税理士選びにおいて、自社と地理的な距離が近いかということは考慮事項のひとつでしょう。
「近くにいれば安心」「なんとなく近所で探していた」という人も少なくないはず。
しかし、実際のところ本当に距離の近さというのは重要なのでしょうか?逆に近いことで生じるデメリットなどはないのでしょうか。
今回は税理士探しで近所の税理士に依頼をするか、遠方の税理士に依頼をするかの違いやそれぞれの特徴、メリット・デメリットを解説します。
税理士選びで悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
近所の税理士を選ぶメリット
それではさっそく、近所の税理士を選ぶメリットについて見ていきましょう。
やはり税理士との距離が近いということには様々なメリットがあります。
対面での打ち合わせが可能
近場の税理士であれば、対面での打ち合わせを簡単に行えます。
直接顔を会わせて話すことで気兼ねなく相談ができたり、納得いくまで質問や相談をすることで疑問を解消することができるでしょう。
緊急時の対応がスムーズ
また定期的な打ち合わせ以外にも、何か緊急で対応をしてほしい事態が発生したとき、近隣であればすぐに訪問したり、来てもらうことが可能です。
特に税務調査などの対応は知識のない一般経営者には難しいものですから、税理士に同席してもらい対応を一任するのがベターですが、遠方だとなかなかすぐに対応してもらうのは難しいかもしれません。
その点、近場の税理士であれば柔軟に対応してもらえるので、緊急時の対応では物理的な距離の近さは安心材料のひとつとなります。
必要書類などの受け渡しが便利
また税務や会計の処理では日々膨大な資料や書類のやり取りが発生しますが、そんなときに近場であれば書類の受け渡しも簡単です。
万が一抜け漏れやミスで訂正があっても、近くであればすぐに対応が可能な場合も多いでしょう。
一日を争う状況の場合、近さは武器になります。
地域独自の情報の共有
自社の同地域の税理士に依頼する強みしては、地域情報の共有があります。
基本的に税理士は拠点とするエリアを中心に顧客を抱えていますから、近隣の景気状況や会社事情など自社にも役立つ情報を持っている可能性が高くなります。
また、税理士は金融機関とも結びつきが強いため、地元の地銀や信金などから融資を受けたいと思った際には心強い味方になってくれるでしょう。
近所の税理士を選ぶデメリット
このように、自社と同じあるいは近隣のエリアで税理士を探すことは一定のメリットがあります。
しかし同時に、地域を近隣に限定することデメリットが生じることもあります。
ここからは近所で税理士を探すデメリットについて解説します。
選択肢が少ない
近場で税理士を探す最大のデメリット・ハードルが選択肢の少なさです。
首都圏などの大都市圏であれば近隣エリアに限定しても多数の税理士がいるかと思いますが、地方では税理士の数も少なく、選択肢が限られることもしばしば。
そもそも近くで信頼できそうな税理士を探すのに苦労する、といったケースも散見されます。
専門性が低くフィットしない
また、近隣エリアに絞ると必ずしも自社にフィットしない可能性も高くなります。
税理士が近所にいることと、その税理士が自社にとって最適かどうかはまた別の問題です。
ひとまとめに税理士と言っても得意な業種や対応範囲は違います。
たとえば建設業に強い税理士と飲食店に強い税理士、IT業界に強い税理士はそれぞれ違う、というのはイメージしやすいのではないでしょうか。
業種によっては法制度の改正があったり補助金なども絡んでくるため、税理士もクライアントの業界についての最新の情報は日々収集する必要があり、実際に良い税理士は勉強熱心なものです。
たしかに、基本的な税務の会計の処理はどの税理士に依頼してもこなしてくれますが、それ以上の提案をしてくれるかどうかは税理士次第です。
「税理士なんだから誰に頼んでも大丈夫でしょう」とは必ずしもいかない可能性もありますので、自社の業界に強い税理士を選びたい場合、エリアを限定するのは得策とは言えません。
地域的なしがらみが多い
地場の繋がりが強いことは武器でもありますが、時に煩わしいことも。
特に知り合いや金融機関からの紹介で税理士を依頼したとは、対応や自社との相性で不満を覚えたとしても心理的に変更しづらい、ということもあるでしょう。
また、他社についての情報を持っているということは自社の情報も他社に共有されている可能性があるということについては留意しておきましょう。
基本的に税理士から許可なく会社の経営状況や重大な個人情報などを漏らすことはありませんが、税理士も人間ですし、クライアントと距離が近くなりがちな地方では万が一、ということもあります。
たとえ税理士が直接情報を開示しなくても、税理士事務所で偶然知り合いと鉢合わせたり、税理士事務所に出入りしているところを知人に見られたことから自分の事業についてのプライバシーが漏れてしまう、なんてことも、特に選択肢の少ない地域では往々にして起こります。
地域的なしがらみを避けたい、知り合いにばれたくないという場合はあえて遠方の税理士を探すというのも手です。
遠方の税理士でも特に問題はない
ここまで見てきたように、近場の税理士にするとメリットもありますが、地域によってはデメリットのほうが大きくなることもあります。
逆に、遠方の税理士に依頼することで大きく不利になることやデメリットが目立つということも特にありません。
特に最近は税理士業界もIT化、オンライン化が進んでいます。
たとえば対面の打ち合わせはコロナ渦以降主流になったオンライン会議でも代替可能になりましたし、書類のやり取りも郵送でも日本国内であればおおむね1~2日程度で届きますし、メールやチャットツールなどで電子化すれば即時に受け渡しが可能です。
また近年は距離に関係なく、申告業務などにおいてはオンライン上でクラウド会計ソフトを使うことが増えていますが、対応している税理士であればクライアント側の負担も大きく削減することができます。
他方、地方の高齢税理士だと電子化に対応していない場合も多く、それゆえに効率が落ちたり人的なミスが発生する可能性も高くなります。
その他、万が一の税務調査時の対応などにおいても、遠方でも調査の立ち合いや対応が可能な税理士も多くいます。
さらに実は、税理士がZOOMやLINEなどのオンラインツールを用いて税務調査に立ち会うことも認められているのです。
2020年からは試験的に一部の大企業において税務調査自体がオンラインで行われてきていますし、税務調査そのもののあり方もオンライン化が進み変化してきています。
このような事情からも、遠方で直接対面しづらいことによるデメリットというのは、今日ではほとんど存在しないと言えるでしょう。
まとめ
今回は税理士を選ぶ際に近所の税理士を探すか、遠方で探すかの違いやメリットデメリットについて説明しました。
要点をまとめましょう。
- 近場の税理士を探すことは一定のメリットがある
- 必ずしも自社に最適な税理士が見つかるとはいえない
- 近年では遠方の税理士を選ぶほうが良いケースも多い
自社が事業を展開するエリアで最適な税理士を探すことができれば、それに越したことはありません。
ただ、一部の大都市圏を除いては十分な選択肢がなく、近場で良い税理士を見つけるのが困難というのが実情です。
そのような場合、エリアを限定せずに自社の業界に強い、自社の状況にマッチしている税理士を探すほうが有用なことも多いでしょう。
全国には多数の税理士や税理士法人があり、サービスの質も日進月歩・切磋琢磨しています。
特にオンラインツールの発展により、遠方であることがデメリットではなくなった昨今、仕方がなく近隣から選んでいた時代とは事情が変わってきています。
なんとなく近所の税理士から探す、というのではなく、自社にとって一番良い税理士を広い目で探してみるのが良いでしょう。