個人事業主の節税対策~知らないと損するポイントと注意点~


  • 個人事業主になったけど、税金が高くて手元にお金が残らない…
  • 確定申告が近づいてきたけど、効果的な節税方法がわからない


個人事業主にとって「節税」は、利益を最大化し、事業を成長させるための重要な経営戦略です。

しかし、制度が複雑で何から手をつければ良いか分からない方も多いでしょう。

この記事では、国税庁などの公的情報を基に、個人事業主が知るべき節税について解説します。


個人事業主の節税は「4つの税金」の理解しよう


効果的な節税を行うには、まず自身が納める税金の仕組みを理解する必要があります。

ここでは、個人事業主に関連する4つの主要な税金について、節税に繋がるポイントを解説します。


所得税

1年間の事業の儲け(所得)にかかる国税です。

所得が増えるほど税率も高くなる「累進課税」が特徴で、最大税率は45%にもなります。

だからこそ、後述する経費や控除を使い「課税所得」をいかに減らすかが、節税の最大の鍵となります。


住民税

お住まいの都道府県と市区町村に納める地方税です。

前年の所得をもとに税額が決まるため、所得税の節税は、翌年の住民税の節税にも直結します。


消費税

商品販売やサービス提供の対価に対して課される税金です。

原則、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。

2023年10月のインボイス制度開始により、売上が1,000万円以下でも、取引先のためにあえて課税事業者になる個人事業主が増えています。


個人事業税

法律で定められた特定の事業(法定70業種)を行う個人に課される地方税です。

年間所得から290万円の事業主控除があるため、所得がこの金額以下なら課税されません。


【基本の3本柱】すべての個人事業主が今日からやるべき節税対策


どの業種の個人事業主にも共通する、最も効果的で基本的な節税策は次の3つです。

もし実践していないものがあれば、すぐに行動に移しましょう。


節税策①:青色申告で最大65万円の所得控除を狙う

個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がありますが、節税を考えるなら青色申告一択です。

事前に申請が必要ですが、それ以上に大きなメリットがあります。


  • 青色申告特別控除: 所得から最大65万円または55万円を差し引けます。e-Tax(電子申告)または電子帳簿保存を行えば65万円控除が適用可能です。
  • 赤字の3年間繰越: 事業で出た赤字(純損失)を、翌年以降3年間の黒字と相殺できます。開業当初の赤字も将来の節税に繋がります。
  • 30万円未満の資産を一括経費化: パソコンや設備など、1個30万円未満のものであれば、購入した年に一括で経費にできます(年間合計300万円まで)。


Point!

青色申告を始めるには、原則その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出が必要です。

開業した場合は、開業日から2ヶ月以内に提出しましょう。


節税策②:経費を漏れなく計上し、課税所得を圧縮する

所得税は「収入 − 必要経費 − 所得控除」で計算されます。

つまり、事業に関連する支出を漏れなく経費として計上することが、節税の基本中の基本です。


  • 経費にできるものの例: 事務所家賃、水道光熱費、通信費、旅費交通費、消耗品費、広告宣伝費、仕入代金など。
  • 家事按分を忘れずに: 自宅兼事務所の場合、家賃や光熱費の一部を事業分として経費計上できます。事業で使っている面積や時間など、客観的で合理的な基準で計算しましょう。
  • 証拠書類は命: 税務調査で認められるよう、全ての経費について領収書や請求書、クレジットカード明細などを必ず保管してください。


節税策③:使える所得控除をフル活用して税負担を軽減する

所得控除は、納税者の個人的な事情を考慮して課税対象の所得を減らしてくれる制度です。

全部で15種類あり、使えるものはすべて申告しましょう。


個人事業主が特に活用したい所得控除

所得控除の種類概要と節税効果
社会保険料控除支払った国民年金・国民健康保険料の全額が控除対象。
小規模企業共済等掛金控除後述するiDeCoや小規模企業共済の掛金の全額が控除対象。節税効果が非常に高い。
生命保険料控除生命保険や医療保険、個人年金保険の保険料に応じて、合計で最大12万円が控除される。
医療費控除年間の医療費が10万円(または総所得金額等の5%のいずれか低い方)を超えた場合に適用。生計を同じくする家族の分も合算可能。
寄付金控除ふるさと納税もこの対象。実質2,000円の負担で返礼品を受け取りながら、税金の控除が受けられる。


【攻めの節税】将来の資産形成にも繋がるお得な制度4選


単に税金を減らすだけでなく、ご自身の将来への備えにも繋がる「一石二鳥」の節税制度があります。

これらは個人事業主にとって強力な武器となります。


小規模企業共済(経営者の退職金制度)

個人事業主が事業を辞めた時や退職した時のために、自分で退職金を積み立てる制度です。


  • 最大のメリット: 掛金(月額最大7万円、年額84万円)が全額所得控除になります。
  • 受取時もお得: 受け取る共済金は税負担が軽い「退職所得」または「公的年金等の雑所得」扱いになります。
  • 注意点: 掛金納付月数が240か月(20年)未満で任意解約すると元本割れするリスクがあります。


経営セーフティ共済(倒産防止共済)

取引先の倒産という不測の事態に備えるための制度です。


  • 節税効果: 掛金(月額最大20万円)を全額必要経費にできます。
  • 本来の目的: 万が一、取引先が倒産した場合、積み立てた掛金の最大10倍(8,000万円)まで無利子・無担保で融資を受けられます。
  • 出口戦略も: 40か月以上納付すれば、解約時に掛金が100%戻ってきます。ただし、戻ってきた解約手当金はその年の収入として課税される点に注意が必要です。


iDeCo(個人型確定拠出年金)

自分で掛金を拠出して運用し、老後資金を作る私的年金制度です。


3つの税制メリット

  1. 掛金が全額所得控除
  2. 投資信託などで得た運用益が非課税
  3. 60歳以降の受取時も大きな控除が適用


掛金の上限

個人事業主(第1号被保険者)は月額最大68,000円、年額816,000円まで拠出できます。

ただし、この上限額は国民年金基金の掛金や国民年金の付加保険料と合算した金額です。


注意点

原則60歳まで引き出せないため、無理のない範囲で始めることが重要です。


ふるさと納税

応援したい自治体へ寄付をすることで、自己負担額2,000円で返礼品を受け取れ、さらに所得税・住民税が控除される制度です。

直接的な節税とは少し異なりますが、実質的な手出しを抑えて納税できるため、非常にお得な制度と言えます。

控除額には所得に応じた上限があるため、事前にシミュレーションサイトで確認しましょう。


個人事業主から法人化へ。節税メリットとタイミング


事業が順調に成長し、所得(利益)が一定の水準を超えると、個人事業主のままよりも会社を設立する「法人化」の方が税負担を抑えられる可能性があります。


検討のタイミング

一般的に所得が800万円を超えたあたりが一つの目安とされます。

これは、個人の所得税率が法人税の実効税率を上回る可能性が出てくるラインだからです。


法人のメリット

  • 税率: 個人の所得税・住民税率(最大約55%)より、法人税率の方が低くなる場合がある。
  • 給与所得控除: 自分への給与(役員報酬)に給与所得控除が適用され、個人の税金が安くなる。
  • 経費の範囲: 生命保険料や社宅家賃など、法人の方が経費にできる範囲が広がる。


法人のデメリット


  • コスト: 会社設立に約20万円以上の費用がかかります。税理士への顧問料も発生する場合があります。
  • 社会保険: 赤字でも社会保険への加入が義務付けられ、保険料負担が増える場合がある。
  • 事務負担: 会計処理や税務申告が複雑になります。


法人化への判断は、税金だけでなく社会保険料の負担増なども含めた慎重なシミュレーションが不可欠です。

検討を始めたら、必ず税理士などの専門家に相談しましょう。


節税の注意点~「やりすぎ」はNG!脱税との違い~


節税努力は重要ですが、一線を越えてしまうと「脱税」という犯罪になります。

その境界線を正しく理解し、リスクを避けることが賢明です。


「節税」と「脱税」の決定的な違い

  • 節税: 税法のルールに則り、控除や特例などを活用して合法的に税負担を軽減すること
  • 脱税: 売上を隠したり、架空の経費を計上したりして、違法に税金を免れようとすること


ペナルティは重い

申告内容に誤りや不正が見つかると、本来の税金に加えて「過少申告加算税」や、悪質な場合は「重加算税(最大40%)」といった重いペナルティが課されます。


迷ったら専門家へ

税務は非常に専門的で、法改正も頻繁です。経費の判断に迷ったり、より高度な節税を検討したりする場合は、自己判断せずに税理士に相談しましょう。

税理士に支払う報酬も経費として計上できます。

専門家への相談は、無用なリスクを避け、結果的に最大の節税と安心を得るための最も確実な投資です。


個人事業主の節税に関するよくある質問(FAQ)


Q1. 赤字の場合、節税対策は必要ないですか?

いいえ、赤字でも対策は重要です。特に青色申告をしていれば、その年の赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺して将来の税金を減らすことができます(純損失の繰越控除)。

赤字の年こそ、青色申告の申請を忘れないようにしましょう。


Q2. 節税の「やりすぎ」で税務署に目をつけられることはありますか?

売上規模に対して経費が異常に多い、個人的な支出を経費にしている疑いがあるなど、不自然な申告は税務調査の対象となりやすいです。

全ての経費について「事業に必要だった」と客観的な証拠(領収書や記録)をもって説明できることが重要です。


Q3. 税理士に依頼すると、どのくらいの費用がかかりますか?

費用は事業規模や依頼内容によって様々です。確定申告の代行だけなら数万円から、月々の顧問契約を結ぶ場合は月額数万円~が相場です。

多くの税理士事務所では無料相談を行っているので、まずは複数の事務所に話を聞いて、サービス内容と料金、相性を比較検討するのがおすすめです。


【まとめ】賢い節税で、事業の成長を加速させよう


個人事業主の節税対策について、網羅的に解説しました。最後に重要なポイントをまとめます。


  • 基本は青色申告・経費計上・所得控除の3つ
  • 小規模企業共済やiDeCoで、将来の備えと節税を両立させる
  • 所得800万円超えで「法人成り」を視野に入れる
  • 合法的な「節税」と違法な「脱税」の境界線を守る
  • 判断に迷ったら、必ず税理士に相談する


節税は、知っているか知らないかで、手元に残るお金が大きく変わるシビアな世界です。

この記事を参考に、ご自身に合った節税対策を一つでも多く実践し、大切な資金を守り、事業の成長へと繋げてください。


免責事項

本記事は、国税庁や中小企業基盤整備機構などの公的情報や専門家の一般的な見解を基に作成されていますが、特定の個人に対する税務アドバイスを提供するものではありません。

税法の解釈や適用は個別の状況により異なりますので、具体的な判断にあたっては必ず税理士などの専門家にご相談ください。



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