創業を目指す多くの方にとって、融資は重要なステップですが、「自己資金が少ない」と不安に感じる方も少なくありません。しかし、今回紹介する事例では、自己資金が100万円と少額でありながら、900万円の創業融資を成功させました。この結果は、単に運が良かったというものではなく、しっかりとした準備と具体的な計画があったからこそ実現したものです。
創業融資の審査では、自己資金の額はもちろん重要ですが、それ以上に「融資後の資金使途が明確であること」や「売上の実現性が説明されていること」が重視されます。この事例を通じて、同じ自己資金でも結果に大きな差が生まれる理由を深掘りし、融資成功のポイントをお伝えします。
同時期に、同業種で同じ自己資金100万をもとに創業融資を受けた2人の事例
同時期に、同じ業種で同じ自己資金100万円をもとに創業融資を申し込んだ2人の事例です。しかし、結果は大きく異なり、Aさんは900万円の融資を信用金庫から引き出した一方で、Bさんは日本政策金融公庫から300万円の融資にとどまりました。融資先の違いが結果を分けたわけではなく、経歴がよかったわけでもありません。
今回のケースに関して言えば申請時の「資金使途」と「売上計画」の具体性が大きな差を生みました。
Aさん(弊社サポート)
自己資金100万円に対し、資金使途と売上計画の明確さが評価され、信用金庫から希望額に近い900万円の融資を受けることに成功しました。
明確な資金使途
融資申請時に「資金をどのように活用するか」を具体的に示すために、事業立ち上げに必要な費用をしっかりと整理しました。特に以下のような費用について、見積書を添付することで審査担当者に明確なイメージを伝えました。
また運転資金についても、資金繰り表を添付し必要資金を詳細に説明しました。
- HP制作費
ビジネスの顔となるホームページ制作費用について、デザイン料や構築費、ドメイン・サーバー代まで詳細に見積もりを準備しました。さらに、SEO対策や広告運用に必要な費用も計上し、それが売上につながる仕組みを具体的に示すことで、資金の有効活用を審査担当者にアピールしました。
- 業務用ソフトウェア
業務効率化や顧客管理を目的に、会計ソフトや顧客管理システム、業務特化型ソフトウェアの導入計画を詳細に立てました。具体的なベンダーからの見積もりを提示し、これらのツールが事業運営にどのように貢献するかを明確に示したことで、計画の実現性と説得力を高めました。
- 事務所内装費
開業時に必要なデスクや椅子、収納設備の購入費用に加え、事務所のレイアウト変更や壁紙の改装費用を詳細に見積もりました。さらに、内装の写真やレイアウトプランを添付し、快適な業務環境を整える具体的なビジョンを提示することで、資金使途の現実性と説得力を高めました。
売上計画の具体性が評価ポイントに
Aさんは売上計画において、どのように顧客を獲得するかを明確に記載しました。その内容は、単に「売上を上げる」という抽象的なものではなく、具体的なアクションプランや数値目標が伴っていました。
Aさんは広告費の活用計画を具体的に提示しました。例えば、SNS広告に月〇万円、Google広告に月〇万円を投じるといった使途を明確にし、クリック数やコンバージョン率などの効果測定方法も計画書に記載。初月の広告費〇万円で見込み顧客100名を集める計画を立て、ターゲット層(年齢層、職業、地域など)や広告メッセージの方向性も具体化しました。さらに、オンライン広告だけでなく、地域密着型のポスティングやイベント参加など多角的な集客プランを提案。
売上予測についても、見込み顧客の〇%が初回契約に至ることを前提に、月の売上目標〇万円を設定。契約率や平均単価のデータを添付し、初回顧客を定着させるためのリピート施策(割引クーポンやフォローアップ)も盛り込みました。また、初年度の広告費を年間〇万円とし、月ごとの配分と収支計画を提示することで、具体的な成果として「〇か月目で黒字化」や「1年後の売上見込み〇万円」を目標に掲げました。このように明確な計画が高い評価を得た要因となりました。
Bさん(自力で申請)
自己資金100万円で日本政策金融公庫に申請したものの、資金使途と売上計画の不明確さから融資額は300万円に減額されました。
不明確な資金使途
Bさんの申請では、資金使途を「運転資金」と漠然と記載するにとどまりました。具体的に何に使うのか、どの程度の費用がかかるのかについての詳細な説明がなく、事業の成長や収益にどのように結びつくかが明確に示されていませんでした。例えば、設備投資や広告費、必要な物品の購入など、具体的な用途を細かく提示することで資金の有効活用を説明する機会があったにもかかわらず、その準備が不足していました。このような曖昧さが、審査担当者に「計画性が乏しい」と判断される原因となり、融資額が希望よりも低く抑えられる結果につながりました。
実現しなそうな売上計画
Bさんの売上計画は、月々の売上増加を感覚的に記載したもので、具体的な根拠に欠けていました。例えば、「数カ月後にはこれくらい売上が増える」といった曖昧な表現にとどまり、どのような顧客獲得方法や施策によって売上を実現するのかが明確に示されていませんでした。このような計画では、実現可能性を審査担当者に納得させることが難しく、融資額が希望よりも低く抑えられる結果につながりました。
結果の差はどこから生まれたのか?
融資先の違いではなく、申請資料の「具体性と説得力」が結果を分けました。Aさんは、事務所内装費やHP制作費などを詳細に計算し、見積書を添付。一方、Bさんは「運転資金」と漠然と記載するだけで、具体的な使途を示しませんでした。
さらに、Aさんは顧客獲得方法や売上見込みを具体的に提示し、広告費を〇万円投じて月〇人の顧客を獲得する計画を明示。一方、Bさんは売上増加を感覚的に記載するのみで実現性を示せませんでした。これが、Aさんの900万円とBさんの300万円という結果の差につながりました。
融資成功のためのポイント
資金使途を明確にする
開業時に必要なものをリストアップし、見積書を添付。資金が成果につながる具体的なイメージを審査担当者に示す。
売上の実現性を説明する
顧客獲得計画や具体的なコストを明記し、数字で裏付けられた売上目標を提示。これにより計画の説得力を高める。
実際に融資を受けた後の教訓
Aさんの場合
Aさんは計画通りに進まない部分もありましたが、融資申請時に立てた具体的な計画をもとに軌道修正を繰り返し、営業を継続しました。結果的に事業が安定し、融資を活用した初期投資が売上につながる形で実現。現在も弊社と顧問契約を継続し、経営面でのサポートを受けながら事業を成長させています。
Bさんの場合
Bさんは融資額が不足したことで、開業後の運転資金に苦労しました。その後、弊社と顧問契約を結び、財務改善や追加融資の計画をサポート。現在は資金計画の見直しを進め、事業の立て直しに取り組んでいます。
まとめ
最後に2つの事例から創業融資成功のポイントを整理します。
- 計画の具体性が重要
- 資金使途を詳細に提示
- 売上実現性を説明
- 事前準備で差が出る
- 専門家のサポートを活用
創業融資成功のカギは、資金使途や売上計画の具体性です。詳細な見積書や明確な行動計画を準備し、説得力を高めることが重要です。融資を成功させたい方は、専門家のサポートを活用し、しっかりとした準備を進めましょう。