創業期で資金が心許なく、実績にも乏しい状態で融資をしてくれる創業融資は経営者の強い味方です。
ただ、ここで問題となってくるのがいわゆる信用情報の“ブラックリスト”の問題。
過去にローンなどの支払い遅延があると、ブラックリスト入りしていて融資を受けられない、なんて話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は信用情報ブラックでも創業融資は受けられるのか?創業融資では信用情報は見られないのか?もし信用情報ブラックだった場合はどうすれば良いのか?まで詳しく説明していきます。
創業融資を受けたいけど自分の信用情報に不安がある…という人はぜひ参考にしてください。
主な創業融資の種類
まず、創業融資について簡単に整理しておきましょう。創業期に受けられる融資制度は主に以下のものがあります。
- 日本政策金融公庫による融資
- 地方自治体による制度融資
- 信用保証協会の保証付き民間金融機関による融資
- 民間金融機関によるプロパー融資
- ビジネスローン
- ソーシャルレンディング
この内、一般的に「創業融資」として検討されるものは日本政策金融公庫による融資が圧倒的に多いです。
次に、地方自治体や民間金融機関(地方銀行・信用金庫など)、信用保証協会が連携して融資を行う制度融資があります。同じ民間の銀行融資でもプロパー融資(銀行が単独で直接貸し付ける融資)は審査が非常に厳しく、創業期に受けるのは実質的には困難と言えるでしょう。
ほとんどの場合、創業融資と言えば日本政策金融公庫の融資か、保証協会付きの制度融資の二択になりますので、本記事でもこの二つに絞ってお伝えしていきます。
信用情報とは?
次に、信用情報について理解しておきましょう。
「信用情報」とは、「個人信用情報機関」が保有しているローンやクレジットカードなどの申し込み履歴や支払い状況を記録した情報のことを言います。
日本では個人信用情報機関は以下の三つがあります。
- 株式会社シーアイシー(CIC)
- 日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
それぞれ簡単に説明します。
株式会社シーアイシー(CIC)
『株式会社シーアイシー(CIC)』は割賦販売法及び貸金業法に基づく指定信用情報機関の信用情報機関で、主にクレジットカードの支払い状況(支払い遅延)やカードローン、リボ払いの利用状況、携帯料金の支払い状況、端末の割賦(分割)払いなど幅広い情報が掲載されています。
日本信用情報機構(JICC)
『日本信用情報機構(JICC)』は主に消費者金融関連の情報が掲載されています。非銀行系のカードローンなどはこちらになります。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
『全国銀行個人信用情報センター(KSC)』は一般社団法人全国銀行協会が設置、運営している個人信用情報機関です。主に銀行からの借り入れ情報が掲載されます。
信用情報とブラックリスト
それでは、ブラックリストとは何なのでしょうか?
日常生活においていわゆる金融事故、たとえば先に挙げたクレジットカードの支払い遅延や携帯料金の支払い遅延などが発生した際、今紹介した3つの個人信用情報機関に記録が残ります。
一度うっかりで支払いを忘れてしまった、などの場合は大きな影響はありませんが、支払いの遅延が毎月のように起こるなど状態化していたり、長期間延滞が続いている場合はクレジットカードの新規発行やローンの審査などに通りにくくなります。
これがいわゆる“ブラックリスト入り”の状態です。
遅延などの履歴は一度情報が掲載されると、長期間履歴が残り続けることになります。たとえば延滞の履歴抹消までは債務が完済してから5年間、任意整理の履歴抹消も債務完済から5年間、また自己破産の情報はCICとJICCは保有しませんが、KSCでは10年間残り続けます。
ですから、支払いを遅延してしまうと長期間に渡って融資の審査などに悪影響が残り続けるということです。
また、遅延履歴は3機関で共有されていますから、たとえばクレジットカードの支払い遅延があった場合管轄のCICはもちろん、JICCやKSCも情報を保有することになります。
そのため、後に詳しく説明しますが、仮に「この金融機関はCICを見ないから大丈夫」などと考えても、実際には情報が筒抜けになっているため融資を受けられない…なんてことはままあります。
ブラックリストでも創業融資は受けられるのか?
それでは本題に入っていきましょう。
上記のような金融事故によって個人の信用情報に傷がついている場合、いわゆるブラックリスト状態の場合でも創業融資は受けられるのでしょうか?
結論から言うと、不可能ではないがかなり厳しい、というのが現実です。
たとえば銀行融資はそれがプロパー融資であっても保証協会付きの制度融資であっても、そもそも審査が政策金融公庫よりも厳しく、審査に通過しても少額であったりと条件的にも厳しいものが多いです。当然、KSCを始めとした個人信用情報も徹底的にチェックされます。どこまで調べるのか?と考える人もいますが、どこまでも調べれらると思っておきましょう。
そんな中、個人事業や法人の代表者の信用情報に傷がついている場合、融資を受けるのはほとんど不可能と言っても過言ではありません。
また、民間の銀行融資などと比べると比較的審査が緩く、広く事業主を受け入れている日本政策金融公庫でも、信用情報がブラックだと審査に通過するのは厳しくなります。
日本政策金融公庫でも、例外なく信用情報はしっかりとCIC、JICC、KSCの3つをチェックしています。
ですから、創業期でも比較的審査に通過しやすい日本政策金融公庫でも、しっかりと個人信用情報は見られますし、その時点で信用情報ブラックの場合は融資は厳しくなります。
ブラックリストでも創業融資を受ける方法は?
ここまで説明してきたように、日本政策金融公庫でも、民間の金融機関でも、融資の際には個人の信用情報を確認されますからブラックリスト入りしている状態での融資は非常に厳しいものになります。
ただ、可能性が全くのゼロかというと必ずしもそうではありません。信用情報に傷がある場合でも融資に通過することはあります。
ここからは、信用情報ブラックの人でも融資を受けられるための手順や対策を説明します。
1.まずは最新の情報を確認する
過去にクレジットカードや携帯料金の支払いを遅延したことがあり、信用情報に不安がある人はまず自分の最新の信用情報を確認してみましょう。
CIC、JICC、KSCの3つではそれぞれインターネットや郵送による信用情報の開示を受け付けています。手数料はかかりますが、自分の現在の状況を確認できるので、少しでも不安がある人は情報を確認すると良いでしょう。
2.履歴が消えるまで待つ
信用情報を確認して、自分がブラックリスト入りに該当すると判明した場合は履歴が消えるまで待つのが一番確実です。
さきほども説明したように、基本的に支払いの遅延などは債務の完済から5年経たないと消えませんから、直近半年以内などで遅延がある場合は履歴が消える、あるいは消えるまではいかないまでもしばらく時間が経ってから申し込むのが良いでしょう。
またこれは当然債務を完済していることが前提なので、現在も支払い遅延をしている場合は、まず遅延を解消することから始めなければいけません。
すでに支払いが遅れている他にあるのに、新たにお金を貸してくれるほど金融機関は甘くないからです。
3.対策を立てリカバリーする
また、支払い遅延などがあった場合でも、常態化してブラックリスト入りしているまでとは言わない場合、他の項目で挽回をすることができる可能性もあります。
たとえば数年前にうっかりで一度クレジットカードの引き落としに間に合わなかった、など、比較的影響が軽微であれば融資に申し込み挑戦してみるのも良いでしょう。
ただ、支払いの遅延などがなく毎月しっかり払えている人と比べると審査は若干厳しくなりますので、他で挽回することが重要になります。
具体的には、
- 自己資金を多く用意する
- 経験・実績をアピールする
- 事業計画書(創業計画書)を作り込む
などです。
自己資金を多く用意する
まず、融資を受ける際にも、自己資金をどれくらい用意できるか?は重要な判断材料になります。創業に対する熱意や覚悟、それまでの計画性などを判断することができるため、自己資金は少しでも多いほうが有利です。融資を受けるまでに時間的に余裕がある場合は、毎月コツコツ資金を積み立てるなどしてアピール材料にしましょう。
経験・実績をアピールする
またこれまでの経験や実績も大きな武器になります。
融資を判断する際には、その事業が成功するのか?つまり返済の見込みがあるのか?が何より重要になってきます。
ですから、同業種であればそのまま独立前の経験や人脈が活用できますし、異業種であってもこれまで培った知識やスキルなどを活かすことで勝算の高い事業として考えることができます。
他に経営者として必要な経理や労務、法律、管理業務などの経験もひとつのプラス評価になります。
使えるものはなんでも使って、加点を稼ぐようにしましょう。
創業計画書を作り込む
創業計画書を作り込むことも、融資にあたっては非常に重要なポイントです。
さきほどもお話ししましたが、融資の担当者は結局のところ、「融資をしたら回収できるのか?」を見ています。そのため、いくら素晴らしい理想やビジョンを語っても、実現可能性があるか、数字として再現性があるかなどがわからなければ融資実行には至りません。それを判断するのが「創業計画書」ということです。
創業計画書では経営者の略歴から事業の内容はもちろん、自己資金や運転資金などの調達方法、事業の見通し(売上見込)など細かく数字を記入する欄があります(日本政策金融公庫の場合)。
また、創業計画書をもとに面談も実施されますので、面談対策の一環としても隙のない創業計画書を作り込んでおくのは重要な対策になります。
日本政策金融公庫の創業計画書は、公式ホームページからダウンロードできますので、一度目を通しておくと良いでしょう。
※創業計画書の書き方に自信がない人は専門家に相談するべき!
創業計画書の書き方、作り方に自信がない人は、専門家に相談するのがおすすめです。
相談相手としてはたとえば中小企業診断士、税理士、商工会議所・商工会などがあります。
それぞれメリット・デメリットがありますので簡単に紹介します。
中小企業診断士
たとえば中小企業診断士であれば、融資の相談はもちろんのこと、経営全般のアドバイスやサポートを受けることができます。
ただし、融資には精通していないことも多いので、融資に特化して依頼をしたい場合は注意が必要です。
税理士
税理士は、お金・数字のプロなので融資の相談相手には非常におすすめ。
特に創業融資の実績が多い税理士に依頼すれば、数字的に説得力がある資料作りはもちろんのこと、これまでの経験などもふまえ融資に通りやすい創業計画書作りにも協力してくれるでしょう。
また、日本政策金融公庫では「認定支援機関」に登録されている税理士(法人)などを通して融資を申し込むと金利が優遇されたりとメリットがあります。認定支援機関にはさきほどの中小企業診断士も登録している人は多いですが、融資という点だけを考えてみると、税理士に依頼するほうが直接的なメリットは大きいでしょう。
税理士に依頼するデメリットというと、手数料等が発生することくらいです。
商工会議所・商工会
地域の商工会議所や商工会でも、融資に対する相談を受けることができます。
無料で相談できるという点も、資金に余裕がない創業期には有難いでしょう。
特に日本政策金融公庫の融資においては、創業後に商工会議所の支援を受けることで金利優遇などがある『マル経融資』を申し込むこともできますので、商工会議所とは上手に付き合っていくのも経営において有効でしょう。
ただし、あくまで無料相談なので顧問税理士などと比べると熱心に見てくれるかどうかは微妙なところ。正直言って担当者による当たりはずれも大きいので、まずは軽い相談や様子見、あるいは補助的に使ってみて熱心に支援してくれるか確認すると良いでしょう。
まとめ
今回は創業融資と個人信用情報の関係について説明してきました。
最後に要点をまとめておきます。
- 創業融資でも信用情報は確認される
- ブラックリスト入りしていると融資は厳しい
- 信用情報に傷・事故歴はあっても状況次第では挽回可能
基本的には、どこで融資を受けるにしても信用情報はしっかりと確認されますから、ブラックリスト入りしているような状態で融資を受けることは厳しいでしょう。
ただし、多少の事故歴であれば、これまでの実績や創業計画書の作り込みによって挽回が可能なこともあります。特に創業計画書などでは、「本当に返済できるのか?」が見られますから、現実的で説明可能な数字的根拠を記載するのが重要です。
数字的に説得力のある創業計画書を作りたいのであれば、税理士や商工会議所などの専門家・専門機関も上手に活用しましょう。自分一人でやるよりも、圧倒的に効率的で、最大限融資を受けられる可能性を引き出してくれますよ。