンライン申請に関する規定も含まれています。
例えば、同法第19条の2は、登記申請書に添付すべき電磁的記録について定めており、電子的な添付書類の提出を可能にする基礎となっています。
- 商業登記規則
商業登記法を施行するための細則を定めた法務省令であり、オンライン申請の具体的な手続きについて詳細に規定しています。
特に近年の改正は、オンライン申請の利便性を大きく向上させています。
- 電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)
電子署名の法的効力と、電子証明書を発行する認証業務の枠組みを定める法律です。
同法第3条は、本人が適切な管理のもとで行った電子署名が付された電磁的記録は、真正に成立したものと推定すると規定しており、これがオンラインで提出される申請書や添付書類の法的信頼性の根拠となります。
会社設立をオンラインで行うための事前準備
オンラインで会社設立手続きをスムーズに進めるには、事前の準備が不可欠です。
必要なパソコン環境、マイナンバーカード、そしてオンライン申請の鍵となる電子証明書について詳しく解説します。
パソコン・インターネット環境の整備
「登記・供託オンライン申請システム」を利用するためには、法務省が指定する一定の技術的要件を満たす機器と環境が必要です。
特に「申請用総合ソフト」を使用する場合、以下の環境が推奨されています。
「申請用総合ソフト」はWindows OS専用であるという点は、特に注意が必要です。
Mac OSユーザーなどがこのソフトを利用する場合は、別途Windows環境を用意する必要があります。
要素 | 推奨要件 |
---|---|
CPU | 800MHz以上 |
メモリ | 1GB以上 |
ディスプレイ解像度 | 1024×768以上 |
ハードディスク空き容量 | 300MB以上(必須) |
OS | Windows 10, Windows 11 |
ブラウザ | Microsoft Edge, Google Chrome |
フレームワーク | .NET Framework 4.8 |
PDF閲覧ソフト | Adobe Acrobat Reader DC |
その他 | インターネット接続環境、信頼済みサイトへの登録が必要な場合あり |
マイナンバーカードとICカードリーダーの用意
オンライン申請手続き、特に個人の認証が求められる場面や、「法人設立ワンストップサービス」を利用する際には、代表者のマイナンバーカードが必須となります。
マイナンバーカードには、公的個人認証サービスに基づく電子証明書が格納されており、これがオンラインでの本人確認手段として利用されます。
パソコンでマイナンバーカードを利用するためには、ICカードリーダー/ライターが必要となります。NFC(近距離無線通信)に対応したスマートフォンであれば、マイナポータルアプリと連携することでICカードリーダーの代替として機能する場合もあります。
オンライン会社設立に必須!電子証明書の種類と取得方法
オンラインでの会社設立申請では、電子署名のために電子証明書が必要です。
商業登記電子証明書を中心に、利用可能な証明書の種類、取得方法、手数料(令和7年4月改定情報を含む)を解説します。
商業登記電子証明書の概要
商業登記電子証明書は、法務局(電子認証登記所)が発行する、会社とその代表者をオンラインで認証するための電子的な証明書です。
オンラインで法人登記の申請を行う際、申請書や添付書面に電子署名を付与するために不可欠であり、これによって申請の真正性とデータの完全性が担保されます。
利用可能な電子証明書の種類
「登記・供託オンライン申請システム」では、手続きの種類や署名者の立場に応じて、様々な種類の電子証明書が利用可能です。
※スマートフォンの時は横スクロールできます
証明書の種類 | 主な発行機関 | 主な利用場面 |
---|---|---|
商業登記電子証明書 | 電子認証登記所(法務局) | 会社代表者としての申請、添付書面への署名 |
公的個人認証サービス電子証明書 | 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)経由で市区町村が発行(マイナンバーカードに格納) | 個人としての申請(例:発起人)、添付書面への署名(例:取締役就任承諾書) |
特定認証業務電子証明書 (例:セコムパスポート for G-ID, AOSignサービスG2, TDB電子認証サービスTypeAなど) | 各認定民間認証局(セコムトラストシステムズ株式会社、日本電子認証株式会社、株式会社帝国データバンクなど) | 委任による代理人としての申請、添付書面への署名 |
電子証明書の取得方法と手数料
- 取得方法
- 商業登記電子証明書: 管轄の法務局に申請します。2021年2月15日以降はオンラインでの請求も可能となり、その際は既存の電子証明書(マイナンバーカードの電子証明書等)を利用して請求手続きを行うことができます。
- 公的個人認証サービス電子証明書: マイナンバーカードの交付または更新時に、市区町村の窓口で取得します。
- 特定認証業務電子証明書: 各民間認証局のウェブサイト等を通じて直接申し込みます。
- 手数料
- 商業登記電子証明書: 管轄の法務局に申請します。2021年2月15日以降はオンラインでの請求も可能となり、その際は既存の電子証明書(マイナンバーカードの電子証明書等)を利用して請求手続きを行うことができます。
証明期間 | 手数料(税込 |
---|---|
1か月 | ¥500 |
3か月 | ¥1,100 |
6か月 | ¥2,000 |
9か月 | ¥2,900 |
12か月 | ¥3,800 |
15か月 | ¥4,700 |
18か月 | ¥5,600 |
21か月 | ¥6,500 |
24か月 | ¥7,400 |
27か月 | ¥8,300 |
- 公的個人認証サービス電子証明書: 通常、マイナンバーカードの交付・更新に伴う発行は無料ですが、更新手続き等で少額の手数料がかかる場合があります。
- 特定認証業務電子証明書: 各民間認証局が独自に料金を設定しており、費用は大きく異なります。
申請用ソフトウェアの導入と申請者情報登録
オンライン申請には専用ソフトウェアの利用や、事前の申請者情報登録が必要です。
「申請用総合ソフト」のインストール
「申請用総合ソフト」は、法務省が無償で提供している、オンライン登記申請書を作成・送信するための専用アプリケーションです。
このソフトを利用することで、申請者はテンプレートを用いて申請書を作成し、添付書面を追加、電子署名を付与し、登記・供託オンライン申請システムへデータを送信することができます。
インストールは、「登記ねっと」のウェブサイトからソフトウェアをダウンロードし、PCに導入します。
「かんたん証明書請求」との違い
「登記・供託オンライン申請システム」には、「申請用総合ソフト」を利用する方法の他に、「かんたん証明書請求」というウェブブラウザベースの簡易な手続き方法も用意されています。
これは主に、登記事項証明書や印鑑証明書といった各種証明書の交付請求に特化したサービスであり、専用ソフトのインストールは不要です。
申請者情報登録
「申請用総合ソフト」または「かんたん証明書請求」のいずれを利用するにしても、事前に「登記・供託オンライン申請システム」への申請者情報登録が必須です。
この登録は、原則として初回のみ行えばよく、一度登録した情報は両方のサービスで共通して利用できます。
登録手続きは、システムのトップページにある「申請者情報登録」メニューから行います。
オンライン会社設立の具体的な申請手順と流れ
実際にオンラインで会社設立(法人登記)を行う際の、申請準備から登記完了までの具体的なステップを解説します。
申請書の作成方法から、添付書類の電子化、オンラインでの印鑑届出についても触れていきます。
オンライン申請プロセスの全体像
「登記・供託オンライン申請システム」を利用した法人登記のオンライン申請は、概ね以下の流れで進められます。
- 事前準備
システム要件の確認、申請用ソフトウェアのインストール、申請者情報の登録、そして必要な電子証明書の取得を完了させます。
- 申請書情報の作成
「申請用総合ソフト」を用いて、登記の種類に応じた申請書様式を選択し、必要な情報を入力して申請書データを作成します。
- 添付書面情報の準備と添付
定款、議事録、就任承諾書など、登記申請に必要な添付書面を電子データ化(PDF、BMP、XML形式)し、申請書情報に添付します。
- 電子署名の付与
作成した申請書情報(申請者または代理人)および各添付書面(その作成者)に、有効な電子証明書を用いて電子署名を行います。
- 申請データの送信
電子署名が付与された申請書情報と添付書面情報を一括して、登記・供託オンライン申請システムを通じて管轄の法務局へ送信します。
- 到達・受付の確認
システムから送信される「到達のお知らせ」(データ受信確認)および「受付のお知らせ」(法務局による正式受理確認)を取得し、確認します。
- 登録免許税・登記手数料の納付
通知された納付情報に基づき、登録免許税および必要な手数料を電子納付等の方法で支払います。
- (必要に応じて)補正・取下げへの対応
法務局から申請内容の不備等について補正指示があった場合は、指定された期間内に補正手続きを行います。
また、申請者の都合により申請を取り下げることも可能です。
具体的な操作方法:申請書作成から添付書類まで
申請用総合ソフトの操作、添付書類の準備、そしてオンラインでの印鑑届出について具体的に見ていきます。
申請書情報の作成と入力
「申請用総合ソフト」を起動後、まず「申請書様式一覧」から目的の登記に応じた適切な申請書様式(例:株式会社設立登記申請書)を選択します。
選択した様式に従い、商号、本店所在地、会社の目的、資本金の額、役員の氏名・住所など、登記に必要な情報を正確に入力していきます。
特に「登記すべき事項」欄の入力は、法的な正確性が求められるため、法務省が提供する申請書様式・記載例や登記事項の作成例を十分に参照し、誤りがないように注意深く行う必要があります。
添付書面の種類と電子化
登記申請には、その種類に応じて様々な添付書面が必要です。
例えば、会社設立登記であれば定款、発起人の決定書、取締役の就任承諾書、払込があったことを証する書面などが一般的です。
これらの添付書面は、電子署名が付与されたPDFファイル(.pdf)、ビットマップイメージファイル(.bmp)、またはXML形式の電子公文書ファイル(.xml)として電子化し、申請書情報に添付する必要があります。
一つの申請で送信できる添付書面情報の合計容量には上限(例:15MB)が設けられているため、ファイルサイズにも注意が必要です。各添付書面には、その作成者が電子署名を付与する必要があります。
オンラインでの印鑑届出
2021年2月15日の商業登記規則改正により、会社の実印を登記所に届け出る「印鑑届書」の提出も、オンラインによる登記申請と「同時」に行う場合に限り、オンラインで完結できるようになりました。
ただし、このオンラインによる印鑑届出は、あくまで登記申請と同時に行う場合に限定されます。オンラインで印鑑届書を提出する際は、専用の様式を使用し、印影を原寸大でスキャンしたデータに電子署名を付すなどの手続きが求められることがあります。
申請後の状況確認と登記完了までの時間
申請後の進捗確認方法と、登記が完了するまでの目安について説明します。
処理状況の確認方法
オンラインで登記申請データを送信した後、申請者はその処理状況を「登記・供託オンライン申請システム」を通じて確認することができます。
データがシステムに正常に到達すると「到達のお知らせ」が、その後、申請先の法務局で正式に受理されると「受付のお知らせ」が、それぞれシステムから通知されます。
これらの通知には、申請番号や到達・受付日時などが記載されています。
登記完了までの目安(24時間以内処理の条件等)
オンライン申請の大きなメリットの一つは、登記完了までの時間が書面申請に比べて大幅に短縮される可能性がある点です。
特に、役員が5名以内の株式会社の設立登記など、一定の条件を満たす単純な申請については、法務局は「原則24時間以内処理」を目指しています。
この「24時間」は、申請が法務局の受付時間内(通常、平日の午後5時15分まで)に受理された場合、翌営業日の同じ時間帯までを目安とします。
ただし、この24時間以内処理はあくまで「原則」であり、申請書や添付書類に不備がないこと、登録免許税がオンラインで納付されていること、申請内容が複雑でないことなどの条件を全て満たす必要があります。
会社の設立日は、原則として申請が法務局に受理された日(平日の午後5時15分までに申請情報が到達し、受付処理が完了した場合)となります。
オンライン会社設立にかかる費用と支払い方法
オンラインで会社設立を行う際に気になるのが費用です。
登録免許税やその他の手数料、そしてそれらの支払い方法について詳しくご説明します。特に株式会社設立時の費用削減ポイントも解説します。
会社設立時の登録免許税~オンライン申請での注意点~
法人登記の中でも、特に会社設立時には登録免許税が発生します。
主な税額と、オンライン申請における登録免許税の軽減措置の現状について正確な情報をお伝えします。
主な登記事項と税額
登録免許税は、登記の種類に応じて課される国税です。
法人登記における主な登録免許税額は以下の通りです。
※スマートフォンの時は横スクロールできます
登記の種類 | 会社形態等 | 税額計算方法 | 最低税額 |
---|---|---|---|
株式会社設立 | 株式会社 | 資本金の額 × 0.7% | ¥150,000 |
合同会社設立 | 合同会社 | 資本金の額 × 0.7% | ¥60,000 |
その他法人設立 | 合名会社・合資会社・一般社団法人・一般財団法人 | 1件につき | ¥60,000 |
資本金の増加 | 株式会社・合同会社 | 増加した資本金の額 × 0.7% | ¥30,000 |
役員変更 | 株式会社・合同会社等 | 1件につき(資本金1億円以下の会社等は¥10,000) | ¥30,000 |
本店本店移転(管轄内) | 株式会社・合同会社等 | 1箇所につき | ¥30,000 |
本店移転(管轄外) | 株式会社・合同会社等 | 1箇所につき(旧本店・新本店それぞれ) | ¥30,000 × 2 |
商号変更・目的変更 | 株式会社・合同会社等 | 1件につき | ¥30,000 |
登録免許税の軽減措置について
租税特別措置法第84条の5に基づき、オンラインで登記申請を行った場合に登録免許税が軽減される措置が存在しました。
この措置は、平成20年1月1日から平成25年12月31日までの時限措置でした。
現行制度においては、この法人設立登記等に関する一般的なオンライン申請による登録免許税の軽減措置は終了していると解されています。
したがって、現在、法人登記のオンライン申請を選択することによる直接的な登録免許税の「減額」メリットは、過去の制度と比較して限定的であると認識する必要があります。
登録免許税以外の費用(手数料など)
登録免許税以外にも、法人登記に関連して以下のような費用が発生する場合があります。
- 電子証明書の発行手数料
オンライン申請には電子証明書が不可欠であり、その取得には種類や有効期間に応じた手数料がかかります。
- 定款認証手数料
株式会社を設立する場合、公証人による定款認証が必要です。
この手数料は一般的に50,000円程度で、加えて謄本代として数千円が必要となります。
これはオンライン申請か書面申請かを問わず発生する費用ですが、電子定款を利用する場合は、紙の定款に必要な40,000円の収入印紙代が不要となります。
合同会社の場合は定款認証が不要です。
- 会社印作成費用
会社の実印や銀行印などを作成する場合、その素材や品質によって数千円から数十万円程度の費用がかかります。
オンライン申請での費用支払い方法
オンライン申請における登録免許税や手数料の主要な支払い方法は、電子納付です。
電子納付
これは、インターネットバンキング、モバイルバンキング、またはPay-easy(ペイジー)に対応した金融機関のATMを利用して行います。
申請データがシステムに到達し、受付処理が進むと、システムから「収納機関番号」「納付番号」「確認番号」といった電子納付に必要な情報が発行され、申請者はこれらの情報を用いて支払い手続きを行います。
電子納付には通常、納付期限が設定されています。
クレジットカード決済の可否
登記申請そのものにかかる登録免許税の支払いについて、「登記・供託オンライン申請システム」で直接クレジットカード決済が利用できるという情報は、現時点の資料からは明確に確認できません。
主要な納付方法は前述の銀行経由の電子納付(インターネットバンキング、Pay-easy)です。
ただし、関連サービスである「登記情報提供サービス」(登記情報をオンラインで閲覧・取得するサービス)の利用料金については、クレジットカードによる支払いが可能とされています。
オンラインで会社設立するメリットとデメリット
会社設立をオンラインで行うことには、多くのメリットがありますが、一方でデメリットや注意点も存在します。
両方を比較検討し、ご自身に合った方法を選びましょう。
オンライン会社設立のメリット
- 利便性の向上
法務局へ直接出向く必要がないため、場所を選ばずに申請手続きを行えます。
また、「登記・供託オンライン申請システム」は、平日の夜間(例:午後9時まで)も稼働しているため、時間の制約が緩和されます。
- 手続きの迅速化
オンライン申請は、書面申請と比較して登記完了までの時間を大幅に短縮できる可能性があります。
特に条件を満たした申請については、原則24時間以内の処理が目指されています。
- 費用削減の可能性
株式会社設立時に電子定款を利用する場合、紙の定款に必要な40,000円の収入印紙代が不要となります。
また、法務局への交通費や郵送費も削減できます。
- 申請状況のリアルタイム確認
申請者は、オンラインシステムを通じて申請手続きの進捗状況をリアルタイムで確認できます。
- ミスの削減可能性
オンライン申請システムは、入力フォームが定型化されており、システムによる基本的なチェック機能も期待できるため、手書きの書類作成に比べて記載漏れや形式的な誤りを減らせる可能性があります。
オンライン会社設立のデメリットと注意点
- 事前準備の煩雑さ
オンライン申請を利用するためには、システム要件の確認、専用ソフトウェアのインストール、そして適切な電子証明書の取得といった事前準備が必要です。
- システム要件と操作の習熟
「申請用総合ソフト」はWindows OS専用であり、Macユーザーなどにとっては利用のハードルとなります。
また、ソフトウェアの操作方法やオンライン申請特有の手順について、一定の習熟が求められます。
- システム障害のリスク
オンラインシステムである以上、システム障害やメンテナンスにより、一時的に利用できなくなるリスクが伴います。
- 電子署名の取得と管理の負担
申請書や多数の添付書面に電子署名が必要となる場合、関係者全員が適切な電子証明書を準備し、署名作業を行う必要があります。
- すべて自己責任での対応
法務局の窓口であれば、職員に直接質問したりできますが、オンライン申請の場合は、基本的に申請者自身がマニュアルやFAQを頼りに手続きを進める必要があります。
オンライン会社設立時の注意点とトラブル対策
オンラインでの会社設立手続きをスムーズに進めるために、申請時によくある不備やシステム障害時の対応、専門家の活用方法など、実務上の注意点とトラブル対策を解説します。
オンライン申請でよくある不備とその対策
オンライン申請においても、申請内容や添付書面の不備により、法務局から補正指示を受けたり、最悪の場合は申請が却下されたりすることがあります。
これらの不備を避けるためには、法務省のウェブサイトで公開されている申請書様式や記載例を熟読し、必要に応じて専門家に相談することが有効です。
※スマートフォンの時は横スクロールできます
不備の種類 | 具体例 | 主な原因 | 対処法 |
---|---|---|---|
定款の不備 | 事業目的の記載が許認可要件を満たしていない | 許認可が必要な業種特有の文言の欠落、曖昧な表現 | 許認可庁や専門家に事前確認、適切な文言を正確に記載 |
出資金払込の記録不備 | 発起人名義以外の口座への払込、通帳コピーの不鮮明・不足 | 払込口座の誤認、証明書類の準備不足 | 必ず発起人個人の口座を使用、通帳の該当ページを正確にコピー、払込証明書の様式確認 |
登記書類間の整合性不足 | 申請書、定款、議事録等で会社名、資本金額、役員の氏名等が一致しない | 複数書類作成時の転記ミス、確認不足 | 全ての書類の記載内容が一致しているか複数回確認、チェックリストの活用 |
登録免許税の計算ミス | 納付税額の過不足 | 資本金額の変動に伴う再計算漏れ、税率の誤認 | 登録免許税額の計算根拠(資本金×0.7%等)を再確認、変更時は必ず税額を再計算 |
電子証明書の不備 | 有効期限切れの証明書使用、指定外の証明書使用、署名方法の誤り | 証明書の管理不足、システム要件の誤解 | 有効期限の確認、法務省指定の適切な証明書を使用、正しい手順で電子署名を付与 |
印鑑届書(オンライン提出時)の不備 | 専用様式以外の使用、印影のスキャンサイズの不一致(原寸大でない)、電子署名の欠落 | 様式の誤認、スキャン設定の誤り | 法務省指定の専用様式を使用、原寸大でスキャン、届出人の電子署名を付与 |
添付PDFの形式不備 | PDFファイルへの直接編集、検索可能PDFでない(画像PDFの場合) | PDFの仕様理解不足 | 署名後のPDFは編集不可、補正は別ファイルで。スキャン時はOCR処理を推奨 |
システム障害発生時の対応
オンライン申請システムは、稀にシステム障害や緊急メンテナンスにより利用できなくなることがあります。
- 情報収集: 法務省の「登記・供託オンライン申請システム」の運転状況ページや、法務局の公式ウェブサイトなどで、障害の発生状況や復旧見込みに関する公式情報を確認します。
- 代替手段の検討: 障害が長引き、申請期限が迫っているなど緊急性が高い場合は、書面による申請に切り替えることも検討する必要があります。
専門家(司法書士や税理士など)の活用
法人登記のオンライン申請は、手続き自体は申請者本人が行うことも可能ですが、その専門性や準備の煩雑さから、多くの事業者が専門家のサポートを活用しています。
- 司法書士: 登記手続きの専門家であり、定款作成から申請書類の準備、電子署名の付与、オンライン申請代行まで、一連の手続きを依頼できます。
- 税理士: 法人設立後の税務届出や会計処理、節税対策など、税務面からのアドバイスを行います。
- 弁護士: 会社の法的ストラクチャーや特殊な内容を含む定款の作成など、高度な法的判断が必要な場合にアドバイスや代理業務を行います。
最新の法改正・システム変更への注意
法人登記に関する法律やオンライン申請システムは改正・変更されることがあります。
オンライン申請を行う際には、常に法務省の「登記ねっと」や各法務局のウェブサイトで最新の情報を参照することが極めて重要です。
オンラインで会社設立した後に行う手続き
オンラインで無事に会社設立(法人登記)が完了した後も、事業を開始するためにはいくつかの手続きが必要です。
登記事項証明書の取得から銀行口座開設、税務署への届出までを解説します。
登記事項証明書・印鑑証明書の取得
登記が完了すると、その証明として「登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)」や、会社実印を届け出た場合には「印鑑証明書」を取得できるようになります。
これらの証明書は、オンラインで請求し、郵送または法務局窓口で交付を受けられます。
オンライン請求の場合、手数料が安価に設定されていることが一般的です。
銀行口座の開設
法人として事業活動を行うためには、法人口座の開設が不可欠です。
オンラインで法人登記を完了させた後、各金融機関で口座開設手続きを進めます。
近年、主要な銀行では法人口座開設のオンライン申込サービスが拡充されています。
金融機関によってオンライン登記完了後の口座開設手続きにおける書類要件やプロセスのデジタル化の度合いには差が見られます。
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銀行名 | オンライン口座開設サービス | オンライン登記後の書類削減・手続簡略化の状況 |
---|---|---|
三菱UFJ銀行 | WEB法人口座開設 | 履歴事項全部証明書、法人の印鑑証明書等の書類提出は引き続き必要。プロセスはデジタル化されているが、登記情報連携による大幅な書類削減は明記なし。 |
三井住友銀行 | 法人口座開設 (Trunkアカウント等) | 「事業内容を確認できる書類1点だけ」での申込を訴求(条件あり)。マイナンバーカード等での本人確認。電子契約活用による申込書記入不要化も推進。登記情報連携の詳細は不明確。 |
みずほ銀行 | 法人口座開設ネット受付 | 登記事項証明書・印鑑証明書の提出が原則不要と明記。ウェブ面談で完結可能。オンライン登記情報の活用を示唆。 |
税務署等への届出
法人を設立し登記が完了したら、速やかに税務署、都道府県税事務所、市町村役場、年金事務所、労働基準監督署など、関係各署への届出が必要です。
デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」は、法人設立登記と同時に、一部の税務関連の届出をオンラインで一括して行えるように設計されています。
【まとめ】オンラインでの会社設立を成功させるために
本記事では、会社をオンラインで設立(法人登記)するための情報を詳しく解説しました。
最後に、オンライン申請をスムーズに進めるコツと、これからの制度についてまとめます。
法人登記のオンライン申請は、主に法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を使って行います。
最近では、デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」とも連携し、より使いやすくなっています。
オンライン申請のメリットは?
- 法務局へ行かなくても手続きできる手軽さ。
- 登記が終わるまでの時間が短い。
- 電子定款を使えば収入印紙代(4万円)が不要になるなど、費用を抑えられる。
オンライン申請の注意点は?
- Windowsのパソコンが必要など、準備するものがある。
- 専用ソフトの操作に慣れる必要がある。
- 事前に電子証明書を取得する必要があるなど、準備が少し複雑。
実際に手続きする際は、定款や添付書類に間違いがあると、申請が通らなかったり、手直しが必要になったりします。
法務省が出している書き方の例や手引きをよく読み、不安な場合は司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
法人登記のオンライン申請は、もっと便利になり、利用できる範囲も広がっていくでしょう。